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第19話:古代樹の守護者と、限界の回復


無頼の牙パーティーが双影の谷を攻略してから十九日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトを丁寧に巻き直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

ここ最近のクエストで回復の負担が増えているのを感じつつも、仲間たちとの連携に確かな手応えがあった。


ギルドの入り口では、三人がすでに待っていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『古代樹の森』の守護者討伐だぜ! 大きな樹の魔物らしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。古代樹の守護者は再生力が強いそうです。回復をこまめにかけながら、根元を狙うのが良さそうです」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして少し緊張した笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは古代樹の森の守護者ですね。再生力がとても強いので、注意してください。アレンさんたちの回復魔法でも、かなり負担がかかるかもしれません……」


ミリアは地図を渡しながら、念を押すように言った。

「森の奥に親樹がいるらしいです。危なくなったら無理をせず戻ってきてくださいね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、みんなの安全が一番です!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。気をつけます」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、心配してくれてありがとうな! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢にまで心配されるとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、古代樹の森へと向かった。

森は古木が密集し、巨大な樹の根が地面を這っている。

古代樹の守護者が動き出し、太い枝を鞭のように振り回しながら襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

守護者の枝がガルドの体を叩きつけ、激しい打撃と再生の棘が同時に襲う。


「ぐあっ! アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒そうとするが、守護者の再生力が強く、傷がすぐに塞がろうとする。

同時に支援魔法でガルドの力を強化する。


「ガルドさん、枝の根元を狙って! 再生が追いつかないように……」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、枝を切り落とす。

「おいおい、再生が早すぎるぞ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で枝の攻撃を受け止め、斧で守護者の根元を狙う。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は長く激しかった。

古代樹の守護者の再生力が予想以上に強く、ガルドとバーンが何度も深手を負う。

アレンは汗を浮かべ、精神力を振り絞って回復魔法を懸命に連発した。

頭が重くなり、視界が少しぼやけ始めたが、必死に魔法を維持する。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この再生力の高い敵相手の戦闘はすぐに崩れていただろう。

レオンが風魔法で枝を切り落とし、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で守護者の根元を何度も叩き、ようやく大きな古代樹の守護者を倒した。


守護者が倒れると、森の古木たちが静かに揺れ、動きを止めた。

森に静けさが戻る。


ガルドが息を荒げながら大笑いした。

「ははっ……勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら本当にやばかった……」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日はかなりキツかったな。アレン、よく耐えたぞ」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった……が、今日は少し疲れたな。飯、ゆっくり食おうぜ」


アレンは汗だくになり、軽く息を乱しながら微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……再生が強くて、回復が追いつかなくて焦りました」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいたから勝てたんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから心配そうに駆け寄ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか? 再生攻撃の影響は……?」


ミリアの緑の瞳に強い心配の色が浮かんでいる。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は安堵の息を吐いた。

「よかった……でも、今日はかなり大変だったんですね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、無理はしないでくださいね」


その夜、『鉄の杯』で四人は少し疲れた様子で酒を酌み交わした。

ガルドがジョッキを掲げて言う。

「無頼の牙に乾杯! 今日はキツかったが、勝ったぜ!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、再生力が厄介だったな。アレン、回復の負担が大きかっただろ?」


バーンがのんびり笑う。

「アレン、今日はよく頑張ったな。これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

古代樹の森での再生力の高い守護者との戦い。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアの心配する視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか十九日。

無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に4人の絆を深め、静かに強くなっていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと乗り越えていける気がした。


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