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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
4章 蒼の気を持つ者編
45/68

45話 連戦


――鈍い衝撃音。


無闘の身体が、空中で叩き潰された。


「がっ……!」


蒼気の一撃は、力任せではない。

最適化された蒼の気の流れが、無闘の反転循環を上回った。


MODE反転が悲鳴を上げ始める。


(まずい……長くは持たねえぞ……!)


無闘は空中で体勢を立て直そうとするが、

蒼気は既に次の一歩を踏み出していた。


「調子に乗るな」


「……!!」


蒼気の掌に蒼の気が集束する。


その瞬間、地面が蠢いた。


ズズズズッッ!!


「……?」


蒼気の足首に、無数の蔦が絡みつく。


(植物……?)


蒼の気を纏った蔦。

ただの植物ではない。


「今だ……!」


聞き覚えのある声。


花野だった。


彼は遠方で両手を地面に突き、

歯を食いしばりながら能力を最大展開していた。


「Flower Garden……!」


植物が蒼の気に絡みつき、

蒼気の動きを一瞬だけ止める。


(これは……私の蒼の気が吸われている……?)


「小癪な……」


蒼気が植物を消し飛ばそうと蒼の気を溜める。


その一瞬の隙。


――その一瞬で、十分だった。


「フッ!!」


ドン!!!


横から衝撃が来た。

蒼の気を一点に圧縮した拳。


(当て野か……)


「もう一発……!!」


踏み込み、腰、肩、拳――

全身の力を一撃に集約した打撃。


ドンッ!!!!


空気が爆ぜる。


蒼気の身体が、横に吹き飛ばされた。


「……っ」


完全なクリーンヒット。


無闘が地面に着地し、息を整える。


「助かった……!」


蒼気は空中で体勢を立て直し、ゆっくりと着地した。


蔦は、すでに蒼の気で焼き切られている。


「なるほど……」


蒼気は手首を軽く回す。


(三人……いや、翔馬も含めて四人か)


そして、薄く笑った。


蒼気の蒼の気が再び膨れ上がる。


空気が重く沈み、花野が思わず膝をつく。


「っ……何だこの圧……!」


当て野が歯を食いしばる。


「さっきの打撃の感触……まるで答えていないぞ……とんでもなく硬い」


無闘は一歩前に出た。


「だったら……!」


蒼の気を反転循環させ、構える。


「三人で一箇所にぶち込むしかねえな!」


花野も立ち上がる。


「止める……次はもっと深く絡める……!」


当て野が拳を鳴らす。


「倒れるまで何発でも叩き込む」


蒼気はそれを見てほんの一瞬、目を細めた。


「……哀れだな。

数を揃えれば勝てるとでも思っているのか?」


そして、冷たく告げる。


「"量より質"と言う言葉がある。

私とお前達はそれを体現しているようだ……いくら人間が数を揃えようが……」


蒼気が一歩踏み出す。


「神には絶対に敵わない。」


無闘、花野、当て野。


三対一。


だが、誰も引き下がらない。


蒼気が一歩踏み出す。

その一歩だけで空気が軋む。


「行くぞ!!」


無闘が叫ぶ。


花野の蔦が地面を割って伸び、当て野が蒼の気を拳に集約する、無闘が高速で蒼気の背後に回り込む。


三人同時。


蔦は蒼気の足元に絡みついた。


無闘と当て野が蒼気に迫る。


だが――


「遅い」


蒼気は、中央を突破した。


蔦を踏み砕き、当て野の打撃を紙一重で外し、

無闘の反転循環の“癖”を見抜いていた。


――掌底。


無闘の胸に、蒼の気が直接叩き込まれる。


ドッッッ!!!


「グッッ!!」


反転循環が追いつかない。


無闘が地面を転がり瓦礫に突っ込んだ。


「無闘――!!」


叫ぶ間もなく――


「次だ」


蒼気の視線が、花野へ向く。


「……っ!」


花野は全力で植物を展開する。


地面、壁、空中、逃げ場を埋め尽くす拘束。


だが蒼気は自らの蒼の気を一気に解放し、爆発させる。


 ――バンッ!!


蔦がすべて吹き飛ぶ。


「能力は悪くない」


蒼気の拳が、花野の腹部に突き刺さる。


「だが、脆い」


花野は声も出せず吹っ飛ばされた。


「……!!」


最後に残った当て野が、歯を食いしばる。

蒼の気を最大圧縮。


今までで、最も重い一撃。


「喰らえ……!」


踏み込み――だが。


蒼気は真正面から受け止めた。


ドォン!!!!


拳と拳がぶつかる。


当て野の蒼が、軋み、砕ける。


「なっ!?」


「いい根性だ」


蒼気は一歩踏み込み、


「それだけだがな。」


――衝撃。


当て野の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。


静寂。


蒼気は、軽く息を吐いた。


「――まだ終わってねえぞ。」


その声が、空気を裂いた。


蒼気が振り向く。


「翔馬……まだやるつもりか。」


光蒼を纏う翔馬が立っていた。


「これ以上……仲間を傷つけさせない」


翔馬が構える。

蒼気はわずかに目を細めた。


「来い……次で最後にしてやる。」


次の瞬間。


二人が同時に消えた。


――衝突。


音が遅れてやってくる。


拳と拳、蹴りと肘。


速度も、威力も、さっきとは次元が違う。


(……ついてきている)


蒼気が内心で評価を改める。


翔馬はdouble stepを常時発動し

無理をしない範囲で加速している。


蒼気の一撃を致命点だけ避け、受け流す。


(持久戦に持ち込むつもりか?だが翔馬のMODEは発展途上……タイムリミットがあるはずだ)


翔馬の拳が、蒼気の頬を掠める。


蒼気の身体が揺れる。


だが。


蒼気は、まだ余力を残していた。


「いいぞ翔馬」


蒼の気が、再び質を変える。


「本番はここからだ」


空気が再び沈む。


蒼気が翔馬に向け歩を進める。

それだけで、地面が低く鳴る。


瞬間。


蒼気は翔馬の間合いに入っていた。


(来る!蹴り!)


