第十一章『夜』
旅館から一歩外に出れば、待っていたのは人口の明かりがほとんどない原始からの夜である。
その闇夜に圧倒されながら十六人の若者は、小さな明かりを頼りに集まっていく。すべてはレクリエーションのため――すなわち肝試し大会のためである。
「これなら脅かし役はいらねえな」
参加者の誰かがふとつぶやく。その意見には僕も同じだった。
この村の夜は、僕がかつて経験したことないほどの暗さが漂っている。それが言い知れぬ不気味さを放ち、その歩みの一歩一歩を鈍重にしていく。そんな闇に懐中電灯一つで挑まなくてはならないのだ。
「参加者の皆さん、こんばんわ。こうして欠員がなかったのはなによりです。つきましては――」
この肝試しの主催者である臼木さんが開会のあいさつをはじめる。彼女も玖木ゼミ所属生で、その利発な性格で僕らのゼミをリードする人物である。
「肝試しのルートですが、ここから交番前を横切り、そのまま資料館まで行ってください。着いたら、出入り口の前に私が落書きした村が発行している記念メダルを一枚取ってください。あとは森のあるルートを迂回して旅館まで帰ってきてください。
尚、肝試しは男女一組のペアで行ってもらいます。あまった男二人はそれぞれ一人で行ってもらいます。その組み合わせはくじ引きで決めますので」
臼木さんは「反論は一切認めません」と話を打ち切ると、くじの入った箱を男女別にまわしはじめる。
「鈴木くん、八番と九番がアタリよ」
意地の悪い笑みを浮かべながら、臼木さんは僕にくじを引くことをうながす。僕は返答する気にもなれず、嘆息をついて箱から紙片を一枚取りだした。
そして紙に書いてあった数字を見て、僕は思わず呻き声をあげた。見事にアタリを引いてしまったのである。




