41.獣剣、仲間になる
俺たちは獣たちと行方不明者を解放していく。獣たちは自然に無事に返していき、最後に残ったのはニードルボアだった。俺はその一体に近づいた。
「先はすまなかった。自然の中で安心して生きろ」
「フゴォォ」
そして、ニードルボアも返していった。俺がみんなと合流すると、騎士の一人が聞いてきた。
「なんで、あのニードルボアに謝ったのでしょうか?」
「あいつは俺が横腹刺しちゃったからね。落ち着かせたら、大丈夫みたいなのに⋯傷つけちゃったからね」
「⋯⋯ショウヤさんって、変わってますね」
「よく言われますね」
「⋯⋯ぷっ、」
「「「「「「「ハハハハハハハハハ────」」」」」」」
そんな返しをすると、周りのみんなが笑い出した。そんなに変わっているのだろうか。
そう思いつつ、シャニーナさんが手をパンッパンッと叩いて号令を出した。
「さあ、あとは王都に帰還します。行きましょう」
「「「「「「はっ」」」」」」
俺たちは北の森を抜けて帰還した。
──────
王都に帰ってくると、町は大騒ぎだった。なんせ、密猟集団四十人という数に加えて誘拐された人がいたのだから当然だろう。誘拐された人は名前などを確認して家族の元にすぐに返したそうだ。そして、シャニーナが俺たちの方に駆け寄ってきた。
「獣導の協奏の皆さんと剛剣殿、獣剣殿。本日はありがとうございます。皆さんのおかげで密猟集団を捕縛することが出来ました」
「いえ、シャニーナさんもこれからが大変かもだけど、頑張って」
「ありがとうございます」
俺がシャニーナさんに労いの言葉をかける。すると、剛焔がシャニーナに声をかけてきた。
「シャニーナといったか?」
「はい。騎士団副団長のシャニーナです」
「先の一騎討ち──見事だった」
「──っ、剛剣殿にお褒めいただき恐縮です」
師匠がシャニーナさんを褒めていると、驚く事を言い出した。
「どうだ、俺の弟子にならないか?」
「剛剣殿の弟子にですか⋯⋯?」
「そうだ」
「お前のその膂力、凄まじい物だった。他の剣技ももっと伸びる。俺の稽古を受けてみないか?」
六剣聖の一人に勧誘されるとは、シャニーナさんの実力はやはり本物なんだろう。
「嬉しいかぎりです。ぜひ、弟子入りさせていただきたいです」
「分かった。なら、一ヶ月と少し経ったら稽古場に来い。みっちり鍛えてやる。」
「⋯⋯はいっ」
まだ予定の確認が必要なんだろう。そうなると、シャニーナと一緒に稽古することになるのかな。それは楽しみだ。
「では、私はこれにて失礼します。では、皆さんのこれからに期待しています。では」
「ああ、ではまた」
シャニーナは密猟集団を連行して王城に向かった。見送りがすみ、師匠も帰るようだった。
「うんじゃあ、俺も戻るわ。ショウヤ、また稽古場で──」
「ええ、その時はまたお世話になります。」
「じゃあな。」
師匠も帰り、残っていたのは俺とキャリメラ、ルナたち。そして────
「さて改めまして、俺はショウヤ。キャリメラとパーティーを組んでもらっています。あなたはキャリメラのお兄さんで?」
「おう、あの時は紹介が遅れたな。俺はビスターだ。あんたの言うとおり、キャリメラの兄だ。こいつは『サーベルレオのレオポル』だ」
「ガゥッ」
ビスターは百七十八くらいで野性味溢れる筋肉質な体格でキャリメラと同じエメラルドのような緑の瞳をしていた。
一方のレオポルはサーベルタイガーのような巨大な獣でその牙は強さの証とばかりに猛々しかった。
彼らの姿を見ていると、キャリメラが興奮気味で自慢気に紹介を付け加えた。
「それに『獣剣』と呼ばれて、レオポルと一緒に戦う剣士なんだ」
「よせやい。照れるじゃねぇか、キャリメラ」
ビスターは鼻をこすりながらも満更でもないようだった。剣聖の称号を与えられるほどの実力者なのだから、生半可な剣士ではないと、改めて再認識した。鼻をこするのを止めたビスターは真剣な顔つきで俺を見る。
「ところで、お前ら⋯パーティーを組んでるって本当か?」
「⋯そうだけど⋯、なんで知っているの?さっきまで、王都に出ていたのに?」
ビスターの問にキャリメラが疑問で返す。それに対して、ビスターは変わらず真剣な顔つきで答える。
「マリネアに聞いた。旅から帰ってきてみれば、キャリメラはいなかった。ギルドに行ってマリネアに聞いてみれば、パーティーを組んで指名依頼を受けたみたいだったから、追いかけたんだ。行き先は知らなかったが、剛剣は応援に動くようだったから、案内してもらう変わりに一緒に来たんだ」
なるほど。応援されていなかったビスターが呼ばれたのはそういうことだったのか。にしても、マリネアさんが話したのか⋯。変な事を言っていないか心配になったが────
「それで同居しているようだな」
やっぱり言っていた。ここは、誠意を見せようと話そうとするが、ビスターは止まらない。
「ルナたちがいるとはいえ、異性が同じ屋根の下で過ごすのはいただけない。今日からしばらく俺もいるからな」
どうやら、ビスターはしばらくなのか⋯実家に戻るようだ。それに対して俺たちは────
「そうでしたか、承知しました。」
「やったー。お兄ちゃんと一緒⋯」
俺たちの意外な答えに戸惑っているようだった。それを見たビスターは肩の荷を下ろすかのように力を抜いて話す。
「なんだ。ただ普通に暮らしていただけか⋯⋯心配して損した」
「相変わらず、心配症だね」
「お前は俺の妹だ。心配しねぇ訳ないだろう。⋯⋯そうだ」
キャリメラとビスターの内容を聞くかぎり、ビスターはシスコン気質なのだろうか?そう思っていると、ビスターは口角を上げ、口にする。
「俺もお前たちのパーティーに入る」
「「えっ?」」
そう言い切って、俺たちに満面の笑みを見せた。




