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花の音  作者: 高山之信
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74/81

74 広く、深く

「花菜ちゃん、小さい頃は、嬉しそうに初恋の女の子と結婚するって言ってたものね」

「ちょっ……待って……お母さん⁉」

花菜が自身の身の上を伝えた後、懐かしむような母の言い様。

花菜に賛同する(いとま)は全く無い。

恐らくだが、響のことを言っている。

その頃はまだ、女性同士の恋愛といった機微(きび)に対して無自覚なころであった。


「あの後その子に会えなくなって、シュンってしてたの懐かしい……。あれから花菜ちゃん、結構変わっちゃったわよね」

「状況証拠として、弱すぎない⁉」

いくらなんでも根拠がそれだけでは無いと花菜でも分かる。

明らかに母親は、なにかしら強い根拠でもって花菜のことを見ていると感じられた。


「だって、花菜ちゃんあの子に失恋したから髪切るって言って……。長かった髪、バッサリ切ったじゃない」

「あっ、はい……。いやでも、それでも状況証拠としては!」

少し状況証拠が補強されてしまった。

確かに花菜は響に失恋して、髪を切るよう母にお願いしていた。

理由に関しても、当時はバッチリ伝えてしまっていた。


「えーっ……。花菜ちゃん小さい頃からテレビで私がイケメンだねーって言っても、塩対応だし。明らかに女性アイドルの方が反応よかったじゃない」

「おっしゃる通りで! でも、女児が女性アイドルに憧れるのはよくある話じゃない……?」

花菜は小さいころから男性に対して興味がなかったのか、テレビに映るアイドルグループなどにも同様に然程(さほど)感じ入るところがなかった。

対して、女性アイドルグループはキラキラして見えて子供心に楽しかったように記憶している。

同性が身近で憧れのような存在に思えたのも、もちろんあったのだと考えられる。

後々に別問題なものだと気付くまでは、そんなこと考えもしていなかった。

もちろん好きな男優などもいたのだが、好きな女優とは根本的に抱く感情が異なっていた。


「そのときは、ああ花菜ちゃんってこういう女性アイドルの方が好きなんだぁ程度だったのよ」

「なら、どうしてぇ……?」

「でも、その後に私達に対して好みのを隠すようになったじゃない?」

「うん……まぁ……。えっ、分かるの⁉ ちょっと待って、分かるの⁉」

花菜としては完璧な偽装だったのだ。

だが、どうやら両親には筒抜けだったらしい。

この件に関しては、少なからずショックを受けてしまう。


「まぁ、ここまでなら単に好みが変わったのかなぁって思うだけかもじゃない。でも、花菜ちゃんが聴く音楽ってやっぱり女性のものばかりだし」

「ええっ、私の聴いた音楽なんて分かるの⁉」

「花菜ちゃん、音楽聴くぐらいならって家族のPCの共有アカウントで気軽にやるからお母さんに履歴見られちゃったりするのよ? しかも、お父さんとお母さんが使わないようなサイトわざわざ使って」

