紹(トリモツ)
いい感じに筆が進む(PCですが)ので、この勢いに任せて更新できるときにしてしまおうかと思います。
投稿の波があってすみません。
マイペースな私を、どうか温かい目で見守ってやってくださいませ。
単純な設定画はありますが、本気で彼女たちをイラストに起こしてはいません。
挿絵入れるべきかと悩みつつ、ヒロインズ発進の8話目、始まります。
「まず名前だけ先に紹介しておくわね。私がリーダーのエミー」
「サリーシャと申します。どうぞお気軽に、サリーとお呼びくださいね」
「ルゥ、と言う」
「うちは親しみを込めてニナって呼んでね!」
「Aランククラブ《聖域の白亜城》に所属する、BB(ダブルB)ランクパーティ《戦女神》よ。女将さんの依頼で、私たち4人があなたがここにいる間のおも……こほん、保護を務めます」
「詳細については宿で話すゆえ、今はひとまず同行を願いたい」
「…よろしく、お願いします」
はっきり言ってオレは圧倒されていた。
なんてことだろう。
4人が4人とも、頭に「美」がつくんですけど。
最初に名乗ったのが、オレを果実屋の女性(マイアさんと言うらしい)から助けてくれた「美」少女エミーさん。輝くような赤い髪からエルフの特徴的な長くとがった耳が覗いている。
髪色の赤は、もぎたてつやつやな完熟リンゴを想像してもらえれば分かりやすいと思う、眩しいくらいの赤色だ。前髪と後ろ髪は短めに、顔の両側、耳の前へ垂らすように1房ずつ伸ばしている。
瞳は深みがかった緑で、ファンタジー風に例えるなら…、深い森の奥にある木々の緑を映す湖の色、なんて、ね。
少しつり気味の目が、きりりとした眉と合わせてクラス委員とか似合いそうだ。
2番目は丁寧な口調の「美」少女サリーシャさんことサリーさん。耳は髪に隠れていて分からないけれど、雰囲気や顔の綺麗さからエミーさんと同じエルフのような気がする。
初夏に見合う爽やかな群青の長い髪を、前から左分けに後頭部のやや左上でゆるくまとめあげ、品よく背中へと流している。耳隠しって言ったかな、日本の古風な髪型によく似ていて、けれど青色が西洋を思わせる。
造作も穏やかで気品があるのに、雨雲を思わせる灰色の瞳と腰に下げた銃剣のためか不思議な雰囲気もあった。
学園のマドンナとか高嶺の花とか言われていそう。
3番目のマイアさんと違った意味でモデルのような人、ルゥさん。すらりと高い身長、さらりと長い金のストレート、浅黒い肌と長い耳、見事なダークエルフの「美」女だ。
額にかかる前髪を後ろに撫で上げ、顔の両側と後ろに、腰まで届くほど豊かでまっすぐな沙金色の髪を泳がせ、細身なスタイルに映えるぴったりな髪型だ。それとルゥさんの性格にもぴったりだ。
瞳は橙色に近い明るめの茶色かな。落ち着きがあるけど若々しくて、特徴的なしゃべり方にもしっくり来る。
クラスにいたらご意見番とかあだ名がつきそうな人だ。
最後に、あどけなさが残る「美」少女ニナちゃん。もしかしたらオレより年下かも知れない。
淡い菫色のおかっぱ頭からは、撫子の花のようなふわふわの猫耳がぴょこんと2つ立っていて、自己紹介の間中ぴくぴくと動いていた。耳の辺りからは1房ずつ器用に編みこまれたみつあみが下がり、くるくる変わる表情と合わせてすごく「女の子」って感じがして可愛い。
ルゥさんの髪よりずっと濃い色合い、黄金色の瞳をしていて、光の当たり加減でどこか神秘的な印象を感じさせた。
1学年に1人こんなマスコット的存在がいたら、学校がより楽しくなること間違いなしだね。
しかしまあ、本当にそろいもそろって「美」人ばかりが集まっていて、感心させられるよ。
これだと、ヴァルキリアスのパーティ条件に「美女、あるいは美少女であること」の一文があってもおかしくないんじゃないかな?
そう言えば、勇者パーティも美青年と美少女がそろっていたから、VO自体が美醜の平均値が高い世界なのかも知れない。
それが本当なら、オレは非常に肩身が狭い存在になるだろう。
なんてったってご自慢?のモブ顔ですから、どやぁ。……使い方合ってるのかなこれ?
