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25話:魔導学校に異変アリ

「間引きの人達とサブマッチですか!?」


 初めてのチーム戦となる大規模サブマッチ、その相手はなんと『間引き』の人間であった。

 てっきり、各校の生徒同士でチームを組み、学生の範囲内で頂点を決定するものだと思い込んでいたマティアスは、まさかの対戦相手に驚愕する。


「ああそうだ。現役で魔物を狩り続ける実力に、何より有名人だからな。サブマッチに参加すりゃ民衆共も注目すること間違いなし。流行の火付け役にうってつけの相手だ」

「い、言われてみれば確かに」

「そんな間引きに、オメーら若きサブマッチャー達がサブマッチで勝負を挑む! 自分の力が魔物狩りのプロ相手にどこまで通用するか……試してみたくなるだろ?」

「オオッ! 燃えてキマシタ!」

「その意気だ! そんであわよくばオメーらが勝て! 『サブマッチは学生でもプロの魔物狩りに勝てる競技』だと知らしめりゃ、若い奴らがこぞって参加するようになるからなぁ!」

「おい最後。下心全開で台無しや」


 デスティの熱弁を聞けば聞くほど、なるほど確かに、サバイブ・マッチという競技を大きく広めるのに相応しい相手であるのは確かだった。


「それにしても……よく間引きの人達をサブマッチに呼べましたね。間引きの人達って、力をこういう興行に使うのは遠慮してるイメージがあるんですけど」


 マティアスは半分驚愕、半分感心しながらデスティに尋ねる。


 間引きとは、魔物を屠るための力を継承、保持する一方で、魔物以外に力を向けることを硬く禁じた職業でもある。

 安全性をなるべく確保しているとはいえ、サブマッチという興行に力を使うことに対し、彼らはいい顔をしないのではないかとマティアスは思っていた。


「ああ、その辺りの手配はセネートに頼んである。アイツが直々に『サブマッチに参加してほしい』って言えば、連中も嫌とは言えねーだろうからな」

「セネートさんがですか?」

「ん? 知らなかったか。セネートは『終決士族しゅうけつしぞく』だぞ。それも当事者(・・・)の方」

「「え゛」」


 アルマの相棒である精霊セネートが、『終決士族』であり『当事者でもある』という事実に、マティアスとガーネットは揃って固まる。

 それはまさに、意外な名前が、驚きの情報を伴って出てきたという感じの反応であった。


「き、気付かなかった……! どうしよう、僕、セネートさんに失礼なこと言ってないよね? 不敬罪にならないよね?」

「ダイジョウブ……だと思いたいデス」

「なあデスティ、ウチ終決士族がなんなんか知らんのやけど。なして二人は固まっとるんや」

「そりゃあ、教科書に載るレベルの偉人に今まで気付かなかったっつーことだ。詳しくいうと歴史の話になるんだが……」


 慌てふためく2人に対し、1人首を傾げるジュンコ。

 話について来れていない彼女に、デスティは終決士族の事を説明する。


「ダルコ州は人類と魔物の戦争で、最終決戦の舞台になった土地だ。当時(・・)この決戦に参加し、戦争に終止符を打った英雄達は『終決士族』と呼ばれ、今日こんにちまで讃えられている」

「ほうほう、昔の偉い人か」


「一方で、現在(・・)も終決士族と呼ばれている奴らがいる。当時戦った英雄達の子孫だ。こいつらは『間引き』の総括をやること条件に、一族として現代まで力を継承してる。ちなみに、ダルコ州にいる間引きの大半はコイツらが占めてる」

「今も子孫がその称号を名乗っとるんやな。ん……? まさか、当事者の方っちゅうんはもしかして」


 おおよそ百年前の英雄である終決士族と、現代まで力を紡ぎ魔物を狩ることを使命とする終決士族の二つが説明されて、ジュンコはデスティが言っていた『当事者の方』という言葉の意味を察した。

 その様子を見てデスティは「察しの通りだ」と言うと。


「セネートは前者の終決士族だ。なんせ精霊だから寿命が無い。つまりアイツは最終決戦に直接参加し、今なお実在する伝説の英雄ってわけだ」

「あの雰囲気で伝説の英雄かぁ……。精霊って分からんもんなんやな。てか、そんな偉人やったら気が付きそうなもんやけど」

「最終決戦に参加した全員が『終決士族』の称号を頂いてますから、人数が多いんですよ……」

「記念館に行ッタラ凄い数ノ銅像ドーゾーが置いてアリマス。正直ショージキ覚えきれマセン!」


 ジュンコは「なるほどなぁ」と納得する。

 そういう事情があれば、初対面でセネートが終決士族だと気付くのは難しいかもしれない。


「そんで、話をサブマッチの件に戻すとだな。英雄の子孫と本人なら、当然本人の方が偉いだろ? だからセネートがそれとなーくサブマッチを勧めりゃ、間引きの連中もサブマッチに良い印象を持つはずだ。あとは俺がサブマッチの話をもってくればいい」