「見ないでよぉ! 娘の履歴ぃ!」

相原家は共用でパソコンを使っている。

共有のアカウントと個人のアカウントを使い分けているのだが、大体の軽い物事は共有アカウントで済んでしまうので両親と花菜とも雑事はそこで済ませている。

花菜とて自分の部屋でスマホではなくパソコンの画面で動画が見たい程度のことや、学校の調べものがパソコンの方がやりやすい程度のことでしか利用していない。


「大丈夫よ。お父さんの検索履歴だって見てるわ」

「家族のプライバシー⁉」

「共有アカウントでする方が悪いのよ」

母親は自分のパソコンを持っているので、そもそも共用のパソコンをあまり使わないはずである。


「お母さん、これまで娘と父親のインターネットの履歴を見て楽しんでたの⁉」

「えぇっ、だってお父さんか花菜ちゃんが家族のパソコンでうっかりエッチなサイトとか見てたら面白いじゃない」

「家族会議だよぉ!」

これまで知らなかった母親の趣味が開示され、花菜は別方向でもてんやわんやだった。


「ま、それは置いておくとして」

「置いてぇ……今はおくしかないのかなぁ……!」

時と場合である。

だが、いつか問い詰めねばならないと花菜は静かに決意した。


「そんなわけで花菜ちゃん、それを除いても明らかにこっちに合わせて対応変えていったの丸分かりだったのよ」

「除いてもなのぉ⁉ そんなにぃ……」

花菜の中では完璧な偽装だったのだ。

ただ母親は軽く言っているが、それだけでは無さそうなのが花菜にも分かった。

自分は恐らく偽装の失敗を言外のところでも犯していたことを。


「あと、花菜ちゃん。『つづらおり、こいもよう』の新刊出てるから、早めに買ってきてね」

「えっ、はっ?」

今母が語ったのは、花菜が本棚の奥の方に仕舞ってある少女同士の恋模様を描いた作品名である。

それを母親が口にしたものだから、思考が停止してしまう。


「ちょっ……ちょっと待って。なんでお母さんが私の本棚の本を読んでるの?」

「お掃除してたら、たまたま目に留まって……。花菜ちゃんどんなの読んでるのかなって気になっちゃうじゃない? だから、作品名で検索してみたら……」

「ううっ! 情報化社会!」

「花菜ちゃん、超スマート社会も目前よ」

日頃から母親は洗濯物をしまいにきたり、掃除に部屋に入ったりする。

花菜は鍵付き引き出しやベッドの裏、クローゼットの奥などには隠したりはしていない。

こういう本は、案外堂々と本棚に並べていればバレないと思っていた。

だが現在、作品名から簡単に内容がバレてしまう恐ろしい世の中だと花菜は(もだ)えている。


「花菜ちゃんがいろいろお話ししてくれないから、気になるっていうのもあったのよ? そしたら、本棚の本、ほとんどそういう本ばかりだったから……」

母親の言う通り、花菜の本棚の本は参考書や著名な小説以外はほとんどが女性同士の物語である。

花菜はスマホの中身にそういう本があると、なにかの折に人に見えてしまうリスクを取って物理本を選んでいる。

そうでない本は電子のものも所持しているのだが。


「こういうのってタイトルから結構分からないものね」

「そうだよねぇ……」

だからこそ、花菜は堂々と並べたのだ。

作品名から検索する母親でなければ、バレないはずだったのだ。


「それで今ってネットで1話とか試し読みできるじゃない?」

「ああ……できてしまうよねぇ……」

「そしたら面白そうだったから、花菜ちゃんの本棚から借りちゃった!」

「借りちゃったんだぁ……」

「もう、そしたら面白くって!」

「そうだよね、面白いよね……」

自分が面白いと思っているものを親からの賛同が得られて、いっそ嬉しい気持ちを優先させようかなどと花菜の心の中は現在ぐちゃぐちゃである。


「えっ、あれ……。お母さん、私の本棚全部見たの……?」

把握(はあく)済みよ! ちょっとやーらしいのを買ったり、お気に入りの女優さんの写真集がちょっと過激だったりするのも知ってるわよ!」

「そっ、そこまでネタバラししなくてもいいぃぃ……いいよぉ! 娘のプライバシー! ま、守って!」

「これに関しては、心配させた花菜ちゃんが悪いわよぉ~」

花菜からしたら、犯罪者の暴論である。

隅から隅まであらわれているらしく、響が気付いていなかったところまで把握されている。


「お母さんだって、別にクローゼットの奥とか机の引き出しの中とかベッドの隙間とか探したりしてないのよ? 花菜ちゃん、隠し方が巧妙なようで雑だったから……つい……」

以前響にも指摘されていたが、花菜の隠し方はダメらしい。

次からは素直に鍵付きの引き出しに隠そうと、相原花菜は決意を新たにした。


「いや、勝手に本棚漁る方が悪いのであって……! 私は悪くないよぉ⁉」

「花菜ちゃんを心配する親心ってことで、ここは勘弁してね」

「それにしては、私の本棚に詳し過ぎるぅ! ブックカバーかけてる本だってあったじゃない!」

「あれは逆効果よ、花菜ちゃん。ああいう本ほど、人は興味を惹かれてしまうのよ」

母親が花菜の理解の及ばない心理を解説してくる。

だが、隠したい対象は既に本棚のすべてを解き明かしたあとである。

まったくもって無駄なアドバイスであった。


「今まで口にしなかったけど、自分の母親にストーカー気質があるぅ!」

「大丈夫よ、花菜ちゃん。それは少し、自覚があるから」

「なんにも大丈夫じゃないよぉ!」

どうして花菜の周りの人間は自覚があれば大丈夫だと言い切る人間が多いのだろうと打ちひしがれる。

花菜からすれば、なにも大丈夫ではないのだ。


「それと芳川響さんって、花菜ちゃんが昔よく言ってた響ちゃんでいいの? 写真の面影があるけれど」

「ああっ……! ええっ……⁉」

もう花菜は、まともな言葉を発することができなくなってしまっていた。

確かに小さい頃に撮った写真を部屋に飾ったいたし、母親は幾度も目にしただろう。

花菜は響の名前を出さないようにしていたが、そういえば響が来訪した際にフルネームを名乗っていたことを思い出す。

響と会っていた頃の花菜は、それはもう響の名前をよく両親の前で出していたのだ。

そして花菜はかなり変わってしまったが、写真から響は成長した姿が読み取れてもおかしくはなかった。


「ああやっぱり、そうなのね」

花菜は固まったまま動けないでいるだけなのだが、母親はまるで花菜が同意しているかのようにトントン拍子で話を進めていく。

沈黙と花菜の反応は、完全に肯定として捉えられてしまったのだろう。


「お付き合いしてるの?」

「…………」

花菜は、遂に言葉を発する気力を失ってしまった。

自分はそんなに分かり易い人間だったのだろうかと、完全に自信を喪失(そうしつ)している。


「その様子だと、お付き合いしてるのね。すごーい、失恋したとか言ってたのに初恋実っちゃったのねぇ。花菜ちゃんの所在なんて分かってるわけでもなかったはずだから、完全な偶然よね? えぇ、やだぁロマンチック!」