ブォッッ!!!


風を切る音。


間一髪、翔馬は蹴りを受け流す。

反撃の肘が蒼気の肩を掠めた。


小さく、だが確かな手応え。

蒼気は口角を上げる。


(私の攻撃も読まれてきたか……凄まじい成長速度)


蒼気は跳躍し翔馬との距離を取る。


翔馬と蒼気。

二人は数メートルの距離を挟み、静かに向かい合う。


先に動いたのは翔馬だった。

地を蹴る音が遅れて聞こえる。


ドンッッ!!!


蒼気の眼前に翔馬の拳が迫るが、蒼気は半身で躱し、肘を打ち返す。


拳と肘がぶつかり、衝撃波が周囲を薙いだ。


「グッ……!」


「……いい動きだ」


蒼気が低く言う。


「はぁ!!」


翔馬は踏み込み、連打を繰り出す。

蒼気は全てを受け流し、反撃を返す。


どちらも決定打を出せない。


互角。


その時だった。


「蒼気先生……!!」


声と共に、銃声のような衝撃。


「……!音色か」


「久しぶりだな先生!!」


ドドドドドドドドド!!!!!


与志野のthousand fingerが蒼気へと放たれる。


翔馬は即座に距離を詰め、攻撃の隙を作る。


二方向からの挟撃。


一瞬、蒼気の動きが遅れた。


「フン」


蒼気は指弾を弾き、翔馬の拳を受け止める。


「翔馬!!」

「おう!!」


与志野が間合いを瞬時に詰め、両指に蒼の気を込める。


「thousand fingerrr!!!」


ドドドドドドドドドドドドド!!!!


蒼気に連撃が炸裂する。


蒼気は蒼鎧を固めるが止まらない連撃にジリジリと押される。


だが、その直後。


「やるじゃないか音色……下界人にしてはね。」


蒼気の蒼の気が一段階、膨張した。


「神気取りかよ先生!!」


与志野がさらに追い討ちをかけようとした瞬間。

蒼気は視線すら向けずに手を振る。


空気が裂け、衝撃が与志野を直撃した。


「うっ――!?」


身体が宙を舞い、壁を越えて吹き飛ばされる。


「神気取りじゃない……神だ」


「与志野!!」


翔馬が叫ぶ。


次の瞬間。


「ここだ」


横から当て野が突っ込む。


同時に、無闘が蒼の気を反転循環させ蒼気の動きを制限する。


「当て野!翔馬!」


翔馬も体勢を整え、蒼気へ向かう。


三方向からの攻撃。


蒼気はその中心で静かに息を吸った。


「数を揃えたところで……変わらんと言ったはずだ!」


――ドン!!


低い音。


次の瞬間、半球状の蒼の衝撃波が爆発的に広がった。


地面が抉れ、空気が押し潰される。


「ぐっ……!」


無闘が吹き飛び、受け身を取る間もなく地面を転がる。


当て野は衝撃を相殺しようとするが、踏ん張り切れず弾き飛ばされる。


翔馬も蒼鎧で耐えるが、衝撃に膝をつく。


全員が同時に距離を引き剥がされる。


蒼気はその中心に立っていた。

衣服一つ乱れていない。


「……理解したか」


蒼の気が静かに渦を巻く。


「君たちは確かに強い、だが――」


翔馬を真っ直ぐ見据える。


「私を止めるには、まだまだ足りない」


瓦礫を吹き飛ばし、翔馬は歯を食いしばり立ち上がる。


「クソ……!!」


無闘と当て野は瓦礫に挟まれ身動きが取れなかった。


「無闘……当て野……!」

「よそ見するなよ」


ドゴッッ!!!


翔馬の視界が揺れる。


蒼気の一撃が蒼鎧を貫き、身体が地面を抉りながら吹き飛ばされた。


「ぐっ……!」


立ち上がろうとするが、膝が言うことを聞かない。

呼吸が乱れ、蒼の気の循環が一瞬だけ途切れる。


蒼気が歩み寄る。


(やばい……!無闘と当て野が……!いや違う!目の前の相手に集中するんだ!)


「隙だらけだぞ、翔馬。」


蒼気はそう口にすると同時に姿を消した。


「くっ!!」


翔馬が瞬時に拳を突き出す。


だが蒼気はその突きを躱し背後に回り込む。


蒼気の手刀が翔馬の首に迫る。


その時――


蒼気の手が、止まった。


「……?」


肌が粟立つ。


(何だ……この気配は)


正面。


蒼気は、ゆっくりと視線を向ける。


瓦礫の向こう。

粉塵の中から、一人の女が姿を現していた。


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