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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
4章 蒼の気を持つ者編
51/68

51話 詰み


当て野の拳が、寸分の狂いもなく蒼気を捉え続ける。


避けられない。

防げない。


必中必殺。


弱点を抉る一撃が確実に蒼気の内部を削っていく。


「……ッ!当て野!!」


蒼気の呼吸が、わずかに乱れた。


(必中必殺……私の蒼鎧をすり抜けて内部に当てている!避けるのも防ぐのも不可能!)


蒼の気の循環はまだ保たれている。

だが、回復が追いつかない。


(削られている……!確実に……!)


瓦礫を踏み砕きながら、蒼気は後退していく。

蒼気は当て野の拳を見据える。


(待てよ……もしかすると……)


当て野の攻撃が再び来る。


――ドン!!


左肩。

内部に走る衝撃。


「ぐっ……!」


だがその瞬間、蒼気は動かなかった。


(ここか!)


当て野の拳が、蒼気の身体に“当たった”瞬間。


蒼の気が――爆ぜる。


「ッ!?」


超至近距離。


蒼の気の逆流が、当て野の身体を包み込む。


――ゴォッ!!


初めて。


当て野の身体が、明確に吹き飛ばされた。


「……ッ!」


空中で体勢を立て直しながら、当て野は歯を食いしばる。


(……狙ったな、気づかれたか)


蒼気は、血を拭いながら立ち上がる。


「ようやく分かってきたよ」


蒼気は笑う。


「お前の必中と回避……確かに無敵のように思える。

だが――」


一歩、踏み出す。


「必中……私に攻撃が必ず当たるという事は……その瞬間のみ私もお前に触れる事が出来る」


当て野は再び構える。


能力は健在。

攻撃は、まだ当たる。


(正解だ……必中を使い敵に当てる瞬間は回避は使えない……)


蒼気はもう逃げない。


当てさせる。

耐える。

その一瞬を、奪う。


当て野の呼吸が、明らかに荒くなっていた。


――ズキリ。


視界の端がわずかに歪む。


(……来やがったな)


MODE反転 当たら無い野。

絶対命中、絶対回避という狂った理屈は、身体に異常な負荷を強いていた。


蒼の気が血流と噛み合わなくなっている。


それでも。


「この状況を打開できるのは……俺だけだ!」


当て野は踏み込む。


ドッッ、ドッッ、ドン!!!!!


連打。


弱点を正確に穿つ拳が、蒼気を削り続ける。


蒼気は防がない。

耐える。

そして、観察する。


(動きが……僅かに遅れてきている)


蒼気は気づいていた。


必中は健在。

だが、発動者の反応速度が落ちている。


その頃――


瓦礫の影。

倒れていた仲間達の元で、田野が必死に蒼の気を流していた。


「これで最低限は……!」


花野が咳き込みながら上体を起こす。


「……ありがとう……田野……」


与志野も膝をつく。


「……でも……ダメだ……蒼の気が……」


無闘は拳を握ろうとして、力が入らず舌打ちする。


「クソ……身体は動くのに……蒼の気が空っぽだ……」


Fは静かに立ち上がるが、蒼の気の流れが完全に途切れている。


「戦線復帰は……無理だね」


田野は唇を噛みしめる。


「……ごめん……回復はできても……蒼の気までは戻せない……」


全員が分かっていた。

足手纏い、戦えば即座に殺される。


――そして前線。


当て野の足が僅かにもつれる。

その瞬間を蒼気は逃さなかった。


(今度こそ来たか……)


蒼気は敢えて大きく踏み込む。

当てさせる動き。


当て野の拳が、迷いなく飛ぶ。


――ドン!!


弱点命中、だが同時。


蒼気の蒼の気が、内側から逆巻いた。


(しまった、誘われ――)


ドゴッッ。


今の当て野には重すぎる一発。


「がッ――!」


当て野の身体に、鈍い衝撃が走る。


(反動が……!身体中……力が入らん……!)


当て野は歯を食いしばり、体勢を崩さぬまま踏みとどまる。


「……まだだ」


拳を構える、視界がチラつく、心臓が軋む。


蒼気は静かに言った。


「あと数発喰らったらまずかったな……」


一歩、距離を詰める。


(来る……回避……!)


空気が張り詰めた。


当て野の限界。

当て野の拳が、最後に一度だけ蒼気を捉えた。


――だがそれまでだった。


「……終わりだ」


蒼気の一撃が同時に当て野の腹部を貫く。


「ヴッ……!」


ドォッッッ!!!!


蒼の気が内側から爆ぜ、当て野の身体は人形のように吹き飛ばされ、瓦礫の山に叩きつけられた。


「当て野!!」


与志野の叫びが響く。


返事はない。


一瞬、世界が止まった。


「クソ……!このまま終われるか……!」


無闘がふらつきながら立ち上がる。

Fも、花野も、田野も、与志野も。


蒼の気は枯れ、最低限身体を守る蒼鎧も出せない。


それでも。


「まだだ……!」


与志野が歯を食いしばる。


「行くぞ……全員で!!」


一斉突撃。


拳、蹴り、植物、残り滓の蒼の気。


だが。

蒼気は、ただ一歩踏み出した。


衝撃波。


ドゥッ――――!!


全員が、まとめて吹き飛ばされる。


「グハッ……!」

「うぅ……!」


壁に、地面に、瓦礫に。

叩きつけられ、誰も立てない。


蒼気は静かに歩み寄る。


「さぁどうする?」


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