これもまた、母親は花菜の回答を待たずして答えに辿り着く。

そして、母親の中で物語が盛り上がっている。


「はい……お付き合いさせていただいております……」

花菜は渋々といった感じで白状する……。

響とのお付き合いに関しては、観念するしかなかった。

流石に仮初(かりそめ)の恋人を経て正式に恋人になったなどとは言えないが。


「いつも親御さんがいらっしゃらない家に二人きりなんでしょ? どこまで進んでるの? もうしちゃってるの?」

「まず聞くのがそこぉ……?」

母親がいきなり娘の性事情に関して、かぶりつきで聞いてきた。


「思春期の娘を持つ母親としての当然の権利よ、花菜ちゃん!」

「そういうものなの……。なんか違う気がする……」

母親の持論を花菜は理解できないでいた。


「それでどうなの? 花菜ちゃんエッチなんだから、進んでるんでしょ?」

「娘に対する評価! 酷いよ⁉ お付き合い始めたばかりなんだから、その……まだ……。学生だし、健全なお付き合いを……」

「ええっ⁉ えっ……ええっ⁉」

「本気で驚いてるじゃん! お母さん、あなたの娘は(つつし)みぐらいあるんだよ⁉」

母親の本気の驚きように、花菜は憤りを覚える。

響もそうだが、花菜の親しい人達は花菜のことをどう思っているのだろうかと疑問を感じる。

そんなに花菜の頭の中はお花畑に見えるのだろうか。

いくら本棚の中身という前科があるにしろ、思い込みが激し過ぎないだろうかと。


「だって、花菜ちゃん……そんな……」

「なんでそんなにオロオロしてるの⁉ そんなにショックを受けるぐらい、娘とエッチなトークをするのを楽しみにしてたの⁉」

偶に母親の感性が分からなくなることがあるが、今日は殊更(ことさら)に分からない。

そして、花菜は緊張の糸を引き締めればいいのか緩めればいいのかも分からずにいた。

情緒が行方不明になる。


「大丈夫? 密室に花菜ちゃんと二人きりって……。芳川さんのこと我慢させてない?」

「逆も心配されてるの⁉ あっでも、それは……うーん……」

響はどちらかというと、こういうことには前のめりなので花菜が待たせている立場になるのかもしれない。

だが、花菜もここは(だま)されてはいけないのではないかと気を引き締め直す。


「ほら、花菜ちゃん。あんまり芳川さんを待たせちゃダメよ?」

「なんでさっきから母親が娘のそういうことの背を押すのに必死なの⁉ 普通逆じゃない⁉」

花菜的には娘の性事情など、歓迎するものではないと思っていた。

だが、今現在必死なまでに応援されている。


「最近の草食だので少子化が進んでるんだから、しないよりはしろの精神よ! それに、こういうのはお互い下手に隠すから正しい知識が手に入らないのよ」

「子供は結局できないんだよ! その点は本当にごめんなさい!」

「その点はちょっと残念よねぇ」

「正しく申し訳ないよぉ……」

ここに来て初めて母親の言い分が正しいとは思えたのだが、如何(いかん)せん申し訳なさが先立つ内容だった。


「大丈夫よ、芳川さんがもう一人の娘みたいなものでしょ? いつか、恋人って正式に紹介してちょうだいねぇ? ウフフ、あんな美人な娘がもう一人増えるなんて楽しみだわぁ」

