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第20話:帰還の道と、静かな達成感


無頼の牙パーティーが古代樹の森の守護者を倒してから二十日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトを丁寧に巻き直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

昨日の再生力の高い守護者との戦いの疲れがまだ少し残っていたが、仲間たちと顔を合わせると自然と前向きな気持ちになった。


ギルドの入り口では、三人がすでに待っていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『青い湖畔』の水蛇群退治だぜ! 報酬もそこそこいいらしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。青い湖畔は水辺なので、足場に注意してください」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは青い湖畔の水蛇群ですね。水辺なので滑りやすいです。アレンさんたちの回復魔法なら、きっと大丈夫だと思います!」


ミリアは地図を渡しながら、いつものように追加情報をくれた。

「湖畔の奥に親蛇がいるらしいです。最近、無頼の牙の名前をギルド内で聞く機会が本当に増えましたよ。このパーティー、どんどん目立ってほしいんです。頑張ってくださいね!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。いつも本当に助かります」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、期待しててくれ! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢の期待を背負うとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、青い湖畔へと向かった。

湖畔は水が美しく澄んでいるが、岸辺は滑りやすく、水蛇の群れが水面から飛び出して襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

水蛇の牙がガルドの脚に食い込み、鋭い傷を残す。


「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒していく。

同時に支援魔法でガルドの力を強化し、動きを少し速くする。


「ガルドさん、水辺なので滑らないように! レオンさんが風で水しぶきを散らしてくれれば……」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、水蛇の動きを乱す。

「おいおい、また無茶かよ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で牙攻撃を受け止め、斧で水蛇を叩き落とす。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は湖畔の滑りやすい足場で続いた。

水蛇の群れが水の中から次々と飛び出し、ガルドとバーンが何度も傷を負う。

アレンは汗を浮かべながら回復魔法を懸命に連発した。

精神力が消耗していくのを感じつつも、仲間たちの傷を一つずつ癒し、支援を重ねていく。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この水辺での戦闘はすぐに苦戦していただろう。

レオンが風魔法で水しぶきを散らし、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親蛇を狙い、ようやく大きな水蛇を倒した。


親蛇が倒れると、残りの群れも勢いを失い、次々と水の中に沈んでいった。

湖畔に静けさが戻る。


ガルドが息を荒げながら大笑いした。

「ははっ! 勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら危なかったな!」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日は足場が悪くて大変だったな」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった。今日は飯を豪華にしようぜ」


アレンは汗だくになりながら、軽く微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……水辺の戦いは予想以上に滑りやすかったです」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいるおかげで、俺たちはもっと無茶できるんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか?」


ミリアの緑の瞳が輝いている。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は嬉しそうに頷いた。

「すごいですね……無頼の牙の成功率、最近本当に安定してきてますよ。ギルド内で『あの男ばかりのパーティー、だんだん本格的になってる』って声が増えています!」


その時、近くで他の冒険者たちの会話が聞こえてきた。

「無頼の牙、青い湖畔を無事にこなしたらしいな」「回復役がいるおかげで粘り強いって評判だぞ」


アレンはそれを聞いて小さく息を吐いた。

まだ小さな変化だが、無頼の牙の名前が確かに広がり続けている。


その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。

ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。

「無頼の牙に乾杯!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、ギルドの視線が増えてきたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」


バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。

「アレン、これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

青い湖畔での水辺の戦い。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアをはじめとする受付嬢たちの視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか二十日。

無頼の牙での日々は、試練を繰り返しつつ、確実に周囲の注目を集め、静かに積み重なっていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと前進していける気がした。


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