51話:サブマッチとはこのようにして行うのだ
昼時を過ぎて、『ノー・デス・サブマッチ』の開始まであと三十分を切った頃。
戦勝記念スタジアムの内部は、国籍、老若男女問わず様々な人間達でごった返していた。
誰も彼もが、割り振られた席へ向かって人混みと通路を掻き分けて進み、席に着いた者は周囲の知り合い等と雑談に興じている。
通常、サブマッチが始まる前にする会話といえば『誰が勝つか』や『どちらに幾ら賭けたか』といった内容なのだが、今日の観客達は全く違うことを話題にしていた。
――国外からの、サブマッチファンいわく。
「……思うんだけどさ。ホントにこんな場所でサブマッチやんのか?」
「いやいや、いい場所だろここ。綺麗だし、収容人数だって中央国のスタジアムに負けてねーぞ」
「いやいやいや、こんな良い場所で暴れ回って大丈夫なのかっつー話よ。壊したらやべーじゃん?」
――ダルコ武闘学校の、学生達いわく。
「しかし副会長、結界がある限り安全は保証されているのでは?」
「アホかヴェルゼル。結界なぞ一部の実力者にとっては気休めにもならん。そもそも真剣勝負で安心安全と喧伝しておったが、それが出来たらわらわたちも苦労はない。一体どうするつもりやら……むむむ」
「……副会長、あまり頭を使われると、また知恵熱で倒れてしまいますよべぶしっ!? 5回いっぺんに殴られた痛みがっ!?」
「赤子扱いするでないわ!」
――ダルコ魔導学校の、生徒達曰く。
「へへっ、マティアスの兄ちゃんから特別席のチケット貰ったおかげで、人がゴミゴミしてるとこ歩かなくてすんだぜ♩」
「……ねえアレサちゃん。マティアスさんがもしサブマッチ中、前みたいにドラゴンみたいな姿になったら……このスタジアムって結構手狭だよね」
「へ? あー……確かに。マティアスの兄ちゃんには窮屈かも?」
それは即ち、『ノー・デス・サブマッチとはどのようにして行われるのか?』という疑問であった。
それも当然だろう。
サブマッチとしては前代未聞、選手同士の一対一と謳うこの競技、普通に考えればまず選手どちらかの死で終わり、悪ければどちらも死んで幕引きである。
もっと最悪を言うなら、会場であるスタジアムはダルコ州のど真ん中にあるため、観客や住民もろとも巻き込んでの大事故にもなりかねないのだから。
――デスティの名に釣られてやってきた、とある外国人観客いわく。
「どーせ結界を破れねえくらいの奴らで、殺さないように手加減しながら戦うってオチだろ」
「ふはっ、ありえる。世界の裏の支配者デスティナ・ズゥ・ハーク様でも、腕っぷしは大したことないってわけだ」
あまりの荒唐無稽さに、このような予想をたてる観客もいるくらいである。
――グラウンド傍の控え室にて待機している、当の選手であるマティアスと実況のジュンコですら……。
「えっ、ジュンコさんまで何も聞かされてなかったんですか……!?」
「そーなんよ! デスティのアホ、ウチにただ『オメーは当日実況するだけでいい、結界は不要だ』ってゆーて、サブマッチの段取りすら教えてくれんかった!」
「て、徹底してるなぁ……」
「お陰で今日までずっと遊んどったけど……ホンマにウチ実況するだけでええんよな!? 始まる直前なって怖くなってきた!? 結界どこそこに張れっていきなり言われても完璧なヤツは作れんのやけど!? マティアス君なんか聞いとらん!?」
「い、いえ、僕も聞いてませんけど、デスティさんが自分で言うくらいですし、大丈夫ですよ多分。…………あっ、でも結界を張る事になったら、なるべく壊さないように気を付けますね」
