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第11話:ギルドの噂と、増える応援

無頼の牙パーティーが霧隠れの谷を攻略してから十一日目。

アレン・ヴォルドは朝の宿屋で道具ベルトをしっかりと締め直し、小型のノートをポケットに入れた。

黒髪を短く整え、茶色の瞳に今日への気持ちを込める。

ここ数日のクエストで、少しずつパーティーの連携が形になってきた実感があった。


ギルドの入り口では、三人がすでに集まっていた。

ガルドが大剣を肩に担ぎ、赤毛を朝日に輝かせて元気よく声を上げる。

「アレン! おはよう! 今日は『風鳴りの洞窟』の魔蝙蝠退治だぜ! 報酬がいいらしい!」


レオンが銀髪を後ろで束ね、風魔法の杖を軽く回しながら軽く笑う。

「ははっ、ガルドは相変わらず張り切りすぎだな。アレン、回復の準備はできてるか?」


バーンは無精髭を撫で、のんびりとした足取りで盾を担いでいる。

「アレン、今日は肉の量を多めに持ってきてくれたか? 戦いが終わったら腹が減るからな」


アレンは軽く頭を下げて三人と合流した。

「みんな、おはようございます。少し慎重にいきましょう。風鳴りの洞窟は音が響きやすいので、連携を意識してください」


ガルドが豪快に胸を叩く。

「連携はいいけどな! 無頼の牙は勢いで勝負だ!」


クエスト受付カウンターでは、ミリアが明るい金髪ポニーテールを揺らして笑顔で待っていた。

「無頼の牙のみなさん、おはようございます! 今日のクエストは風鳴りの洞窟の魔蝙蝠群ですね。音が響くので注意してください。アレンさんたちの回復魔法なら、きっと上手くいくと思います!」


ミリアは地図を渡しながら、追加情報を教えてくれた。

「洞窟の奥に大きな親蝙蝠がいるらしいです。そこを倒せば一気に楽になりますよ。最近、無頼の牙の名前をギルド内で聞く機会が増えてきました。このパーティー、どんどん目立ってほしいんです。頑張ってくださいね!」


アレンは丁寧に礼を言った。

「ありがとうございます、ミリアさん。いつも本当に助かります」


ガルドが親指を立てる。

「おう! ミリアちゃん、期待しててくれ! 無頼の牙、今日も派手にいくぜ!」


レオンがくすくす笑う。

「受付嬢の期待を背負うとはな。アレン、回復、よろしく頼むぞ」


バーンがのんびり頷く。

「まあ、戦いが終わったら飯だな」


四人は馬車に乗り、風鳴りの洞窟へと向かった。

洞窟に入ると、風がうなりを上げ、足音や声が大きく反響する。

暗闇の中で魔蝙蝠の群れが羽音を立てて襲いかかってきた。


「よし、無頼の牙の出番だ! 俺が前で引きつける!」


ガルドが大剣を構えて突進した。

魔蝙蝠の鋭い爪がガルドの肩を切り裂き、血が飛び散る。


「アレン、傷が痛え! 癒してくれ!」


「ガンガンいけ! まだ来るぞ!」


アレンはすぐに軽い回復魔法を唱えた。

緑色の柔らかい光がガルドの体を包み、傷を癒していく。

同時に支援魔法でガルドの力を強化し、動きを少し速くする。


「ガルドさん、音が反響するので位置を声で確認しながら!」


「そんな悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 無頼の牙は勢いでぶち破る!」


レオンが後方から風の刃を連発し、魔蝙蝠の羽を切り裂く。

「おいおい、また無茶かよ。アレン、俺にも強化を!」


バーンが盾で爪攻撃を受け止め、斧で魔蝙蝠を叩き落とす。

「アレン、回復ありがとうな。まだいけるぞ」


戦闘は洞窟の反響の中で激しく続いた。

魔蝙蝠の群れが一斉に襲いかかり、ガルドとバーンが何度も傷を負う。

アレンは汗を浮かべながら回復魔法を懸命に連発した。

精神力が消耗していくのを感じつつも、仲間たちの傷を一つずつ癒し、支援を重ねていく。


「アレン、傷がヤバい! 癒してくれ!」


「了解です……回復、続けます!」


緑色の光が何度も閃く。

アレンの魔法がなければ、この暗い洞窟での戦闘はすぐに崩れていただろう。

レオンが風魔法で魔蝙蝠の動きを乱し、バーンが盾で守りながら斧を振り下ろす。

ガルドが大剣で親蝙蝠を狙い、ようやく大きな魔蝙蝠を切り倒した。


親蝙蝠が倒れると、残りの群れも混乱し、次々と倒れていった。

洞窟に静けさが戻る。


ガルドが息を荒げながら大笑いした。

「ははっ! 勝ったぜ! アレン、お前の回復連打がなかったら危なかったな!」


レオンが汗を拭いながらアレンの肩を叩く。

「ははっ、相変わらず無茶だったが、今日は連携が少しマシだったぞ」


バーンがのんびり笑う。

「いい運動になった。今日は飯を豪華にしようぜ」


アレンは汗だくになりながら、軽く微笑んだ。

「みんな、無事でよかったです……少しずつ、息が合ってきたと思います」


ギルドに戻る馬車の中で、ガルドがアレンの背中を軽く叩いた。

「お前がいるおかげで、俺たちはもっと無茶できるんだ。無頼の牙、悪くねえチームだぜ!」


ギルドに到着すると、ミリアがカウンターから明るく手を振ってきた。

「無頼の牙のみなさん、おかえりなさい! クエスト成功おめでとうございます! 傷は大丈夫ですか?」


ミリアの緑の瞳が輝いている。

アレンが簡単に戦闘の流れを報告すると、彼女は嬉しそうに頷いた。

「すごいですね……アレンさんたちの連携、どんどん良くなってます。最近、ギルド内で『無頼の牙ってパーティー、意外と強いらしい』って噂が広がり始めてるんですよ!」


その時、近くの受付嬢同士の会話が耳に入ってきた。

「無頼の牙、男ばかりなのに結果を出してるよね」「あの回復役のアレンさん、頑張ってるみたい」


アレンはそれを聞いて少し驚いた。

まだ小さな噂だが、無頼の牙の名前が確かに広がり始めている。


その夜、『鉄の杯』で四人は勝利を祝った。

ガルドがジョッキを高く掲げて叫ぶ。

「無頼の牙に乾杯!」


レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。

「ふっ、ギルドで名前が知られ始めたな。アレン、お前の回復が効いてるぞ」


バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。

「アレン、これからもよろしくな」


アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。

風鳴りの洞窟での激しい戦い。

回復魔法を連発する毎日。

ミリアの積極的な応援。

そして、ギルド内で少しずつ広がる噂。

追放されてからわずか十一日。

無頼の牙での日々は、確実に自分の居場所になり、周囲からも注目され始めていた。


明日もまた、回復を連打する日々が続く。

でも、今はこの仲間たちと一緒に、前を向いて歩いていける気がした。


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