↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
26/56

26.パーティー結成と獣導師の家

 マリネアさんの提案にギルドの剣士たちはギョッとして、俺たちを見る。キャリメラがそんなことは気にせず、キャッキャッと興奮した。


「それすごくいい。ショウヤが一緒にパーティー組んでくれるなら心強いよ。あっ、でも、ショウヤがいいならだけど……」


 キャリメラは嬉しそうにしていたが、俺の意思も尊重してくれた。


 キャリメラは本当に優しい子だ。


 だが、その言葉は俺も同じ。ならばこそ──。


「いえいえ。むしろ、こちらも同じことです。キャリメラがいいなら、ぜひパーティーを組んでいただきたい」


「本当に? 本当にいいの?」


「ええ、もちろん」


「やったー」


 キャリメラはぴょんぴょんと跳ねて、大喜びではしゃいでいた。俺やマリネアさんはもちろんのこと、剣士たちも殺気がこもった視線も和らいでいるほど、微笑ましく思っていた。だが、俺は六剣聖の弟子として戻らないといけない。


「あっ、でも、俺は六剣聖の稽古を弟子として稽古場に戻らないといけないんだ。二ヶ月もないくらいだけの間だけでも一緒にパーティーを組んでもいい?」


「うん、ちょっと残念だけど、それでもいいよ」


「では、そうしましょう。マリネアさん、パーティー登録構いませんか?」


「ええ、すぐに用意するわ」


 マリネアさんは事務の方に行くと、剣士たちがざわざわと陰口を言っていた。


「女一人に囲われやがって」


「六剣聖の弟子だからって調子に乗ってる」


「キャリメラなんかと組むのか」


 俺は無視して、聞き耳を立てなかった。


 しばらくして、マリネアさんが受付に戻ってきた。


「お待たせ。こちらの書類に名前を書いて」


 マリネアさんが書類を持ってきてくれて、俺たちはそれに名前を書く。そして、最後の方を見ると──。


「マリネアさん、ここ最後の『パーティー名』だけど、ここも記入しないとだめ?」


「そうですね。キャリメラちゃんはまだパーティーを作ってなかったですし、ショウヤさんたちのパーティーだと分かるようにするためにも、付けていただければと」


 これは参った。俺はネーミングセンスが絶望的に無い。下手なパーティー名を付けるわけにはいかない。


 俺はどうしたものか悩んでいると、キャリメラが言い放つ。


「じゃあ、『獣導の協奏』にしようよ」


「えっ?」


「駄目だった?」


「いや、駄目じゃない。そんなすぐに決めていいかなって」


「即断即決だよ。こういうのは、深く考えちゃ駄目だよ」


 この思い切りの良さは、キャリメラの強みかな。


「そうか。じゃあ、なんでそのパーティー名にしたのか。理由を聞いてもいい?」


「うん。あの時、ルナたちと戦ったショウヤ、かっこよくて感動したの。まさに獣たちとの連携だった。だから、私がリーダーなら私の職業も込めて、獣導の協奏にしようと思ったの。どうかな?」


「うん、いいね。リーダーに関しても異論は無いよ。キャリメラの方が経験は上だし、俺はそれでいいと思う」


「ありがとう。じゃあ、マリネアお姉ちゃん。獣導の協奏で、私がリーダーで登録お願い」


「分かったわ。頑張ってね、獣導の協奏のお二人」


 マリネアさんがそう呼び、俺たちは少しニヤけた。


「よし。これでショウヤさんのパーティー勧誘が終わりますね」


「マリネアさん、これを狙ってました?」


「さあ、どうでしょう?」


 マリネアさんも食えない人だ。


「それじゃあ、あとは宿だな。早く稼いで家を確保しないと」


「それなら、私の家に泊まる?」


「へぇ? いいの?」


「うん」


────────


 キャリメラの無邪気な答えに俺は動揺する。その様子を面白おかしくマリネアさんが声をかけてきた。


「良いんじゃない?」


「いや、でも女性の家にあがりこむなんて……」


「大丈夫よ。お父さんとお母さんはたまにしか帰ってこないけど、キャリメラちゃんの家に何回かあがったけど、獣の皆がいて楽しい場所だよ。余計なことさえしなければ噛みつかれないから大丈夫」


「そうか、じゃあ世話になろうかな。お願いするよ、キャリメラ」


「うん、いいよ。これからが楽しみ」


 物騒な単語が出てきたが、俺はキャリメラの家に居候することになった。


──────


 俺はキャリメラの家に向かっていた。ルナの背に乗って、ゆっくりと王都の道を歩いてくれていた。


 その間にキャリメラが興味本位であることを聞いてきた。


「ショウヤってなんで剣士になったの?」


「剣士になった理由?」


「そう」


 今まで深く考えたことがなかったことだ。改めて、深く考え込んだ。少し待ってもらい、答えを言う。


「やっぱり、最初は剣を振るのが好きだったからかな。剣を持って振るわれる人の姿がかっこよくて綺麗だったから、剣士になりたいって思ったのが始まりかな」


「そうなんだ」


「でも、今は……。好きな人に認められるためかな」


「えっ」


 その意外な言葉にキャリメラは驚いた。そして、問い詰めてくる。


「えっ、誰? 誰? マリネアお姉ちゃん?」


「キャリメラ、落ち着いて。とりあえず落ち着いて、ちゃんと話すから」


「はっ、ごめん。ちょっとびっくりしちゃって」


(ちょっとではないよ。)


