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第21話:黄昏の峠と、初めての限界


無頼の牙パーティーが青い湖畔を攻略してから二十一日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトを丁寧に巻き直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

ここ数日のクエストで回復の負担が少しずつ積み重なっているのを感じていたが、仲間たちと顔を合わせると自然と気持ちが引き締まった。


ギルドの入り口では、三人がすでに待っていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『黄昏の峠』の岩狼群退治だぜ! 夕暮れ時に活性化するらしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。黄昏の峠は夕暮れ時に狼の活性化が強まるそうです。回復をこまめにかけながら進みましょう」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして少し心配そうな笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは黄昏の峠の岩狼群ですね。夕暮れ時に特に活性化するので、時間に注意してください。アレンさんたちの回復魔法でも負担がかかるかもしれません……」


ミリアは地図を渡しながら、念を押すように言った。

「峠の奥に親狼がいるらしいです。危なくなったら無理をせず戻ってきてくださいね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、みんなの安全が一番です!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。気をつけます」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、心配してくれてありがとうな! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢にまで心配されるとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、黄昏の峠へと向かった。

峠は岩が多く、夕暮れ時に岩狼の群れが活性化し、岩のような擬態から一気に襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

岩狼の爪がガルドの胸を切り裂き、激しい傷を残す。


「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒していく。

同時に支援魔法でガルドの力を強化する。


「ガルドさん、夕暮れで視界が悪くなるので、声で位置を確認しながら!」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、岩狼の動きを乱す。

「おいおい、また無茶かよ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で爪攻撃を受け止め、斧で岩狼を叩き落とす。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は夕暮れの薄暗い峠で長引いた。

岩狼の群れが岩陰から次々と飛び出し、ガルドとバーンが何度も深手を負う。

アレンは汗を浮かべ、精神力を振り絞って回復魔法を懸命に連発した。

頭が重くなり、視界が少し狭くなってきたが、必死に魔法を維持する。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この薄暗い峠での戦闘はすぐに苦戦していただろう。

レオンが風魔法で岩狼の位置を明らかにし、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親狼を狙い、ようやく大きな岩狼を倒した。


親狼が倒れると、残りの群れも勢いを失い、次々と倒れていった。

峠に静けさが戻る。


ガルドが息を荒げながら大笑いした。

「ははっ! 勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら危なかったな!」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日は夕暮れで視界が悪くて大変だったな」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった。今日は飯を豪華にしようぜ」


アレンは汗だくになり、軽く息を乱しながら微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……夕暮れの戦いは予想以上に視界が悪かったです」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいるおかげで、俺たちはもっと無茶できるんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか?」


ミリアの緑の瞳が輝いている。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は嬉しそうに頷いた。

「すごいですね……無頼の牙の成功率、最近本当に安定してきてますよ。ギルド内で『あの男ばかりのパーティー、だんだん本格的になってる』って声が増えています!」


その時、近くで他の冒険者たちの会話が聞こえてきた。

「無頼の牙、黄昏の峠を無事にこなしたらしいな」「回復役がいるおかげで粘り強いって評判だぞ」


アレンはそれを聞いて小さく息を吐いた。

まだ小さな変化だが、無頼の牙の名前が確かに広がり続けている。


その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。

ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。

「無頼の牙に乾杯!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、ギルドの視線が増えてきたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」


バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。

「アレン、これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

黄昏の峠での薄暗い戦い。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアをはじめとする受付嬢たちの視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか二十一日。

無頼の牙での日々は、試練を繰り返しつつ、確実に周囲の注目を集め、静かに積み重なっていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと前進していける気がした。


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