「そんなお気楽なぁ……」

母親は先程の件など気にした風もなく、本当に響がもう一人の娘になることが楽しみといった感じであった。

相原家の響の株がここに来て更に上がっている。

打ち明けたことで、正式に恋人として紹介することになった。

もう響を家に連れてこない選択肢が、ほぼほぼ無くなった状態である。


「あら、気楽じゃないわよぉ? 私達だって、最初は悩んだりもしたのよ? でも、お父さんも私も花菜ちゃんの人生だもの。もしそうだったとしたら、応援しようって」

両親ともにきちんと話し合い、花菜が思っている以上に花菜のことを考えてくれているようだった。

それを考えると、一人で勝手に不幸になろうとしていた自分を恥ずかしく思う。

自分がやろうとしていたことは、両親からの愛情を違った意味で踏みにじろうとしていたことなのだから。


「私だって。今だから、こうやって話せるのよ」

それに対して、花菜は(ようや)く気が抜ける。

綯交(ないま)ぜになっていた感情が、落ち着いてくる。

母親の優しさに対して、素直に身を任せようという感情が芽生えてくる。

だが、同時にハタと気付く。

今だからということは、いつからなのだろうと。


「えっ……ということは、私が女性が好きっていうのは……かなり前に感じ取られていたの……?」

「そうね、かなり前に」

先程の話しを聞く限りでも、幼少の頃からの行動に基づいて花菜に対して心配をしていたようだった。

花菜はまだ高校2年生である。

まだ思春期真っ盛り。

女性に恋するようなことがあっても、おかしくはないのではないだろうか。

恋に恋してもいいのではないだろうか。


「私だって、その……。そういうお年頃なだけかもしれなかったよ? それは確定じゃないと思うんだけど、大体どれぐらいの確率で想定を……?」

「そうね、大体九割以上は……」

「そっ、そんなにぃ……⁉ 小中の私って、そんなに露骨(ろこつ)だったの⁉」

思いの外高い数字に、またもや花菜は自信を喪失する。

だが、これは両親の深い愛故だと思い直す。

花菜は自身が単純な人間ではないと心の中で反芻(はんすう)する。


「お父さんと検証を重ねた結果よ?」

「私どんな検証対象だったのぉ⁉」

どうやら両親によって、花菜に対する密かな検証実験が行われていたようだった。

そう言われてみると、花菜に対して好みのタイプなどをそこはかとなく聞かれた覚えがある。

小学校の頃の花菜は、それはもう嬉しそうに響だと答えていた。

芸能人などでも女性を答えていたはずであるが、そんな前のことを両親が気にするはずがないと信じていた。

よくある子供の憧れなのだと切って捨てると。

だが、どうやら花菜はその頃から少し目を見張るものがあったらしい。


「純真無垢な子供の戯言(ざれごと)じゃん……。流そうよ……」

「覚えてないかもしれないけど、流せないぐらい花菜ちゃんの行動が極端だったのよぉ……」

「えぇ……そんなにだったっけ……?」

花菜は自覚がないが、どうやら(はた)から見ていたら見逃せないレベルのようだった。

こうなっては、過去の自分を呪うことしかできない。

いや、両親に理解が得られたのだから褒めるべきなのだろうか。

とにかく、花菜にとっては誤算である。


「でもごめんなさい……。そんなに心配かけたのに、今まで黙ってて……」

「いいのよぉ。言い出しにくいことぐらい、分かるわよぉ。それに、これは花菜ちゃんのためって思っていろいろ探ったりするの楽しくもあったし……」

「うわーん……やっぱりウチの母親がストーカー気質だぁ……。お父さんには、ほどほどにしてあげてぇ……」

「お父さんには、いいのよ。夫婦だもの。いいのよ」

