5.剣聖の娘
空は晴天。今日は村の子どもたちと剣の打ち合いをする日だ。
村から少し離れた草原。 そこは野生動物が現れることも少なく、子どもたちが思い切り木剣を振れる絶好の場所だった。
俺は父さんと並んで、その草原へ向かう。
集合場所には、すでに十組ほどの親子が集まっていた。 どうやら俺たちが最後だったらしい。
俺たちに気付いた一人の少年が、大きく手を振る。
「ショウヤ、おはよう!」
こちらも元気よく挨拶した。
「おはよう」
周囲を見渡すと、やはり俺たちが最後だったようだ。
「僕たちが最後みたいですね。遅れてごめんなさい」
その言葉に
「気にする必要はない。大して遅れてないから」
そう声をかけてくれたのは、この村で一番強く、暗い茶髪を短く刈り込んだ大柄な男。鍛え抜かれた体は歴戦の剣士そのもので、その穏やかな眼差しには多くの修羅場を越えてきた余裕がある風貌を持つトレーマンさん。
昔は名高い剣聖──『正剣』の名で知られた剣士。今では、この村で剣の先生をしている。
「じゃあ早速、今日は順番に打ち合いを始めるぞ!」
「「「はーい」」
俺を含めた子どもたちが大きく返事をした。
「じゃあ、早速誰からやろうか。」
先生が悩んでいると勢いよく手を上げ、発言する。
「お父……いえ、先生。私が一番手でもよろしいでしょうか」
「おお、ミャール。一番手で行くのかい、構わないよ」
少し落ち着いた栗色の髪を高く束ねた少女が、一歩前へ踏み出した。彼女は先生の娘、ミャール。
俺より二つ上の7歳の剣士。
子どもたちの中では、一番優秀で父が『正剣』と呼ばれる剣聖であることを誇りにしている。
剣聖。
それは剣の道を極め、その流派や戦い方を象徴する称号。
国や大会で認められた者だけが名乗ることを許される、剣士最高の栄誉だ。
しかし、それをひけらかすことなく、皆と分け隔てなく接してくれ村の子たちにとって『姉』のような人。それがミャールだ。
「さて、じゃあ相手は⋯。」
「先生、相手はショウヤで構いませんか?」
「そうか。ショウヤ、お前はどうだ?」
俺に話が振られる。でも、願ったりだ。
「はい、お願いします」
────
草原に風が吹く。そこには、二人の剣士が向かい合って立つ。
俺が先に言葉を開き、一礼する。
「では、よろしくお願いします」
それに返すようにミャールも挨拶する。
「お願いします」
互いに顔を上げ、トレーマンさんがしきった。
「では、双方構え」
そして、二人は木剣を構える。彼女は正眼の構え、対して俺は霞の構えを取った。
「見たことないね。」
「また変わった構えだね。」
「ふふっ、ショウヤらしい。」
子どもたちの笑い声が草原に広がる。 これもまた、この村では見慣れた日常の一つだった。
先生が深く息を吸い、力強く
「──はじめ」




