第12話:届いた贈り物への感謝
無頼の牙パーティーが風鳴りの洞窟を攻略してから十二日目。
アレン・ヴォルドは宿屋の部屋で、エレノアからもらった木箱を丁寧に開けていた。
黒髪を短く整え、茶色の瞳に少し緊張した色を浮かべる。
箱の中には高品質の回復薬と、支援魔法の効果を高める触媒が残っていた。
「まだ使っていないものが多い……ちゃんと感謝を伝えないと」
アレンは箱を大事に抱え、ギルドの入り口に向かった。
今日は珍しくクエストのない日だったが、以前エレノアが「またお話を聞かせてください」と言っていたことを思い出し、貴族街へ向かうことにした。
ギルドの広場では、すでに三人が集まっていた。
ガルドが大剣を地面に立てかけ、赤毛を振り乱して大声を上げる。
「アレン! おはよう! 今日はクエストなしだな。何する?」
レオンが銀髪を後ろで束ね、木陰に座りながら軽く笑う。
「ははっ、ガルドは休みでも元気だな。アレン、今日はどうするんだ?」
バーンは無精髭を撫で、のんびりとした様子で袋を肩に担いでいる。
「アレン、今日は飯をしっかり食おうぜ。戦いがない分、ゆっくりできるからな」
アレンは箱を抱えたまま三人に向かって言った。
「実は、エレノア様からもらった回復薬の感謝を伝えに行こうと思っています。みんなも一緒に来ませんか?」
ガルドが目を輝かせる。
「おお! あの貴族のお嬢さんか! いいぜ、行こうぜ!」
レオンが肩をすくめる。
「ふっ、貴族の屋敷に行くとはな。アレン、お前意外と大胆だぞ」
バーンがのんびり笑う。
「まあ、飯の時間になったら教えてくれよ」
四人は西部の貴族街へと足を運んだ。
エレノアの屋敷は白い壁と美しい庭園が広がる立派な建物だった。
使用人に取り次いでもらうと、エレノア本人が優雅に現れた。
銀色の長い髪を優しく波打たせ、紫の瞳が静かな好奇心を湛えている。
「アレンさん、無頼の牙のみなさん。お越しくださってありがとうございます」
アレンは箱を両手で持ち、深く頭を下げた。
「エレノア様、先日は高品質の回復薬と触媒をいただき、本当にありがとうございました。おかげでここ数日のクエストで大きく助かりました。特に棘の森と霧隠れの谷では、薬の効果でみんなの傷を素早く癒せました」
エレノアは紫の瞳を細めて微笑んだ。
「ふふ、役に立ってよかったですわ。アレンさんが誠実で地味ながらも、仲間をしっかり支える方だということは以前から感じていました。男ばかりの熱いパーティーで、どう活躍されているのか興味が湧いてしまいまして」
ガルドが豪快に笑う。
「エレノア様、ありがとうな! あの薬、すげえ効いたぜ! アレンが回復を連発する時に合わせて使ったら、俺の傷がすぐに塞がったんだ!」
レオンがくすくす笑いながら続ける。
「ははっ、正直言って助かりました。アレンの回復だけでは精神力が持たない場面もあったので、薬の効果は大きかったです」
バーンがのんびり頷く。
「アレン、今日はこのお礼に飯でも奢ろうか? エレノア様もよかったら……」
エレノアは小さく笑って手を振った。
「ふふ、お気遣いありがとうございます。でも今日はアレンさんたちのお話を聞きたいですわ。無頼の牙パーティーは、最近ギルド内で少し話題になっているようですね」
アレンは少し照れくさそうに答えた。
「まだまだですが……少しずつ連携が良くなってきていると思います。エレノア様の贈り物が、みんなの力になってくれています。本当に感謝しています」
エレノアは優雅に頷き、庭のテーブルに四人を招いた。
使用人が紅茶と軽いお菓子を出してくれる。
彼女は紫の瞳をアレンに向け、静かに言った。
「アレンさん、あなたは勇者パーティー時代も、地味ながらも皆を支えようと頑張っていたのが印象的でした。今は男ばかりの熱いパーティーで、回復を連発しながら仲間を信じて戦っている……とても興味深いですわ。今後も何かお手伝いできることがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
アレンは深く頭を下げた。
「ありがとうございます、エレノア様。これからも無頼の牙として、頑張ります」
ガルドが紅茶を飲みながら大声で言う。
「エレノア様、ありがとな! 無頼の牙はこれからも無茶して、結果を出していくぜ!」
レオンが軽く笑う。
「ははっ、貴族令嬢にまで応援されるとはな。アレン、お前が鍵だぞ」
バーンがのんびり笑う。
「アレン、今日はいい話が聞けたな。飯、豪華にしようぜ」
屋敷を後にした四人は、ギルドに戻る道中で少し話した。
ガルドがアレンの肩を叩く。
「アレン、ちゃんと感謝伝えて偉いぜ! あの薬、もっと使わせてもらうからな!」
アレンは小さく微笑んだ。
「少し慎重にいきましょう……でも、みんなが無事でよかったです」
その夜、『鉄の杯』で四人はいつものように酒を酌み交わした。
ガルドがジョッキを掲げて叫ぶ。
「無頼の牙に乾杯! エレノア様にも感謝だぜ!」
レオンがくすくす笑いながらグラスを合わせる。
「ふっ、貴族令嬢の後ろ盾までできたな。アレン、回復の調子も上がってきたぞ」
バーンが肉を頬張りながらのんびり言う。
「アレン、これからもよろしくな」
アレンは麦酒をゆっくり飲みながら、仲間たちの顔を見回した。
エレノアへの感謝を伝えた今日。
回復薬がみんなの力になったこと。
そして、男ばかりの熱い仲間たちと、温かい応援してくれる人たち。
追放されてからわずか十二日。
無頼の牙での日々は、確実に広がりを見せ始めていた。
回復魔法を連打する毎日。
でも、今はこの仲間たちと一緒に、前を向いて歩いていける気がした。




