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第18話:双頭の影と、守るための回復


無頼の牙パーティーが腐食の沼地を攻略してから十八日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトを丁寧に巻き直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

昨日の苦戦の疲れがまだ少し残っていたが、仲間たちと顔を合わせると自然と気持ちが引き締まった。


ギルドの入り口では、三人がすでに待っていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『双影の谷』の双頭狼退治だぜ! 二つの頭を持つ狼らしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。双頭狼は二つの頭で別々の攻撃をしてくるそうです。回復をこまめにかけながら、連携を意識してください」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして少し心配そうな笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは双影の谷の双頭狼ですね。二つの頭で別々の属性攻撃をしてくるので、特に注意してください。アレンさんたちの回復魔法でも負担が大きいかもしれません……」


ミリアは地図を渡しながら、念を押すように言った。

「谷の奥に親狼がいるらしいです。危なくなったら無理をせず戻ってきてくださいね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、みんなの安全が一番です!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。気をつけます」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、心配してくれてありがとうな! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢にまで心配されるとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、双影の谷へと向かった。

谷は影が深く、二つの頭を持つ双頭狼の群れが暗がりから飛び出してきた。

一つの頭から炎を、もう一つの頭から冷気を吐きながら襲いかかってくる。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

双頭狼の炎と冷気が同時にガルドを襲い、激しいダメージを与える。


「ぐっ! アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、炎と冷気のダメージを癒そうとするが、属性攻撃の負担が大きく、回復が追いつきにくい。


「ガルドさん、頭を交互に狙って! 属性が切り替わる隙を……」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、双頭狼の動きを乱す。

「おいおい、属性攻撃が厄介だぞ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で炎と冷気の同時攻撃を受け止め、斧で双頭狼を狙う。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は予想以上に厳しかった。

双頭狼の二つの頭が交互に属性を変えて攻撃してくるため、ガルドとバーンが何度も深手を負う。

アレンは汗を浮かべ、精神力を振り絞って回復魔法を懸命に連発した。

頭が重くなり、視界が少しぼやけ始めたが、必死に魔法を維持する。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この属性攻撃の激しい戦闘はすぐに崩れていただろう。

レオンが風魔法で属性の隙を作り、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親狼の二つの頭を交互に狙い、ようやく大きな双頭狼を倒した。


親狼が倒れると、残りの群れも勢いを失い、次々と倒れていった。

谷に静けさが戻る。


ガルドが膝をつきながら息を荒げて笑った。

「ははっ……勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら本当にやばかった……」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日はかなりキツかったな。アレン、よく耐えたぞ」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった……が、今日は少し疲れたな。飯、ゆっくり食おうぜ」


アレンは汗だくになり、軽く息を乱しながら微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……属性攻撃が強くて、回復が追いつかなくて焦りました」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいたから勝てたんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから心配そうに駆け寄ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか? 毒や属性攻撃の影響は……?」


ミリアの緑の瞳に強い心配の色が浮かんでいる。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は安堵の息を吐いた。

「よかった……でも、今日はかなり大変だったんですね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、無理はしないでくださいね」


その夜、『鉄の杯』で四人は少し疲れた様子で酒を酌み交わした。

ガルドがジョッキを掲げて言う。

「無頼の牙に乾杯! 今日はキツかったが、勝ったぜ!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、属性攻撃が厄介だったな。アレン、回復の負担が大きかっただろ?」


バーンがのんびり笑う。

「アレン、今日はよく頑張ったな。これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

双影の谷での属性攻撃の苦戦。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアの心配する視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか十八日。

無頼の牙での日々は、試練を増やしつつ、確実に4人の絆を深めていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと乗り越えていける気がした。


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