第十五章『埋葬』~第十六章『陽昇れば』
――僕らは穴を掘っていた。
穴は、できるだけ大きいほうがいい。そうでないと埋めることができなから。
掘ってる途中にツメが欠けたりしても、気にしていられない。できれば誰にも見られたくない。迅速に行動する必要があった。
穴に埋めてすべてを隠蔽するのだ。そうしなければ僕らは狙われる。
僕らは殺してはいけないものを殺したのだ。
第十六章『陽昇れば』
三日目の朝。僕を起こしたのは、相田美崎であった。柔らかい笑みを浮かべながら「おはようございます」と挨拶をしてくる姿には、思わずため息が漏れそうになる。
僕も「おはよう」と返して、ついでにまわりを見わたす。すでに大部屋はもぬけの殻で、昨日同様に寝過ごしてしまったようだ。
「ずいぶんお疲れのようですね。なんでも肝試しの最中にケガをなされたとか」
彼女は包帯で幾重にも巻かれた僕の左腕を見て、そう言った。皆にはハデに転んでケガをしたというような説明しかしておらず、昨日の出来事は誰にも話していない。
「ところで、今日はどこに行かれるご予定で?」
「午前中は村の散策でもしようかって思ってたんだけど、よく見たら昼前だしね。今日は資料館のほうで涼しむことにするよ」
僕がおどけたように言うと、彼女もそれにあわせて笑ってくれる。おかげで昨日の鬱屈した感情が少し引いてくれた。
「散策で思い出しましたが、丘のあるほうへは近寄らないでくださいね」
「丘……?」
丘と言えば、あの不思議な少年――阿咲涼貴は、自分の家がその周辺にあると言っていたはずだ。
「はい。周辺ではヒトが住まなくなって随分経つのですが、そのくせ廃屋だけがたくさん残ってまして、この村の人々もあまり近づかない場所なんです。話にはいつ倒壊してもおかしくない建物もあるそうですので」
「はあ……」と僕は生返事をする。丘の周辺に住んでいると言った阿咲涼貴と、岡の周辺は誰も住んでいないと言う相田美崎。これはどういうことなのだろうか。
「ふふっ。丘には鬼が住んでいると聞きます。興味本位で近寄ると食べられるかもしれませんよ」
少女はしだれかかるような視線で僕を見つめてくる。その妖艶な姿に僕の背筋は打ち震えた。
「そういえば、ご存じですか? 昨夜、三歳の子供が行方不明になってまして――」




