兆(キッカケ)
2000PV&5000ユニーク突破いたしました。
皆様のご来訪に、心から感謝申し上げます。
休日って素敵。
徹夜も夜更かしも遅寝も、何だってできちゃうんだこれが。
そんな堕落した週末を送っているので、幸運なことに2日連続更新ができました。
お母さんごめんなさい、(妄想の)神様ありがとう。
実をいうとほとんどプロット立てずに書いてるお話なので、全ては私の思い付きで進行します。
無計画ゆえの秩序のなさで急展開な9話目、始まります。
「おかしいわよね?」
「え? そうでしょうか?」
「だってあなた、勇者様のパーティに助けられてここに来たんでしょ? そうよね?」
「はい、間違いありません」
「だったら勇者様と、賢者様と、姫様ともお会いしてるってことでしょ?」
「その通りです」
ダンッ
「だったら何で私たちがすごいなんて言えるのよ!! 圧倒的にもっともっと格上をほんの半日前まで相手にしてて、その体でその口で、どうしてそんな賛辞が飛び出して来る訳それもあんな満面の笑顔で!!?」
「えっ、でもオレ本当に思ったことを感想として口にしただけなんですが」
「………!!! ああああああだああああがああああなああああぬああああまあやあばあだあるぅああああああああああ敬語禁止いぃいいっ!!!!」
「はっ、はいいっ!!」
美少女が壊れるのは初めて見たオレ。
「私も、エミーがここまでおかしな言動を取るのは初めて見ます。よほどあなたの言葉に動揺したのでしょう」
「そうなんでしょうか……うん? えっと、サリーさん?」
「はい」
あれ、オレ今口に出してた?
言ってないよね?
あれえ??
「カリン、カリン」
「ニナちゃん」
「大概、お顔に書かれちゃってるかなーって」
「………あえ?」
そんなバカなと唇をなぞっていると不意に肩口をつつかれ、ニナちゃんに小さく名前を呼ばれた。
視線を送れば体をこちらに倒して顔を寄せ、耳元でこっそり種明かししてくれる。
まさかマンガや小説のようなことが実際に起こり得ていたとは驚きだ。思わず頬を抑えてしまった。
オレとニナちゃんのやり取りが聞こえていたらしく、サリーさんは上品に口元を手で覆い、ルゥさんは両目を細めて、2人ともくすくすと笑いこぼしている。
ならば当然、並んでベッドに腰かけているニナも、オレの反応を間近で見て肩を揺らしている。顔がほのかに熱を帯びた。
ちょっと気まずいような照れくさい気持ちで目を泳がせると、あちこち飛び跳ねた赤い頭が視界の端に映りこんだ。
向かいのベッドに腰を下ろしたエミーさんが、締切に悩む作家の如く頭を抱えてかきむしっていたようだ。あれは、やりすぎじゃあ…。
「エミーさん、あまりそうしてはせっかくの綺麗な髪が傷んでしまいますよ?」
「っ! …だあーーーー!! はい、はい、分かりましたっ! やめればいいんでしょーやめればー…って言うかいい加減敬語を外して! さっきの返事は忘れたの!?」
「あ、うっかり」
「そんなことだろうと思いました! ああもう……どういう子よ、この子」
「迷子です、あ、だよ」
「ふふふっ。訂正いい子ですね、…本当にいい子です」
「そうだな、実にいい子だ」
「サリーさんとルゥさんも、そろそろ笑いやみ…えっと、やまない? 微妙に恥ずかしいから」
「ふっ、先程の意趣返しとでも思うがよい。本を正せばカリンが悪いのだ」
いい子いい子と繰り返されて、熱はさらに高くなる。
困り顔でお願い意をしてみるも、よく分からない責任を押し付けられてしまった。
そう言われても、オレに思い当たる点は浮かばないんだけど、どう言うこと?
頭をひねるオレの様子を、3人は微笑ましそうに見守っていた。
「…すぅ……はぁーー…。よし、落ち着いたわ」
「あら、エミー。もうよろしいんです?」
「っ、よろしいわよ。あなたたちは最初から平気だったみたいだけどね」
「我らの分までエミーが悶えてくれたゆえ、な。それに我らとて、宿の前では十分に驚かされたさ」
「あー…、ねー…、まったくー。うちこれって明らかに天然だと思う、うん、間違いない」
遠い目のニナちゃんが乾いた笑いを浮かべてぼやいた、1つの単語がオレの意識に引っかかった。
ああそれ、よく言われたね。マサとかシュウとかタイチとか、いろんな人に。
「天然だと都合が悪いのかな?」
「大丈夫よ」「微塵の問題もあろうか」「むしろ歓迎しちゃう」「あなたの心のままにあっていいのです」
「は、はい」
猛烈に肯定されました、解せぬ。嬉しいけど。
エミーさんたちの説明によれば、勇者パーティは長くても1週間で戻って来るだろうとのこと。遺跡では奥殿の調査だけではなく、モンスター討伐や損傷が激しい個所の修繕も行うらしい。よって1日2日ではまず終わらない。
彼女たちはシュイさんたちが戻るまでの間、オレの社会勉強とモンスターについての基礎知識と身を守る最低限の振る舞い(…)についてレクチャーしてくれるんだそうだ。
そして何とびっくりな話、ヴァルキリアスが勇者パーティと入れ違いな理由は、彼女たちが遺跡の事前調査を行っていたからなんだって。
黄昏砂漠のフィールド自体がVOでは推奨Lv100前後だから、そこのダンジョンとなれば最低150はないと難しいって聞いてたのに。
すごいな、さすが、BBランクは伊達じゃないんだね。
ここで簡単にだけVOの日付設定について確認しておこう。きっと今後もお世話になるだろうしね。
現実の、地球でいう1日の長さは同じ、日が昇って日が沈んで月が昇って月が沈んで1日、24時間、1440分、86400秒。
1週間は7日、1ヶ月はちょうど5週間、1年は12か月の420日だ。
曜日は月曜から順番に陰、焔、洪、樹、鐵、壌、陽となる。
月名は1月から順番に睦、如、弥、卯、皐、水、文、葉、長、神、霜、師となる。
これって、月火水木金土日を似たような意味の漢字に変えただけだし、月名に至っては旧暦の頭文字がそのまま使われているんだよね。
ちょっと考えればすぐ分かる設定だけど、製作チームには日本大好きな人でもいたのかな?