「絶対壊さんといて!? なんかマティアス君の方が怖くなってきたんやけど!?」
殆ど知らないという状態であった。
そしてこのノー・デス・サブマッチ、全貌を知る人間はほんの4人しかいない。
「……ミナサン、ゼッタイ驚くデショウネ」(ひそひそ)
「……だね、今日まで黙ってるの地味にきつかったよ~」(ひそひそ)
「……デスティちゃんに契約の魔法まで持ち出されて内緒にさせられるとは思わなかったワ」(ひそひそ)
特別席で声を小さくして会話をしているガーネット、アルマ、セネートは、決してサブマッチの事を明かさないよう厳命されていていた。
よって、サブマッチの全てを知り、明かせる者はただ一人。
「…………くくっ」
グラウンドの中央に一人立って、観客たちが席に着くのを笑いながら眺めている、デスティだけである。
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「全員揃ったか」
そうしてついに、サブマッチ開幕の時が訪れた。
「観客の皆皆様ども! 長らく待たせたな! サバイブ・マッチの開催をここに宣言する!」
「俺は、デスティナ・ズゥ・ハーク! サブマッチ振興委員会総会長、兼、今回はサブマッチャーも兼任している!」
拡声器を手に高らかに開幕を宣言するデスティに、会場の観客達はついに始まったと歓声を上げた。
「今回開催するサバイブ・マッチは、史上初の種目となる! サブマッチャー同士の一対一、その名もノー・デス・サブマッチ! その実行にあたって、いまから最大限の安全を確保する!」
デスティがそう言うと、スタジアム上部の開かれた屋根から、マネキンのような人型の異形が何十機と侵入してきた。
翼すらもたず不気味に浮遊する人形の群れは、バラバラに別れて観客席の上を陣取ると、空中でピタリと静止したまま動かなくなった。
それを見た観客達の大半は突然の乱入者に驚き、ざわつくも、一部の人間は「ありゃ、マギアゴーレムじゃないか」と目を丸くした。
「まず、サブマッチ中の身体の安全を、警備ギルドのユビキタス・ガードナーズから手配した、防衛用マギアゴーレムで保証する!」
それは、一騎ですら成体のドラゴンにも相当する戦力を持つと噂される、マギアゴーレムであった。
デスティはそれらをスタジアム内に多数配置し、観客達の防衛を任せるつもりらしい。
「さらに、ダメ押しだ」
デスティがそう言うと、スタジアム全体から重々しい駆動音と、魔法の作動音が重なって響き渡った。
スタジアムの開かれた屋根は、外側から結界が張られ、その上で閉じていき。
他に、観客席から外へと通じる扉までもが結界とシャッターで完全に封鎖されていった。
「スタジアムの要塞化機能を起動した。これで、このスタジアムは出入り不可! 物理的、魔法的にもな!」
要塞化機能、それは戦争時の名残であり、いざという時にスタジアムをシェルター化するためのものだ。
これが作動すると何者であっても侵入、脱出することは困難となる。
つまるところスタジアムに閉じ込められてしまったわけだが、観客達のざわめきは、納得によってむしろ収まっていた。
『なるほど、高性能な護衛ゴーレムと要塞化したスタジアムでサブマッチの余波を防ぐつもりなのか』と。
「これで長ったらしい下準備は完了。後は――」
「――俺がオメーら全員を、本当のサブマッチ開催場所へ連れて行く!」
「「「「!!?」」」」
しかし、そのような予想はデスティの発言によって簡単にぶち壊されるのだった。
観客達のほぼ全員が今まで以上に困惑し、スタジアムはざわめきに包まれた。
本当のサブマッチ会場とは?
