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第17話:腐食の沼と、初めての苦戦


無頼の牙パーティーが岩窟の迷宮を攻略してから十七日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトを丁寧に巻き直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日の集中を込める。

ここ最近のクエストは順調だったが、今日はミリアが少し心配そうな顔で紹介してくれた中ランククエストだった。


ギルドの入り口では、三人がすでに待っていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『腐食の沼地』の大蛙退治だぜ! 報酬がいいらしいが、毒が強いって話だ!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。腐食の沼地は毒が強いので、回復をこまめにかけながら進みましょう」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして少し心配そうな笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは腐食の沼地の腐食大蛙ですね。毒がとても強いので、特に気をつけてください。アレンさんたちの回復魔法でも、かなり負担がかかるかもしれません……」


ミリアは地図を渡しながら、念を押すように言った。

「沼の奥に親蛙がいるらしいです。もし危なくなったら無理をせず戻ってきてくださいね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんです。でも、みんなの安全が一番です!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。気をつけます」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、心配してくれてありがとうな! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢にまで心配されるとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、腐食の沼地へと向かった。

沼地は緑がかった毒の霧が立ち込め、足元がぬかるんで動きにくい。

巨大な腐食大蛙の群れが、粘つく舌と強力な毒を吐きながら襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

腐食大蛙の舌がガルドの胸に絡みつき、強力な毒が一気に回り始める。


「ぐあっ! アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、毒を中和しようとするが、毒の強さが予想以上だった。

同時に支援魔法でガルドの力を強化する。


「ガルドさん、毒が強いです! こまめに回復をかけますので、距離を取って!」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、毒の霧を少し散らす。

「おいおい、毒が強すぎるぞ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で舌攻撃を受け止め、斧で大蛙を狙う。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は予想以上に苦戦した。

腐食大蛙の毒が強力で、ガルドとバーンが何度も深手を負う。

アレンは汗を浮かべながら回復魔法を懸命に連発した。

精神力が急速に消耗していくのを感じ、頭が少し重くなってきた。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃くが、毒の進行が早く、回復が追いつかない場面も出てきた。

レオンが風魔法で毒霧を散らし、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親蛙を狙うが、毒で動きが鈍り、苦戦を強いられる。


アレンは息を荒げながら、必死に回復を連発した。

「みんな、持ちこたえてください……!」


ようやく親蛙を倒すと、残りの群れも勢いを失い、次々と倒れていった。

沼地に静けさが戻る。


ガルドが膝をつきながら息を荒げて笑った。

「ははっ……勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら本当に危なかったな……」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日はかなりキツかったぞ。アレン、よく耐えた」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった……が、今日は少し疲れたな。飯、ゆっくり食おうぜ」


アレンは汗だくになり、軽く息を乱しながら微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……毒が強かったので、回復が追いつかなくて焦りました」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいたから勝てたんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから心配そうに駆け寄ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか? 毒の影響は……?」


ミリアの緑の瞳に心配の色が濃い。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は安堵の息を吐いた。

「よかった……でも、今日はかなり大変だったんですね。このパーティー、どんどん目立ってほしいんですけど、無理はしないでくださいね」


その夜、『鉄の杯』で四人は少し疲れた様子で酒を酌み交わした。

ガルドがジョッキを掲げて言う。

「無頼の牙に乾杯! 今日はキツかったが、勝ったぜ!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、初めて本気で苦戦したな。アレン、回復の負担が大きかっただろ?」


バーンがのんびり笑う。

「アレン、今日はよく頑張ったな。これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

腐食の沼地での初めての苦戦。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアの心配する視線。

そして、男ばかりの熱い仲間たち。

追放されてからわずか十七日。

無頼の牙での日々は、確実に試練を増やしつつ、着実に前進を続けていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、ゆっくりと乗り越えていける気がした。


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