第十二章『そのアタリ』
そういえば小学生のときもこうして男一人で肝試しへ行かされたことがある。あのときもやはり男子の人数が女子の人数をうわまわっていた。かくして歴史は繰り返されるわけだ。
あのときと違うのは、僕が大学生になったということくらいか。それを考えれば、あまり進歩は見られないなと、僕は自嘲気味に笑ってしまった。
ちなみに肝試しなんて名称がついてるが、やることは資料館まで行って、その後は森のあるほうを迂回して旅館に帰ってくるだけのものだ。脅かし役もないし、墓地なんかを通るわけでもない。言ってしまえば、夜道の散歩をを肝試しと置き換えただけのことである。
あとはそれにイベントを盛りあげてくれる同伴者がいるかいないかだけの話で、当然一人で夜道を歩いてるだけの僕にとってはつまらないイベントでしかない。
そんなことを考えながらぶらぶら歩いていると、いつの間にか森の中にいた。
木々に貴重な光源である星明かりまで奪われた森は、物音一つなく、僕は奈落に迷いこんでしまったのだろうかという錯覚を起こしそうになる。
僕はその森に漂う空気に圧倒され、思わずゴクリと喉を鳴らす――と同時に、近くの茂みから物音が届き、僕は思わず懐中電灯を向ける。
しかし、その茂みは何事もなかったように微塵も動きを見せようとしない。それでもと僕はそのあたりに懐中電灯の光源を当てていくが、その音の原因は発見できなかった。
(なんなんだろう?)
僕は首をかしげながら、耳も澄ませながら、注意深く周辺を見わたしていく。と、モノ音が聞こえた。最初は風の音かと思ったが、よく聞いていると話し声だった。
僕は用心深くなりながら、その話し声がするほうへ、茂みを掻きわけながら進んでいく。
進むに従って、木々の合間から月明かりが降りそそぐようになり、視界もだいぶに明るくなっていく。
これなら明かりがなくても、なんとかなると判断した僕は、用心のために明かりを消して、声の聞こえるほうへ少しずつ進んでいく。
木々から射しこむ、わずかな光源から僕はようやくその声の主であろう人影を発見する。そこだけ影になっているせいで姿を確認することはできなかったが、僕にはその声を聞いて誰かがすぐにわかった。
田森である。もう一人は女の声――ひょっとして相田美崎だろうか。
二人の吐息は熱っぽく、切れ切れしい。時折、衣擦れの音も聞こえてくる。
僕は二人の関係がここまでいっていることに驚きを隠せなかった。
それと同時に背中をなぞらえるような寒気が僕の声を封じこめ、身動きまで出来なくなっていた。
僕は、見てはいけないモノを見てしまったのだ。