会場がここではないのなら、どうやってこのスタジアムから、全員を移動するつもりなのか? と。
「くっくくくっ、良い感じに混乱してんな? だが安心しろ、オメーらは何もしなくていい」
困惑する観客達を見たデスティは、満足気に笑うと。
「スタジアムからの脱出、真の会場への移動、そして……選手も観客も、死なないどころか傷一つ負わない、究極のサバイブ・マッチ――それらは全部、いまから披露する『不死の魔法』が可能にする!!!」
パンっ! とデスティが両手を合わせる。
グラウンドで観客たちを眺めている間、ずっと脳内で詠唱し続けていた魔法を、たった今解き放ったのだ。
その途端、スタジアムの空気が振動し、デスティを中心に魔力の光が迸る。
スタジアムの万を超える全員に、魔法が掛けられていく。
「秘術――抜魂!」
デスティが魔法の名を口にした瞬間、変化は訪れた。
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「えっ!?」
同時刻、控室の椅子に座り、映像用ゲイザーが壁に投射する映像でデスティの様子を伺っていたマティアス達は、自分たちの身体が怪しい暗緑色の光を帯び始めた事に気づいた。
その瞬間、まるで身体が風船のように突然軽くなり、視界が上へ上へと上昇していく。
「うわ、あ――!?」
「なんやなんや!? 浮いっ……!?」
身体が宙に浮いているのかと思ったマティアス達は、視線を下に向けて――絶句した。
「ぼ……僕がいるっ!?」
そこには、他ならぬ自分自身が居た。
目を閉じ、椅子に座ったままで、眠ったように動かない自分が。
『くっははははっ! ビビり過ぎだオメーら! 確かに、そうそう体験できねー貴重な幽体離脱だがな――』
「ゆ、幽体離脱!? というかデスティさんまで魂が抜けてるっ!?」
デスティの声で、マティアスはゲイザーが映す映像の方へ目を向けて、仰天する。
そこには仰向けに倒れたデスティと――その口から本人の形をした魂が抜け出ていて、しかも魂の方が喋っているという、冗談みたいな光景が映っていた。
どうやら今しがたの魔法により、身体から魂が抜け出てしまっているらしい。
控室の外、つまりグラウンドと観客席の方からも困惑と悲鳴が聞こえてきて、どうやらデスティはスタジアム内にいる全員を幽体離脱させているらしかった。
『この程度でビビり散らかしてっと、残りの2回でショック死すんぞ!」
「え゛、2回って……?」
だが、それだけに終わらないことを、デスティが告げた直後。
「さあ、ここから霊的に脱出だ! 秘術――送魂!』
魂だけとなったデスティが、再びバンッ! と手を合わせた。
その直後にマティアスの魂と、視界は――
「う、うわぁぁぁああぁぁぁあ!!!?」
――天井を突き抜け、壁、スタジアムの屋根、半透明の結界、青空と雲に、離れて小さくなっていくダルコの街。
ぐるんぐるんと、世界が回転する。あまりにも乱雑すぎて、マティアスは自分がいま高速で飛行している事にも気付けない。
そうしてスタジアムに居た全員は、魂だけがどこか遠くへとブッ飛ばされていった。
「到着だ! 秘術――――通魂!」
そして、最悪の飛び心地はほんの十数秒で終わりを告げた。
デスティの声に合わせて、マティアスは身体(といっても、魂だけの状態なのでおかしな表現ではある)が吸い込まれて、すぽんっ、と綺麗に収まるような感覚を味わった。
「はっ!? な、なにが……起きて……!?」
若干くらくらする頭をマティアスは手で押さえて、そこで生身の感触がある事に気が付く。
五体満足、傷一つなく、千変万化流の白と黒の道着を身にまとい、デスティに魔法を掛けられる依然と全く変わらないように思える。
視界のゆらぎも直ぐに収まったので、試しに右手を開閉して調子を確かめると――あれだけひどい目に遭ったにもかかわらず、万全だと確信できる状態であった。
「あれっ? 特に、なにも変わってないような。…………!?」
今さっきのは何だったのだろうと、マティアスが辺りを見回して……何もかもが一変していることに、ようやく気付いた。
「グラウンドゼノ島へようこそ諸君! ここが真のサブマッチ会場だ!」
デスティの声が、その場に高らかに響く。
グラウンドゼノ島。