エミーさんたちとの話し合いは長く続き、いつしか日が暮れ始め、村の商店も店じまいを始める頃になっていて、エミーさんはオレの社会見学は明日に回すと言って装備を解き始めた。
リーダーの決定に従い他の3人も各々の外套を脱いで防具を外し、愛用の武器を傍らに立てかけて、戦闘の緊張にこった体を揉み解していた。
その後は休憩と食事を挟みつつ、宿の一室を貸し切って(エミーさんたちの部屋)エミーさんたちによるオレのための常識講座が開講された。
講師、エミーさん。特別講師、サリーさん。反面講師、ルゥさん。子供講師、ニナちゃん。受講者、オレ。
………あれ、ちょっと待って、講師の後ろ2人受講者にいるべきじゃないのこれ。
たくさんのツッコミどころを感じつつも、オレはつつがなくVOの常識講座を受けるのだった。
「それじゃあ一度、黄昏の夜行見学としゃれこんでみましょうか」
夕食と2度の休憩を挟んでしばらく、窓の向こうがすっかり暗闇に覆われているのを確認して、エミーさんはおもむろに立ち上がると吊り下げた装備に手を伸ばした。
立てかけた槍を背負い、グローブをきつく締め上げ、取り残された4人ににっこりと言い放つエミーさん。
それを聞いた講師3人はお互いの顔を見合わせ1つ頷き、それぞれも日中と同じように身支度を整えて行く。
「うむ、それがよかろう。魔物の真の恐ろしさはその特性にある」
「あ、知ってる、かも。多分闇属性のことだよね」
オレは1人準備できる物がなくて、手持無沙汰に服を整えつつ、VOを始めたばかりの時にタイチたちに教えてもらった狩りの注意を簡単に答えて行った。
確か、日中フィールドにいる通常モンスターは夜になると全ステータスが5割増しになること、夜の間だけポップする夜行性モンスターがいること、夜行性モンスターは通常モンスターよりLvが10は上だと思え、光属性の装備はモンスターを引き寄せるので控えろ、夜は視界が狭くなるので常にマップに気をつけろ、志村ー後ろ後ろー、は違う。
だめだ途中からマサとシュウの漫才ネタになってる、回答はこれ位でやめて。
とりあえずオレが挙げた注意事項に間違いはなかったらしく、エミーさんもルゥさんも頷いて応えてくれた。
「へー、そこは知ってたんだー」
「この辺りの知識でしたら、幼少時にご両親から言い聞かされて育つでしょうし、当然とも言えますね」
「その割に生活知識はからっきしだったけどね!」
「そうですね、からっきしでしたね」
「…面目次第もない限りで……」
「シムラが誰か知らないけど、夜の危険性を理解せず油断してたってことでしょうね」
「あー…多分、そう…?」
「魔物に背中を取られなんて、命を取られたも同然よ。バカね」
「あるいは慢心し、己が力に驕っていたのやもしれぬな」
「どっちにしろ大バカ」
「それは違う、かも?」
ごめん元ネタよく分からないんだ勢いで話しちゃってごめん。
それ以前に志村ってお笑いの人だからモンスター倒しになんて行かないんだごめん。
ホントいろいろごめんなさい。
「大体分かってるみたいで嬉しいけど、だからって気を抜ける訳がないのも分かってる?」
「はい、もちろんです」
「よろしい。それじゃあ万一を万一にも起こさないために、全員気を張って行くわよ」
「もちのー!」
「ろんですね」
「任せよ!」
講義を開いていた時の明るくて愉快な雰囲気から一転、4人とも生き生きと瞳を闘志で輝かせて表情にも気合が入っている。
温かな団欒から突然放り出された気持ちになって、オレは中途半端な笑顔しか作れなかった。
「ええと…、よろしく、お願いします」
オレと同じ位や小さかったりもする女の子なはずなのに、4人の姿は凛々しくて、頼りがいに満ちていたんだ。
だから。
今この状況はオレの責任、オレが招いたオレの不始末。
「手を離せカリン!!」
「下がってください! いけませんっ、エミー援護をっ、…っ!?」
「やめろ止めろヤメロお前下がれよ向こう行けよちくしょおっ……ルゥッ、カリンッ! 戻って来てよ!!」
「くそう! 回復もしてやれぬ…っ、エミー必ずだカリンを守れ!」
「喚びっ、たいっ、のにっ! 邪魔だって言ってるじゃんかさっさと消えろよお!」
「ニナ! 頭を下げてくださいっ…氷柱の大瀑布、《アイス・レイン》!!」
「エミーお願い! お願いだからカリンを助けてあげてよぉお!!」
「もう一度数を減らします! 《アイス・レイン》、《アイス・レイン》、《アイス・…っレイン》!!」
「サリー! MPが尽きるっ、ここで倒れては2人を守れぬのだぞ!?」
「………何であんたが隣にいんのよ……………!!!」
「あはっ、ごめ、なさい。でも、助け、たくて」
女を守れない男は、最低らしいんだ。だから許して?
ねえ、オレちゃんと、助けられたんだよ。ほめてよね?
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