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10.剛剣との出会い

コチさんを東風さん表記にさせていただきました

──それからの俺は、貰った報奨で宿に泊まり、夜を過ごした。

 そして、窓から差し込む朝日を受ける前に目が覚めた。どうも、自分の家以外で寝ると落ち着かず早起きしてしまう。

 せっかくなので、王都を確認しながらランニングをし、準備運動として素振りをした。

 朝日が王都全体を照らしたであろう頃に、稽古場へ向かう。地図を頼りに目的地まで到着した。


 それは前世の学校より一回り大きく立派な建物だった。門は閉まっていたようだが、建物の扉が開いた。そこから出てきたのは、三十手前ほどの女性であった。その人と目が合い挨拶をする。


「おはようございます」

「あら、おはようございます。こんな朝早くから、どうしたのかしら」


 俺は懐にある書類を出し広げて話す。


「すみません。実は稽古場を受けに来たのですが、やはりまだ開いてない感じでしょうか」


 女性は少し驚きながらも嬉しそうに話す。


「あら、受けに来たのね。分かったわ。少し早いけど、門を開けるね」


 そういって女性は門を開けて入れてくれた。


「こんな若い子が来てくれて私は嬉しいわ。私はここの寮母をしている東風(コチ)と言います。よろしく」


 東風さんが一礼して挨拶したので、こちらもそうした。


「こちらこそ、よろしくお願いします。僕はショウヤと申します。では、改めてこちらが書類になります」

 そう言い東風さんに手渡して受け取る。

「礼儀正しいことで、はい確かに受け取りました。──あれ、あなた六人全員受けるの?」


 褒めてくれたコチさんが、書類を見てふと疑問になった。


「あれ、駄目でしたか?」


 東風さんは首を横に振る。


「そんなことは無いわ。でも、途中で変えてもらうことは出来るからそこも判断して頑張ってね」

「はい、分かりました」


 俺は大きな声で元気よく挨拶をした。


「せっかくだし、私が寮を案内するわ」

「ありがとうございます、ぜひお願いします」


 再び元気よく挨拶をして案内してもらった。

 稽古場の寮の案内をしてもらってる間、稽古の内容を軽く聞いてみた。


「失礼ながら、稽古の内容を教えていただくのは可能でしょうか」


 東風さんは笑顔で答えた。


「ええ大丈夫ですよ。といっても、それぞれの剣聖の稽古内容は皆さんバラバラでして、詳しくは分からないです」

「そうでしたか」


 まあ、寮母の役目もありますから知らなくても仕方のないことだ。


「でも、やっぱり自身の強みを生かす稽古をするみたいな感じですね」

「なるほど」


 自身の力の原点を伸ばす方針をしているということなんだろう。


「あとは週に一度、どの稽古でもクエストをこなす実地訓練があります。王都への社会貢献も兼ねているんですよ」

「確かに。書類にも一部免除と書かれていましたし、その代わりに社会へ貢献するわけですね。実戦経験にもなりますし」

「ふふっ。確かにそうですね」


 そう、受付を終えあとで見てみると一部免除されているのだ。国が将来の剣士を育てるために設けた制度なのだろう。

──それからは、他愛の会話も続けて教習所の寮の案内を終え、東風さんに稽古場に案内していただいた。その稽古場の扉の上に『剛』と刻まれた木札があった。


「まずは『剛剣』の稽古ですね。 頑張ってください」


「はい」


 拳を強く握り、返事をして東風さんは笑顔で見送ってくれた。

 稽古場の扉の前にコチさんが立ち、扉を開けてくださった。


「では、ご健闘を」


 そう一言を残し、俺は扉を開け一歩前に踏み出していく。そこには九十センチは優に超える大太刀を腰に携えながら、筋骨隆々で燃え上がる炎のような赤髪で190超えの大男がいた。男が俺の方に体を向ける。


「何だ。新しい門下生か?」


 その圧倒的な圧を感じる声に怯まず、返事をする。


「はい。ショウヤと申します」


 剛剣は返事した俺をじっくり吟味するように観察する。


「……細いな」

(あなたと比べたら、誰だって細いでしょう……)

「だが、その目は悪くねぇ」


 そう言って、剛剣の口がにやける。


「毎日振ってるようだな」


 見ただけで分かるものなのか、と少し驚いた。疑問に思ったが、俺は肯定した。


「はい、毎日欠かさず振っています」

「そうか、なら何本振ってる?」

「素振りでしたら、毎日千本振っています」

「誰かと一緒にか?」

「素振りはたまに村の人と、稽古は主に父と一緒にやっていました」


 そこから、僅かに沈黙が訪れる。


「嘘は言ってねぇ目だ。──よしっ」


 剛剣が何か、決めたかのように木剣を取りに動く。

 そして木剣の一つを手に取り──

ブンッ──。

 俺めがけて、ぶん投げた。俺はギリギリを避けて、木剣は鈍い音を立てて壁に深々と突き刺さった。


「反応は重畳──持て」


 剛剣がそう言って、俺は剛剣に目を細めつつその木剣を取る。

 普段使っている木剣とは比べものにならない重さだ。こんなものを片手で軽々と投げたというのか。

 俺は驚いていたが、そんな暇はないと言わんばかりに剛剣が語る。


「構えろ」


 俺は剛剣の方へ振り向く。剛剣は大太刀の形の木剣を握り、正眼で構える。


「お前の剣を見たい。まずは一太刀打ち込んでみろ」


 俺はその言葉で覚悟を決める。俺は正眼に構え、剛剣から一瞬たりとも目を逸らさなかった。


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