それは東のダルコからさらに南東、海を渡った先に存在している孤島の名前だ。
かつて自然豊かな、竜の棲家として恐れられていた場所で、かつての戦争による激しい攻防の末に何もかもが消し飛んだ。
その結果、今では命の気配一つなく、平坦で荒涼な大地だけが残っている。
そして孤島なのでどれだけ暴れても、人里に影響が及ばない、まさしくサブマッチには絶好の場所だ。
スタジアムにいた全員が、その島と思わしき場所に飛ばされて来たらしい。
しかもマティアスとデスティが向かい合う形で並び立ち、そのほかの全員は二人を中心に距離をとって、円で囲むように立たされていた。
そう、まさに、今からサブマッチを行う選手と観客という立ち位置である。
「よし、映像用浮遊型ゲイザーもちゃんと機能してるな、これでサブマッチの様子はダルコでも見られる。つーわけで、いつでもサブマッチを始められるようになったんだが……」
「で、デスティさん、流石に説明してください。いったい、何をしたんですか……!?」
「そりゃそーだよな。うし、オメーら! サブマッチどころじゃねーだろうから説明すっぞ!」
デスティ以外は混乱の極みにある中、このままサブマッチを始められたらたまったものではないとばかりにマティアスは質問すると、デスティも流石に必要だろうと思ったのか、説明を始めるのだった。
「俺が何をしたのか。ズバリ言えば、オメーらに『身体から魂を抜く魔法』、『魂を別の場所に移動する魔法』、『魂を別の肉体に注入する魔法』の三つをかけて、グラウンドゼノ島に連れてきた。以上だ!」
「以上で済むかアホ! さっさと戦いたいからって適当に終わらすなっ!」
「あっ、ジュンコさん」
……あまりにもざっくり説明を済ませようとしたデスティに、鋭いツッコミの声が響いた。
見れば観客たちの最前列に、拡声器を持ったジュンコがいる。
「ナイスだジュンコ。やっぱツッコミがねーと話が回んねーわ」
「ウチをおびき寄せるためにわざとボケたんか!? ちゅーかいまツッコミって書いて実況ゆーたやろ!?」
「つーわけで、コイツは今回のサブマッチの実況を担当するジュンコだ」
「あっ、ハイジュンコですー皆さんよろしゅうなー……って流すなー!」
どうやらデスティはジュンコをおびき寄せるために、わざとやっていたらしい。
もはやお馴染みの、デスティとジュンコによるやりとりで解説が始まるのだった。
「おら、色々知りてーことはあんだろ? オメーが観客を代表して聞いてこい」
「はぁ……まあええわ。そんじゃ聞くけど、ここはグラウンドゼノ島ってゆーたよな? それホンマなん?」
「おう、正真正銘グラウンドゼノ島だ」
「いやいや、ダルコからめちゃめちゃ離れとるやんか! アンタの転移魔法じゃそんな遠くまで飛べんやろ」
「だから、死霊魔法で全員の魂だけを此処に送り込んだ。俺ぁ死体と魂の事ならなんだってできるからな」
「うーん、アンタが死霊魔法の達人なんは知っとるけど……」
確かにデスティによる死霊魔法の出力は桁外れている、ダルコからこの場所への移動も、死霊魔法で出来るなら可能なのだろう。
だがそうだとしても、ジュンコには分からないことがあった。
「……その、『魂だけ』っちゅーのはどういうことなん? 確かに一瞬だけ身体からなんか抜けた感じはしたけど、実際いまのウチらには、ちゃんと身体があるやん」
ぽんぽん、と自分の胸を叩きながら、ジュンコはさらに質問する。
魂だけ連れてきたと言うのなら、自分たちが明確に肉体を持ってこの場所に存在しているのはおかしいのではないか?
「くっくくく……気づいてねーようで作者冥利に尽きるが、その身体は本物じゃねー。死体だ」
「い゛っ!? し、死体!?」
「おっと『誰かの』じゃねーぞ、俺が死霊魔法で精巧に作った、死にたてホヤホヤの新鮮な死体だ。まあ気付かねーのも無理はねえが」
気味よく笑うデスティは、ジュンコを指差しながらとんでもないことを言い出す。
――この身体が、死体?
指を差されたジュンコと、それを聞いたこの場の全員は大いに動揺する。
(動かして調子も確かめたのに、ぜんっぜん気づかなかった……!? ……いやそういえば、デスティさんが作る死体って、生きてるのと変わらないくらい精巧なんだった!)