「いいのよって二回言った! だから、家族のプライバシー!」

これに関しては自分の秘密は本日赤裸々(せきらら)になったのだから、これからは手加減してくれると信じるしかなかった。

父親に関しては、本人にそういう行為をされている自覚がありそうである。

それも少し喜んでいそうだと花菜は勝手に想像する。


「そうなってくると、いろいろと将来の件に関しては本当に申し訳なく……」

「大丈夫よぉ。それは、私とお父さん二人に任せて」

「んん?」

なにやら話の雲行きがおかしいのを花菜はいち早く感じ取った。


「本当は花菜ちゃんが小さい頃にもう一人の予定だったんだけど、そのときは恵まれなくって……。最近私とお父さんの稼ぎも安定してきたし、もう一人いっちゃう? とか冗談で言ってたら割と本気になってきたから。頑張ってるの」

花菜はこのとき、もう一人とは、頑張っているとはなにをだろうと一瞬考えた。

だが、直ぐに答えに辿り着く。


「あ、そういう。こういうのって明るい家族計画に影響及ぼしちゃうんだぁ。へぇ……」

このとき花菜は純粋に感心してしまっていた。

両親もいろいろとお仕事を頑張っているのだなぁと。

そんなことを、ぼんやりと考えてしまっていた。


「って、えぇっへえっ⁉」

そして、先程までのそれが軽い現実逃避だと気付く。

花菜の口から自分でも聞いたことがない声が漏れる。


「花菜ちゃんの弟か妹のためにお父さんとお母さん、頑張るわよ! 二人とも仲よしだから!」

「子供の前で生々しいよ⁉」

子供のそういう話しを前向きに捉える母親である。

自身の話しに対しても、明け透けが無かった。


「大丈夫よぉ、花菜ちゃんに気付かれないようにするからぁ。実際気付いてないでしょ?」

「聞くんじゃなかった! 絶対にこれが原因で気付くことがあるよ……! あっ、でも言われてもみたら思い当たる節が……!」

「気付いてたんなら、言ってくれていいのよぉ?」

通常子供が気付いても見て見ぬ振りをするのが礼儀ではないだろうかと花菜は思うのだが、母親は歯に衣着せぬ勢いがあった。

花菜から見ても、本当に仲のよい両親である。

そういう日があってもおかしくないのは、見ていても分かる。

だが、実際口にされるのでは重みが違う。


曾孫(ひまご)の顔が見たいって言ってた相原のお爺さんとお婆さんもこれで黙らせるわよ!」

「そこは素直に叔父さん叔母さんに頼ろうよぉ……!」

「負けてはいられないでしょ!」

「勝負の世界ではないよぉ……」

相原家の父親は次男坊だが、兄弟がいる。

祖父母も母親とは別段仲はよかったはずなのに……と花菜は、燃える実母の心が分からなかった。


「でももし直ぐできちゃったら、花菜ちゃん受験で大事な時期にちょっと騒がしくしちゃうけど……ごめんなさいね……?」

「ああああっ! 十月十日!」

こうして花菜の親への報告は、むしろ母親からの更に衝撃的な内容でもって上書きされそうになりながら一旦幕を下ろすことになる。

これは母親なりの優しさだったのかもしれないと花菜は思うことになる。

実際この対応で、花菜の今まで積み重ねてきた罪悪感は薄まったのだから。


花菜は両親には今まではただ、笑って欲しかった。

これからも笑って欲しいけれど、そこにはいろんな他の笑顔もあって。

愛情が、広くなる、深くなる。

いろいろな内容をぶっこんだ気がしますが、まぁいいかなって思いました。

少し長いかなとも思いましたが、それもまた。

そういう成分でできています。


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