「ソレでこの間、セネートと2人ッキリで話してたんデスネ」

「ぬ、抜け目がなさすぎる……!」



 ダルコ在住のマティアス達ですら気づかなかったセネートの身分に気付き、サブマッチに好印象を持たせてから存分に利用する。

 デスティの用意周到さに、マティアスは軽く戦慄するのであった。


「つーわけで、間引き連中をサブマッチに誘致する手筈は整ってる。あとは情報を纏めて、優秀なサブマッチャーに声かけをしていくぞ」

「えっ?」


 既にチームアップを始めようとしているデスティに、マティアスは首を傾げた。


「あの、デスティさん。魔導学校にはサブマッチを布教しにいかないんですか?」


 総合学園、武闘学校に並ぶ三大学校の一つ、『ダルコ魔導学校』にはまだ行っていなかったので、次はてっきりそちらへサブマッチをしに行くものだと思っていたからである。


「あー、そういや言ってなかったな。魔導学校にはもう広めてある。つか最初に広めた」

「そうだったんですか?」


 デスティはうっかりといった様子で頭をかく。

 どうやら既に、魔導学校にはサブマッチが広まっているらしい。


「実はな、ウチら最初はダルコ魔導学校に転校する予定やったんよ、ウチもデスティも基本魔法使いやしな。それでダルコ州入った初日にサブマッチをやったんやけど……。なんかデスティが『見所ある奴が見当たらねー』ってゆーて、とつぜん転校先を総合学園に変えたんや」

「変わった魔法を使う奴がいねーかと期待したんだが、どうにも変わり映えしなくてな」


 ジュンコが、途中から「デスティ(コイツ)のせいやデスティ(コイツ)の」と言わんばかりにジト目でデスティを睨みつつ、その経緯を話した。

 一方でデスティは全く悪びれる様子もなく、淡々としている。


「変わり映えシナイ? 魔導学校の人、地味デシタ?」

「地味っつーか、学校で教える魔法が全国で統一されてるせいで、どこの魔導学校でも使う魔法が同じだった。よって見飽きた」

「み、見飽きた……」


 「俺はもっと面白くて新鮮な技を使う奴がみたかったからな」と、デスティは魔導学園への転校を取りやめた理由を語った。

 どうやら、高度な死霊魔法を扱うデスティにとって、魔導学校の生徒達が扱う魔法はどれも同じで地味に見えてしまうらしい。


「まあ破壊力だけならオメーらクラスの奴らがゴロゴロいるのが魔導学校だ。まあゴロゴロいるせいで、この通り実行装置からサブマッチの戦績を取り寄せて、成績優秀者を炙り出す必要があるんだが」

「ああ、机でやってた作業ってそういう事だったんですね」


 今日、道場に来てからずっとデスティが行っていた作業の意味にマティアスは気づいた。

 デスティが読んでいた紙束、あれは全て行われてきたサブマッチの勝敗が書いてあり。それを吟味することで、今度の大規模サブマッチに相応しい人物を探していたのであった。


「ほーん……。そんで、魔導学校でデスティのお眼鏡に叶う人材は見つかったん?」

「難しいな。どこの学校よりも多くサブマッチを開催してて情報はたんまりだが……どいつもこいつも勝って負けてを繰り返してる。マティアスやガーネットみたいな圧倒的な実力者は見当たらねー」

「実力ハクチュー、というやつデスネ」

「そうなると、その中でもいちばん勝率が高い人を選ぶんですか?」

「そうなる。ま、運よく勝ちが多かった奴を選ぶことに――――!?」



 デスティがそう言った直後であった。

 突如としてマティアス達の背後に、眩い閃光が炸裂した。

 眩しくて見ていられなかったが、バサバサと何かが飛び散らかる音もしている。


「ワッツ!? 何の光デスカ……!?」

「机からです!」

「デスティが作業しとったヤツか! 魔法陣が壊れたんちゃうか!?」

「いや魔法陣は正常に作動してる。ただ尋常じゃねぇ数の情報が送られて来やがった」


 どうやら光は魔法の炸裂光で、サブマッチの情報を紙として出力する魔法陣が連発している所為らしい。

 そうなるとこの光に害はない、何かが飛び散らかる音も、魔法陣から出現した紙束が大量に宙を舞っている音である。


「魔導学校の誰かが連続でサブマッチをしてやがるな……!」

「サブマッチを何度も!?」


 マティアスは一瞬、聞き違えたのではないかと思った。

 サブマッチは大量のターゲットを大技で一気に倒すことが基本となる。

 当然、一度やるだけでもかなり消耗するはずなのだ、しかしそれを連続で行っている人間がいるという。


「くっくく、どこのどいつだ? こんなおもしれー事出来る奴は魔法学校には居ねーはずだが……!」

「当たり前のように他校の生徒を記憶シテマスネ……」


 デスティは心底愉快そうに笑うと、魔法陣が置かれた机のところへ戻って、飛び散る紙を素早く回収していく。

 それもそうだろう、この状況は魔導学校で拮抗していた力の均衡が崩れた可能性が高く、即ち、魔導学校にデスティすら見落としていた強者がいたということに他ならないのだから。


 そうして、デスティは回収した紙に次々と目を通していって。



「…………なんだ(・・・)コイツは(・・・・)?」


 困惑の声をあげるのであった。


「!? なになに? 何が書いてあったん?」


 戸惑うデスティなど初めて見たとばかりに、ジュンコは興味津々にデスティの持つ紙を覗き込みに行った。

 マティアスとガーネットもまた、ジュンコに釣られて行ってみると……。


「こ、これは……何やコレ?」

「サブマッチを今日だけで何十勝もしてますけど……これって」

「コレ、人デスカ???」


 デスティと同じように、困惑する。


 紙に書かれていたのは、数十戦と行われたサブマッチの結果。

 敗者の名は様々であったが、勝者は全て同じ。

 マティアスは紙に書かれている勝者の名を、読み上げた。


対魔物用たいまものよう広域殲滅こういきせんめつ飛翔箒ひしょうそう……アマツミカボシ……?」


 明らかに人のものではない、その名前を。

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