特にマティアスは直に確かめていただけに、驚きも数倍である。
しかし、サブマッチで散々デスティが作った魔物型ターゲットの精巧さを見ていたので、その言葉も納得できるのだった。
「いまごろ俺達本来の肉体は、ダルコのスタジアムでぐっすり就寝中だ」
「じゃ、じゃあウチらの今の状況って……」
「おう、身体をスタジアムに置いたまま、魂だけがこのグラウンドゼノ島にやってきて、生身とほぼ変わらねえ死体に取り憑いているってところだ」
「此処に来る前の準備って、無防備な身体を守るためだったんですね……」
ここまでの説明でようやく、マティアスはスタジアムの要塞化と護衛ゴーレムを手配した意味を理解するのだった。
そうなると、残る疑問はあと一つである。
「何が起きたかはわかったけど。結局……ここまで回りくどい事したのは何でなん? 『不死の魔法』っちゅーのもよう分からんし……」
それを問われたデスティは、少しだけ考える素振りを見せると。
「そりゃあ…………そうだな。こればっかりは口で話すより、体験した方が早え」
「体験した方がって……?」
「まあ見てろ。今から俺が『演舞』をやる、それで全部理解できる」
デスティは観客達にも向けて、演舞を始めることを宣言し、上を指差す。
「死体錬成、ダーリックホエール、体積10倍落下」
バチチッ、と上空で魔法が炸裂する音、それとほぼ同時に、マティアス達がいる地上全体が突然、影に覆われる。
まるで太陽が雲に遮られたような暗がりに、マティアス達は思わず上を見上げた。
「「「えっ」」」
全員、間の抜けた声を上げることしかできなかった。
巨大な質量を持った、何かだった。
一目で全貌が分からず、距離感が掴めないほどの大きさを誇る明確な『死』が、上空から真っ逆さまにサブマッチ会場へと落下してきて。
「――――全員、いっぺん死んでみな!」
デデスティのその声を最後に、全員は何を言う間もなく押しつぶされたのだった。
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何もかもが、ペシャンコに潰れた。
音も聞こえない、痛みもない、光もない、全てがプツンと途切れてしまった。
突然の死というものはそういうものなのだろうか、とその場のほぼ全員がなんとなく、そう思った。
「こ、これは……まさか……!」
そしてただ一人、マティアスだけは無傷で生き残り、目の前に広がる光景に驚愕していた。
どうやらデスティはダーリックホエールの死体を何十倍にも巨大化させて、上から落としたらしい。
間引きに勝るとも劣らない、恐るべき威力の攻撃であった、しかも不意打ち同然に放たれたゆえにマティアス以外はなすすべなく潰れている。
ダーリックホエールの死体は全員を潰した後、すぐに消えてなくなってしまった。
マティアスが驚愕したのは――その直後に起きた出来事である。
「くくっ……くっくっくくくく……! やっぱオメーはコレじゃ死ななかったか。マティアス、別に死んでも良かったんだぜ?」
「デスティさん……! これが……!」
「ああ、『不死の魔法』、その実演だ」
そこには――今しがた潰れて即死していた筈のデスティが、周囲にいた全員が、塵が集まるかの如く肉体を再生させ蘇るという、筆舌に尽くしがたい光景であった。
「な、なな……っ、いま、ウチ死んだよな……!?」
「くっくく、死んでる身体でいくら死のうが、本当に死にはしねーってことだ」
突然の死というショックにジュンコたちは固まるも、身体に何の異常もなく復活していることに気付くと、徐々に落ち着きを取り戻していった。
デスティは全員が落ち着くのを確認してから、堂々と宣言する。
「これが『不死の魔法』だ! 今身をもって体験した通り、この身体はいくら傷ついても、死ぬほどの損傷を受けたとしても、粉々に消し飛んでも! 元の完璧な状態に再生する! ついでに痛みも感じねー!」
「ここまで言えば、全員理解したな? ここで俺とマティアスがどんだけ暴れ回ろうが、その余波で全員が巻き込まれよーが、誰一人として死なない! これが『ノー・デス・サブマッチ』だ!」
「「「「!!!!」」」」
つまるところ、『ノー・デス・サブマッチ』とは、観客も選手も不死身の肉体となった上で、2人の強者が巻き添えなどお構いなしに殺し合うという、究極のサバイブ・マッチである。




