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第30話:連携の光と、静かに芽生えた確信

馬車がゆっくりと丘を登る中、アレン・ヴォルドは窓に寄りかかり、外の風景をぼんやりと眺めていた。

三十日目。無頼の牙パーティーは今日もクエストに向かう道中だった。

ここ数週間、回復魔法を連発する日々が続き、体に蓄積した疲労が少しずつ重くなっていることを、アレンは自覚していた。

頭の奥が鈍く痛み、朝の目覚めが重く感じる日が増えていた。


ガルドが隣の席で大あくびをしながら、赤毛を掻き上げた。

「ふわあ……今日の『銀の回廊』、古い通路が多いらしいな。アレン、回復頼むぜ! お前がいなきゃ俺、迷子になってただろうな」


レオンが向かいの席で腕を組み、銀髪を軽くかき上げながら皮肉っぽく笑った。

「ははっ、ガルド、お前はいつも同じセリフだな。アレン、顔色があまり良くないぞ。無理してないか?」


バーンは少し離れた席で干し肉をゆっくり齧りながら、のんびりとした声で言った。

「アレン、今日は肉を多めに持ってきてくれたか? 回廊の中は冷えるからな。戦いが終わったら温かい飯にしようぜ」


アレンは目を細めて小さく息を吐いた。

「みんな、銀の回廊は道が複雑そうです。回復をこまめにかけながら、声で位置を確認し合いましょう。……少し負担が大きいかもしれませんが、頑張ります」


ガルドが豪快に笑った。

「慎重はいいけどな! 無頼の牙は勢いだ! お前がいるからこそ、俺たちは無茶できるんだぜ」


レオンがくすくすと笑いながら窓の外を見た。

「ふっ、最近ギルドで俺たちの名前を聞く機会が増えた気がするな。ミリアちゃんも『どんどん目立ってほしい』って言ってたし、エレノア様からもまた何か届きそうだ」


バーンが干し肉を飲み込みながらのんびり頷いた。

「そうだな。アレンが加入する前は、俺たち三人だけでやってた時はもっと苦労してたな。今は回復があるだけで全然違う」


アレンは静かに聞きながら、胸の内で思った。

地味な支援役だった自分が、こんな風に仲間から必要とされていると感じる日が来るとは思っていなかった。


馬車が銀の回廊の入り口に到着した。

回廊は古い石造りで、壁に銀色の模様が施され、薄暗い光が反射している。

道は複雑に分岐し、亡霊の兵士たちが鎧姿で待ち構えていた。


「よし、来い!」


ガルドが大剣を振り回して突進した。

亡霊兵士の剣がガルドの肩を切り裂き、冷たい痛みが走る。

回廊の薄暗い光が回復魔法の光を少し乱す。


「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


アレンはすぐに回復魔法を唱えた。

しかし、回廊の特殊な空気が光を弱め、効果がやや遅れる。

ガルドの傷がなかなか塞がらず、血が滴り落ちる。


「ガルドさん、道が複雑です! 声で位置を伝え合いながら……」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、亡霊兵士の動きを乱した。

「おいおい、道が分かれすぎるぞ! アレン、強化も頼む!」


バーンが盾で剣攻撃を受け止め、斧で亡霊兵士の脚を狙った。

「アレン、こっちも来てるぞ!」


アレンは汗を浮かべ、精神力を振り絞って回復魔法を懸命に連発した。

頭の奥がずきずきと痛み、視界が少し狭くなってきたが、必死に光を維持し続けた。


戦闘は複雑な回廊の中で長引いた。

亡霊兵士の群れが分岐路から次々と現れ、ガルドとバーンが何度も傷を負う。

アレンは息を荒げながら、回復と支援を交互に繰り返した。

限界を感じる中でも、仲間たちの傷を一つずつ癒し続けた。


ようやく親兵士を倒した時、アレンは壁に手をついて大きく息を吐いた。


ガルドが息を荒げながら笑った。

「ははっ……勝ったな。アレン、今日はお前もかなりキツそうだったぜ」


レオンがアレンの背中を軽く支えながら言った。

「ふっ、回廊の構造が厄介だったな。アレン、よく持ちこたえた」


バーンがのんびりとした声で言った。

「アレン、今日は少し休め。飯は俺が多めに作るから」


帰りの馬車の中は、いつもより少し静かだった。

ガルドが珍しく声を落として言った。

「アレン、お前が倒れたら俺たち終わりだぞ。無理すんなよ」


レオンが窓の外を見ながら続ける。

「ははっ、認めるのは癪だが……お前がいなかったら、今頃俺たちはもっと苦労してただろうな」


バーンが干し肉を齧りながらのんびり言う。

「アレン、感謝してるぜ。これからもよろしくな」


アレンは小さく微笑んだ。

「みんな……ありがとうございます」


ギルドに戻ると、ミリアがカウンターから少し心配そうな顔で声をかけてきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! ……アレンさん、顔色が悪いですよ。大丈夫ですか?」


アレンが報告を終えると、ミリアは優しく言った。

「銀の回廊は道が複雑で冷たいですよね。無理はしないでくださいね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど……みんなが元気でいてくれるのが一番です」


その夜、『鉄の杯』では四人がいつものテーブルに座っていた。

今日は回廊の冷たい疲れが残る中、静かに酒を飲んでいた。

ガルドがジョッキを掲げたが、トーンは少し低めだった。

「無頼の牙に乾杯……今日はみんな、お疲れ」


レオンがワインを注ぎながらアレンを見た。

「アレン、今日は特に負担が大きかったな。少しペースを落としてもいいんじゃないか?」


バーンが肉を焼きながらのんびり言う。

「アレン、今日はゆっくり休め。俺が飯を多めに作ったから、たくさん食え」


アレンはジョッキを手に、静かに言った。

「みんな、ありがとうございます。まだ大丈夫です。でも、気遣ってくれて嬉しいです」


四人は静かに酒を飲み、今日の戦いの話を少しずつ交わした。

複雑な回廊での苦戦。

回復を連発する日々の積み重ね。

そして、仲間たちが自分を気遣ってくれる温かさ。


アレンは麦酒を一口飲み、胸の奥が少し軽くなるのを感じた。


追放されてから三十日。

無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に「仲間」というものを教えてくれていた。

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