表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
4章 蒼の気を持つ者編
47/68

47話 短期決戦


「「――finalform(ファイナルフォーム)。」」


瞬間。


世界が、歪む。


無闘の蒼は荒々しく、獣のように噴き上がる。

筋肉が軋み、血管が浮き出る。


一方Fの蒼は、異様なまでに静かだった。

水面のように澄み、だが底知れない圧を秘めている。


「……ほう」


僅かに興味の色。


「その形態をここで切るか……焦りが見えるな。」


無闘が吠える。


「うるせえんだよぉぉぉ!!」


蒼の気を纏った拳を、正面から叩き込む。


ドゴンッッ!!!!!


空気が弾ける。


蒼気は腕でそれを受け止めた。


だが――


一歩、下がる。


(……重い!想定以上に!)


Fはその瞬間を見逃さない。


蒼の気を一点に圧縮し、

無闘の拳が生んだ“僅かな隙間”へ踏み込む。


無音の一撃。


衝撃は遅れて爆発し、

蒼気の身体を後方へ押し出した。


(何だこれは……内部に響く!?)


無闘が、ニヤリと笑う。


「どうだよ……!」


Fが、冷静に言った。


「いや無闘の方がうるさいじゃん」


「はぁ!?」


言い合いながら、二人は止まらない。


無闘が前に出て、力で押し潰す。

Fが後ろから、精密に蒼の流れを断つ。


蒼気は、攻撃を捌きながらも理解していた。


蒼の気の総量。

技の完成度。


どれを取っても、まだ自分が上。


――だが。


(二人同時だと、話が違う)


無闘の攻撃は直線的だが、破壊力が異常。

Fの動きは静かだが、蒼の制御が完璧に近い。


一瞬の判断ミスが、致命傷になる。


蒼気は、口元を歪めた。


「……面白い」


蒼の気が、さらに濃くなる。


「だが――その形態、長くは持たない」


無闘が吐き捨てる。


「だから何だ!」


Fは視線を逸らさずに言う。


「短期決戦、上等!!」


二人の蒼が、完全に重なりあう。


瞬間、無闘の呼吸が荒くなる。


(……っ、来やがったか!MODEを使ってから時間が空いてる分やっぱ反動も早え……!)


蒼の気は噴き出している。

だが、身体がついてこない。


拳を振るたび筋肉が軋み、関節が悲鳴を上げる。

蒼鎧の内側で、血が滲んでいるのが分かった。


一方、Fも同じだった。


蒼の制御はまだ保てている。

だが、視界の端がわずかに揺れる。


(思考が……遅れる)


final formは、全力を引き出す代わりに、

余裕という概念を奪う。


それでも。


「――行くぞ!」


無闘が叫ぶ。

蒼の気をさらに上げる。


ギアを、もう一段。


Fも無言で頷き、踏み込んだ。

二人の蒼が再び加速する。


無闘が正面から叩き潰す。

Fが斜め後方から、蒼の流れを切り裂く。


蒼気は防御に回るが、

完全には捌ききれない。


衝撃が連続で叩きつけられる。


今だ。


そう思った瞬間――


無闘の足が、わずかにもつれた。


「……っ!」


反動。


final formの代償がここ一番で牙を剥く。


蒼気の視線が鋭く光った。


(――隙)


踏み込む。


致命の一撃が、無闘へ向かう。


その時。


「――させない!!」


蒼の銃声が、戦場に響いた。


shot gun finger。


与志野だった。


蒼の弾丸が、蒼気の進路を強引に歪める。

完璧な一撃は半歩ずれる。


「ナイスカバー……!!」


無闘はその瞬間を逃さなかった。

身体を捻り、無理やり距離を取る。


そして――


「F!!」


Fは、既に動いていた。


蒼の気を極限まで一点に圧縮。


反動で視界が白くなるのを無視し、

“今この瞬間”だけに全てを賭ける。


――踏み込む。


無音。


だが次の瞬間、

衝撃だけが遅れて炸裂した。


ドン!!!


Fの一撃が蒼気の胴を正確に捉える。

蒼気の身体が、空中で大きく弾かれた。


「……っ」


初めての明確なダメージ。

蒼気は後退しながら、口元を歪めた。


与志野が息を荒げながら言う。


「まだ……終わってない……!畳み掛けるぞ!」


無闘は歯を食いしばる。


「当たり前だ……!」


反動は、確実に二人を蝕んでいる。

だが――


今の一撃で、流れは確かに動いた。


蒼気が体勢を立て直す。


蒼の気が、再び集まり始める。


無闘、F、与志野。

三人の連携は確実に蒼気を押し返していた。


無闘が正面で蒼の奔流を受け止め、軌道を逸らす。

Fはその隙間を縫うように踏み込み、最短距離で打撃を叩き込む。

与志野の蒼の弾丸が蒼気の動線を限定し、自由な動きを許さない。


「……いい連携だ」


蒼気が静かにそう呟く。

その直後だった。


地面から、巨大な樹が一気にせり上がる。


「――止める!」


花野の声。


無数の蔦と枝が絡み合い、蒼気の足元を拘束する。

同時に蒼の花弁が周囲を覆い、防壁のように展開された。


「今だ!」


無闘が叫び、Fが踏み込む。


一瞬――

戦況は、確かにこちらに傾いた。


だが。


蒼気は、空を仰いだ。


「……少し、付き合いすぎたな」


 次の瞬間。


蒼の気が、爆発的に膨張した。


拘束していた樹木が、内側から粉砕される。

花野の蒼が弾け、蔦が千切れ飛んだ。


「なっ――!?」


蒼気は、両手を広げる。


その掌を中心に、蒼の気が街全体を覆う円環を描き始めた。


圧が異常だった。


空気が潰れ、建物が軋み、視界の端でガラスが一斉に砕け散る。


無闘が息を呑む。


「……来るぞ……!!」


Fが歯を食いしばる。


「……町ごと……消す気か……!」


蒼気は、淡々と言った。


「さらばだ」


――解放。


蒼の気が、全方位へ爆ぜた。


ドッッッッ!!!!!!!!


建物は耐える間もなく崩壊し、

地面は抉れ、空気は波のように捲れ上がる。


町が砕けた。


無闘とFは、即座に蒼鎧を最大展開する。


「ぐっ……!」


蒼の奔流が身体を叩きつける。

足が地面に沈み、骨が悲鳴を上げる。


それでも、二人は耐えた。


だが――


「ぎゃああぁぁぁぁっ!!」


与志野が衝撃に飲み込まれる。


蒼の弾丸を撃つ暇もなく、

身体が空中へ放り出された。


花野も同時だった。


防御の蒼が砕け、

衝撃に吹き飛ばされ、意識が途切れる。


「花野……!」


与志野と花野は瓦礫の向こうへ消え、

完全に戦闘不能。


一方。


田野は咄嗟に蒼を展開し、翔馬を抱き寄せる。


「伏せて!!」

「クソっ……!」


二人は、爆風に巻き込まれながらも、

致命傷だけは免れた。


ドォォォォォォ……。


砂煙が、ゆっくりと晴れていく。


そこに残ったのは――

かつて町だった、更地。


無闘とFは、膝をつきながらも立っていた。


「ハァ……ハァ……クソが……」

「……町が……もう……」


息は荒く、蒼鎧は(ひび)だらけ。

それでも、まだ折れていない。


蒼気はその光景を見下ろす。


「……まだ立つか」


翔馬が拳を握り締める。


守れなかった。

でも、まだ終わっていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