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9.稽古場への第一歩

 彼女を見た先生は嬉しさを抑えきれなかったのか、先生はミャールの元に早歩きで駆けつけ、周りの声を掻き消さんと大きな声で名を呼んだ。


「おおお──。ミャール元気だったか」


 その声にギルドの中の剣士一同がトレーマンたちに目を向ける。


 トレーマンはミャールの前に立つ。それを見られて恥ずかしそうにミャールは言う。


「やだよ。お父さん恥ずかしい」


「ガハハハ。すまんすまん、つい抑えきれず、でも元気そうで良かった」


 親子は笑顔で会話をしていた。ギルド内はまだ混乱していた。


 ミャールが父に微笑んでいたが、俺の方に視線を向けた。


「あれ、もしかしてショウヤ。ショウヤも来てたんだ。村から出て二年くらいだったけど、大きくなったね」


「へへっ、ありがとう」


 俺は微笑んだ。それに割って入るように、トレーマンが話に入り込む。


「さて、久々の親子水入らずだ。ここからは、親子の時間が欲しいんだが?」


 トレーマンの反応に俺は理解したと対応した。


「ええっ、分かりました。あと、例の獣の皮と角はここに渡せばいいでしょうか」


 獣の皮や角などは交換すれば、お金を貰うことが可能で、これからの王都のことを考えて、トレーマンは全部俺に譲ってくれた。


「ああ、そうしたらいい。じゃあ、王都で精一杯鍛えてこい。ガハハハ──」


 娘に会えて、凄い嬉しそうだ。最後らへん、適当にあしらわれた感じだけど──、相変わらずの親バカですね。


 さて、俺は受付に行きますか。


 一方俺は知らなかった。


 ミャールが『正剣』の娘だとギルド内の剣士はみんな周知しており、正剣が現れ付き添った俺自身が何者だと騒がれていたことに──。


────


 俺は受付の順番を少し待っており、自分の順番がきた。


「ようこそ。剣士ギルドへ」


(ずいぶん通る元気な声だな。)


「初めての方でしょうか。剣士として登録されますか?」


 受付嬢は二十代前半ほど。淡い水色の髪をハーフアップにまとめた女性で、澄んだ水色の瞳と人懐っこい笑顔がよく似合っていた。


「はい。初めてですね。それと⋯この皮と角を売却に⋯と」


 少し多めの素材をカウンターに置くと受付嬢は驚いたようで、


「こんなにたくさんの⋯、お一人で狩られたのですか?」


「いえいえ、二匹は僕で他は同伴者が、ここで鍛えるならこれを手持ちにしろってくれたんです」


 俺の言葉に受付嬢は、


「まあ、優しい方なんですね。とはいえ、オオツノイヌを倒せるあなたも凄いです」


 お世辞でもなく、純粋な意見で俺を褒めてくれた。それに俺は感謝を込める。


「ありがとうございます。え〜と、あの名前は⋯?」


 受付嬢はハッとした顔になった。


「これは、失礼いたしました。私、ここの受付嬢をしております。マリネアでございます。以後、よろしくお願いします」


「これはご丁寧に僕は、ショウヤと申します。こちらこそ、よろしくお願いします」


 互いに挨拶して、笑い話を続ける。


「さて、こちらの売却ですが剣士登録を行う流れでさせていただこうかと思いますが、よろしいでしょうか?」


「はい。構いません」


「では、」


 マリネアさんは事務の方に行き、カウンターに書類を出した。


「こちらに、名前や年齢、使う剣を分かればこちらに書いて下さい」


「分かりました。──出来ました」


「はい、たしかにでは登録しますのでしばらくお待ちくださいませ」


 それから、少し待つと──。


「ショウヤさん。お待たせしました」


 名前を呼ばれ受付にいく。


「こちら、ショウヤさんの登録書と──、こちらオオツノイヌの報奨金貨十枚となります」


「金貨十枚!?」


「はい」


 驚いている俺に、マリネアさんは笑顔で答える。


 この世界では貨幣は七種類ある。


 その中で上から二番目に高い金貨が十枚も貰えるなんて──。


 彼女は俺の反応に勘違いをして、


「すみません、足りなかったでしょうか?」


「いやいや、逆だよ。多すぎてびっくりしたもので⋯」


「そんなことありません」


 彼女が俺の言葉を強く否定した。


「オオツノイヌはそれ相応にいい素材ですし、しかもそれが全て首元一撃だけで済んでる綺麗な状態で渡されているのです。これほどの価値を出しても良いのです」


「ああ、そうなんだね。分かった、ありがとう。素直に受け取るよ」


 いやまじか、これほどの収入を得られるとは予想外だ。レーリルはそれを知ってて斬ったのか。それなら尚更、凄い。


「ところで、ショウヤさん。これから、どうするか考えておられましたか?」


 そんな不意の質問に俺は戸惑った。


「いや、たしかに強くなるために来たけどどうしようか。詳しく考えてなかったな」


「それでしたら、こちらの『稽古場』に行かれてはどうでしょう」


「稽古場?」


「はい。ここは国が運営しておりまして、剣聖を与えられた方から、直々に剣を教えていただける貴重な場所なのです」


「剣聖から?」


「そうです。ただ、期間は各剣聖一人に対して、三カ月までとなっているのが注意点です。途中で変えていただいたり、辞めていただいても大丈夫ですよ。また、次に別の剣聖に受けて貰っても構わないです」


「つまり、期間が被らなければ複数受けてもいいと」


「そういうことになります」


 これはとても貴重な情報が聞けた。


 まさか、剣聖直々に剣を教わる機会を得られるとは、これを逃すのは損と判断した。


「マリネアさん、こちらの書類は稽古場に申請したらよろしいでしょうか?」


「はい。ちなみに地図はこちらになります。じっくり考えて選んでください」


 俺は地図を受け取り、一礼する。


「ありがとうございます。たぶん、これからも担当をお願いするかもしれないので今後ともよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いいたします。困ったことがありましたら、いつでも受付までお越しください」


 互いに笑って会話は終えた。


 だが、その時の俺はまだ知らない。この稽古場こそが、俺の常識を根底から覆す場所になることを──。

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