42話:居ても立っても居られない
日が傾いて、もうじき帰りのホームルームが始まろうとしている、ダルコ総合学園の1年生の教室でのことである。
生徒達は目前に迫った放課後を期待しがやがやと騒いでいる、そんな時であった。
「ふー、やっと全クラスに配り終えた……」
「アッ、マティアス、モウ直ぐホームルームデスヨ?」
「先生かと思ったー。どこ行ってたんだよ、放課後のサブマッチ、何の種目やるか話そうと思ってたんだぜ?」
ガラリと教室のドアを開け、一仕事を終えた雰囲気を出しながらマティアスが入室する。
ガーネットを含めたクラスメイト達が声をかけると、マティアスは「コレを配ってたんだ」といい、その手に持ったプリントの束から一枚を取り出してみせる。
「ナニナニ……『サバイブ・マッチ見学、体験会開催のお知らせ』……?」
ガーネットは大きく書かれた文字を読み上げる。
そのプリントにはデフォルメされた絵で、大量の魔物型ターゲットを魔法や銃で倒すサブマッチャーの姿が描いてあった。
「なにこれ、なんかやんの?」
「告知用のプリントだよ。今度の週末にサブマッチの体験会をやろうと思ってるんだ」
「良く描けてマスネー。相変わらず見事なオテマエデス」
「うん、絵は描き慣れてるんだ。変身するためのイメージを掴むための千変万化流の鍛錬なんだよ」
「上手いのは知ってたけど、よくこんなに枚数用意できたなー。版画で刷ったの?」
「ううん、書いたのは一枚だけ。原画を元にして、他は白紙の紙を魔法で変身させたんだ」
「うわー器用、魔法でそんなことできるんだ」
マティアスは教室に並ぶ机の最前列に小分けしたプリントを置いていく、一枚ずつとって後ろに回していくことで、クラス全員にプリントを行き渡らせるようにするためだ。
クラスメイト達はプリントをそれぞれ手に取って目を通す。
「なになに……『保護者向けのサブマッチ体験会を休日に開催します、腕に覚えのある方も、そうでない方も奮ってご参加ください』。って……え、親を学校に呼ぶの?」
プリントの裏面には体験会の趣旨と、細かいプログラムが記されていた。
学校の運動場を開放し、デスティが用意したサブマッチ実行装置を使って、参加者によるターゲット撃破体験会、参加者によるサブマッチ参加、そして最後に学生同士のサブマッチを見学するといった内容である。
「うん、皆にはこのプリントを親に見せてあげて欲しいんだ。それと、その気があったらでいいんだけど、サブマッチの観戦に選手で参加してくれる人も募集してる」
「ワォ。授業参観ならぬ、サブマッチ参観デスネ」
「親に見せるくらい別にいいけど。どうして?」
「拙者分かったでござる。デスティ先輩の指示でござるな? 拙者ら学生だけでなくとうとう親もターゲットに入れたというわけでござる」
「あ、いや、別にデスティさんに頼まれたわけじゃなくって」
「へ? デスティ先輩の指示では無いのでござるか?」
「うん。僕が思いついて、主催したというか……」
「「「マティアスが?」」」
クラスメイト達は驚いた、このような広報活動はデスティが率先して行う印象ばかりで、マティアスが主体であるとは夢にも思わなかったのだ。
「今度、大きなサブマッチをやるんだ。いまデスティさんは国外からお客さんが来きてもらえるように準備してるんだけど……それはそれとして、国内からお客さんが来るのは悪いことじゃないでしょ? だから、僕なりに考えてみたんだ。どうやったらサブマッチに興味を持つ人を増やせるかって」
「ソレデ親デスカ」
「うん。僕達から1番近い大人ってやっぱり親だし、まずはそこから広めようって」
――次のサブマッチは3ヶ月後、デスティとマティアスの試合を行う。
そう聞かされたその日の夜、マティアスはいても立ってもいられなくなった。
サブマッチの今後に関わる重要な一戦に自分を対戦相手に選んでくれた事が嬉しく、何か力になりたいと、やる気に満ち溢れていたのである。
そうしてマティアスは、思いついたままに筆を取って、この企画とプリントを完成さていたのだった。
「なるほどね、そーいうことだったら私手伝うよ! サブマッチやる!」
「パパママは故郷にイマスカラ無理デスケド。ワタシもサブマッチやりマス!」
「たしか俺の親、じーちゃんに無理矢理戦い方を叩き込まれたってぼやいてたことあったんだよね。もしかすっとサブマッチにハマるかもしんない」
「拙者はサブマッチにて親超えを果たしたいで候」
「みんな……ありがとう!」
快く協力に応じてくれたクラスメイト達に、マティアスは深く感謝する。
突然このような事を始めれば、もしかすると相手にされないのではないかと不安に思っていたのだが、杞憂だったらしい。
「気にしないでクダサイ。マティアスとは戦友と書いてトモと呼ぶ仲デスカラ」
「そうそう、いつもサブマッチ楽しませてもらってるし」
「わかる。あとデスティ先輩に貸しが作れそうじゃん? ズゥ・ハーク家の人に貸しなんて、ぜったい良いことあるよ!」
「マティアスはどのようなハンデを背負っても嫌な顔ひとつせずに付き合ってくれる故」
それまで――サブマッチを知る前では、あまり話したことが無かったクラスメイト達でも。
競いあってきた時間が絆となって、マティアスの力になってくれたのであった。
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「よーし、頑張るぞ! デスティさんは連絡取れないけど、ジュンコさんに武器の貸し出しをお願いして――」
「……にしても、保護者とはいえよく休日に学校を開放する許可とか貰えたなあ。生徒が頼んで出来るもんじゃ無い気がすっけど」
「? そうでもなかったよ? 学園長先生に頼んだら二つ返事で許可を貰えたけど」
「マティアス……ソレ絶対、デスティナサンの差金だと思われてマスヨ」
「確かに、俺達も最初はデスティさんが主体だって勘違いしたもんな」
「え? あっ、言われてみれば、頼みに行った時。学園長先生、めちゃくちゃ汗をかいてたような……」
「あー……まあいいじゃん! 許可もらっちゃったもん勝ちっしょこういうのって!」
「言わぬが花、というヤツでござる」