心の内では現実逃避に等しい内容を呟きつつ、4人の少女たちの名前と顔を憶えながらオレは一応の名乗りを上げた。
「すでに女将さんから伺っているかと思いますが、オレはカリンと言います。有体に言って世間に迷子です。短い間だと思いますが、お世話になります」
「うむ、話に聞いた通り、礼節をわきまえた女性のようだな。だか、今回の依頼は宿の女将による善意であり、カリン殿がそれほどかしこまる必要もなかろう。もうわずかばかり砕けて見てはどうか?」
「、えー……はい…」
「ルゥたんが砕ければいいと思うのー!」
「…ニナ、」
「ごめんなさい調子こきましたもういいません以後気を付けますタブンネッ!」
「………おい」
「ごめんなさい、こっちは気にしなくていいから。とにかく宿に戻って、落ち着いた状態で話しましょう」
「あ、はい」
つらつらと流れるルゥさん独特な口調に思わず目をしばたいてしまった。硬いです、姐さん。
そこへニナちゃんが「はいはーい!」と諸手を挙げて飛びこんで来ると、腕組みしたルゥさんをきょるんとからかったり、青筋立てたルゥさんをきゃぴっと笑ったり。え、あざとい。ニナちゃんあざとい。
きっといつものことなのだろう。サリーさんがオレの背中に手を添えて、エミーさんが前を行って帰宿を促した。エミーさんの薄らとはいた笑みが空恐ろしい。
にらめっこしている2人は早く気づいて追って来るべきだと思いました、とても。
MMORPGでありがちなギルドやパーティ機能とプレイヤーランクは、VOにも当然実装されていた。
ゲーム内の各国の街や村など主要なセーフティエリアの殆どには、必ずと言っていいほどの割合でギルド会館がある。たとえギルド会館のない小さな村でも、各ギルドの個別の出張所が存在している。
ギルド会館では各ギルドごとの受付や商店の他に、クラブハウスやパーティルームなどの、プレイヤーが個人あるいは団体で所有できるプライベートエリア(PA)があった。もちろんゲーム内での、だけど。
PAは所有者(団体を含む)の任意で入室や行動を設定できて、その大きさや設定可能範囲は所有者のランクが高いほど自由性も高くなる。またPA限定の特殊機能もあって、これも所有者のランクに比例している。
始めにVOにおける団体の性質について。
大きく分けると3種類あって、規模の小さい順にパーティ、クラブ、ギルドとなっている。
パーティは1人以上のプレイヤーあるいは非操作キャラクター(NPC)で構成される、小規模な集合だ。構成人数は最大で6人。
クラブは2組以上のパーティで構成される、中~大規模な集合だ。構成組数はクラブランクに準規して、最大で1000組、6000人にもなる。
そして、ギルドは特殊な扱いで、連盟国家によって管理、補助、時には運営が行われる公的かつ特大規模の集合だ。構成についても数の制限はない、なにせ国を超えた集合だからね。
プレイヤーは各ギルドに沿った権利を目的にギルドへと加入する。例えば商人ギルドならプレイヤー商店の開店権、職人ギルドならオリジナル装備の製造権、などなど。
ギルドの加入には個人、パーティ、クラブを問わないけれど、公的組織になるので規制が厳しい。違反行為が通報されると、アイテムの取り挙げやキャラクター制限、重い時にはアカウント削除もあったらしい。
続いてプレイヤーランクについて。
VOでは、プレイヤーが操作するキャラクター個人に対してランクづけと言うものは存在せず、所属するパーティ、クラブ、ギルドへの評価がおよそのプレイヤーランクになる。
あえて個人に対する評価が欲しいと言うのなら、特別な称号がそれに該当するだろう。
定期イベントや期間限定イベントの入賞者に送られる称号は、そのプレイヤーの能力のほどを示しているので、数も少なく、まして評価の高い、高位プレイヤーランクの証と言っても過言ではない、とシュウは言っていた。つまりプレイヤー間の暗黙の了解と。
ゲーム内のステータスやウィンドウに表示される「明確」で「正式」なランクは、次の通りだ。
パーティランクはFからスタートしてE、D…と高くなりAの上にさらにSが来る。
クラブランクはDからスタートしてC、B…と高くなりAの上にさらにSが来る。
ギルドランクはクラブランクと同じ表記だけれど、ギルド本体ではなくて所属者への評価になっている。
プレイヤーランクの説明はまだ続く。
パーティランクにはさらに詳細なランク分けがあって、同じ文字のランクでも文字が重なるほどランクが高くなっていく。
シングルよりダブル、ダブルよりトリプル。最大で3つまで文字は重なる。
そしてSSSのランクには伝説を意味する「トリニティ」と言う別称がついている。
伝説なので、設定に出て来る過去の勇者パーティだけが唯一の授受パーティだ。シュイさんのご先祖だね。
パーティランクが細かいのは、クエスト受注やプレイヤーのモチベーション向上に関わるために、比較的初期のアップデートで更改されたからだそうだ。
クラブとギルドのランクの意味は、さっきと内容が被るけれど、クラブランクは構成組数とPA機能解放に関係して、ギルドランクは権利獲得と機能解放に関係している。
予定よりずいぶん長くなったランク説明の総括に、ぶっちゃけて言ってしまおう。
「ランク高いといろいろできるよ!」
これに、尽きる。
宿に帰る道すがら、オレは村を観察するふりをしてその実彼女たちの考察で頭をいっぱいにしていた。
シナリオクエストにも、サブクエストにも、イベントクエストにも、紹介に預かった名前や姿を見聞きしたことはない。
オレが知らないだけで昔のイベントで登場した可能性は残っているけれど、多分、彼女たちはオリジナルの存在だ。何となくだけどそう思う……思いたい。
まずはクラブから。クラブ名がプラチナム・ニケイアでランクがA。
非常に高いランクだけれど、クラブはあくまでも所属パーティ総合の評価であって、彼女たち自身の評価には直結しずらい所がある。
高ランクのクラブに新人パーティが加入する例だってあるし、これだけで強いとは言えないかな。
それならパーティはどうかと言うと、パーティ名がヴァルキリアス、ランクはBB。
このBBランクがポイントだね。
ゲームとしてのVOでは、BBランクは高レベルプレイヤーが多くを占めていて、これは有能と言って間違いないランクづけになる。
ゲームではないVOで、ゲームの中の設定がどれだけ反映されているかはまだまだ分からないけれど、全く影響していないこともないと思うから、つまり。
「依頼を受けた時に部屋は取ってあるから。カリンの荷物が前の、」
「あの」
「何? 細かい話し合いは部屋で聞くから、」
「すみません、ただの感想なんです」
「どうされました、カリンさん。私たち、感想をいただくようなことをしましたかしら?」
気がつけばいつの間にか見覚えのある建物の前。追いついたらしいルゥさんとニナちゃんもそろってオレの後ろに立っていた。
言いながら宿の扉に手をかけるエミーさんの左袖をわずかに引いて、オレは前に立つ2人を振り向かせ、後ろの二人にも目を向けて4人が視界に入るように1歩下がった。
みんな不思議そうな顔で注目してくれたので、オレは心のままに考察の結論を発表した。
「みなさん、とてもすごい方々なんですね…! オレ、皆さんにお会いできたこともうれしいですけれど、それ以上に保護していただけることが光栄です! どうか、よろしくお願いいたしますっ!!」
タイチたちでさえパーティランクはCだったのに! すごい、本当にすごい!!
ってのは内心にとどめ置いて、オレは関心と感激の気持ちのままに4人のヴァルキリー(戦乙女)を見渡して全開で笑いかけた。
「「「「………………」」」」
「………」
4人硬直、オレにこにこ。
「「「「………………」」」」
「………」
4人硬直、オレまだにこにこ。
「「「「………………」」」」
「………?」
4人硬直、オレ不思議そうだけどまだにこにこ。
「「「「………………」」」」
「………??」
4人硬直、オレにこにこなくなって不思議そう。
「「「「………………」」」」
「???」
4人硬直、オレただ不思議そう。
「「「「………………」」」」
「………」
おーい、おーーい。
おーーーーーっい!!!
「「「「………………」」」」
「あの…」
「あんたたち、入り口のまん前で何やってんだ? 営業妨害だよ入るならさっさと入んな! 迷惑料金追加されたいのかい!?」
「あ。すみませんでした」
「ごめん、今入るから追加はやめて」
「大変失礼いたしました、すぐに道を空けますね」
「も、申し訳ない、女将殿」
「ごめんなさーい、怒んないでー!」
追加料金の威力に驚いたオレは、硬直が解けていそいそと中に進む4人の後ろ姿に首をかしげつつその背中を追いかける。
何か…何て言うか………こういう反応に覚えがあるんですけど…。
思いを巡らせつつ振り返れば、仁王立ちした女将さんもオレに同じく首を傾げていて、ちょっと面白かった。
いそいそと、何故だか沈黙で階段を上る彼女たち。
後に続きながら、オレは自分でも意識しないままに口元を緩めていた。
ただひたむきに、オレはお前らが好きなんだ。
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