 キャリメラが深呼吸をして、改めて聞いてきた。


「じゃあ聞くよ。好きな人は誰? マリネアお姉ちゃん?」


「……違うよ。たしかに、マリネアさんは素敵な人だ。明るく元気で優しく、面倒見のいい人と見られる」


 俺は静かに笑って答える。そして、話を続けた。


「でも、俺はマリネアさんと会う前に好きな人に会った。その人は遠い場所にいる。それに俺はまだその方に相応しい人間ではない。だから、剣を持って守るために強くなって、強さを正しく扱う。そんな風に、その方に相応しい人間に近づくために俺は剣士になった。どうかな?」


 そう答えを言い切ると、キャリメラはモジモジして恥ずかしそうにしていた。


「そうなんだ。かっこいいね。その恋、叶うといいね」


 キャリメラさんは笑顔で俺を褒めてくれ、応援してくれた。


 俺はただ感謝した。


「ありがとう、頑張るよ」


「あっ、そろそろ着くよ」


 そうこう話しているうちに、キャリメラの家に着いたようだ。


────────


 キャリメラの家は、ギルドと王城の中間に位置している。しかも、中々大きな庭を持っていた。家はちょっと大きいくらいで、その近くに獣たちの小屋があるようだった。


 キャリメラが先頭に立って門を開けた。


「さあ、どうぞ。あがって」


「ええ、お言葉に甘え……」


「ワォン」


 入ろうとした瞬間、鉄黒色で蝙蝠のような大きな耳をした二メートル近い犬が、門の前で吠える。


「ウィン。大丈夫、この子はお客さんだから、吠えちゃ駄目」


「ガルゥゥゥゥ」


 キャリメラが説得するが、ウィンは俺に唸り続ける。


 俺が困惑していると、リンクスが俺の前に立った。


「リンクス」


「ガウ。ガウウッウ」


「ワォォン」


 リンクスとウィンが会話したようで、ウィンは唸るのを止め、その場から離れた。


 一方、リンクスは俺の足に寄ってきた。俺はしゃがみこんでリンクスの頭を撫でた。


「ありがとう、リンクス。説得してくれて」


「キュゥゥ」


 リンクスは高い声で鳴く。その様子を見て、キャリメラは嬉しそうだった。


「リンクス。助けてくれたから、懐いたみたいね。でも、こんなに早くなんて……ショウヤも獣導師の才能あるかも」


「アハハハ。まあ、懐かれないよりは嬉しいね」


 獣との触れ合いは楽しいから、俺を気に入ってくれて嬉しい。


「さあ、改めて入ろ、入ろ」


「うん、そうですね」


 キャリメラは笑顔で家まで歩き、ドアを開けた。


「ここが私の家だよ。さあ入って、入って」


「ええ、お邪魔します」


 そう言うと、キャリメラが人差し指を指して俺に言う。


「違うよ。しばらくここにいるんなら、ただいまだよ」


「うん、そうだね。ただいま」


「よろしい」


 キャリメラはそこから家の中を案内してくれ、俺は大体の位置関係を教えてもらった。そして、最後に外に出た。


 庭全体は前世の学校のグラウンドより大きかった。そう思っていると、キャリメラが説明した。


「ここが獣舎。獣たちの家みたいなとこ。まあ、たまに抜け出してそこらの庭で寝るけどね」


 色んなサイズの獣舎がおよそ十五以上立ち並び、半分以上がキャリメラの獣たちと考えていると壮観だ。


「他の子も紹介したいけど、今日は寝かしてあげて、明日にでも紹介してもいいかな?」


「そうですね。では、また明日からお願いします」


「うん、ところで料理できる?」


「一人前とはいえないでしょうが、できる方かと」


「じゃあ、料理を任してもいい?」


「もちろん。世話になるんだからそれぐらい、どっと来いです。台所は好きに使っていい?」


「うん、大丈夫だよ。じゃあこれからもお願い」


「ええ、こちらこそお世話になります」


 互いに笑顔で会話して、寝る支度に入った。


 そして、約二ヶ月の居候生活が始まった。


──────


 そして、時は遡り────。


 白い花畑が咲き誇った場所に、光る水晶を覗き込む女神様がいた。


『いえいえ。むしろ、こちらも同じことです。キャリメラがいいならぜひパーティーを組んでいただきたい』


『本当に? 本当にいいの?』


『ええ、もちろん』


『やったー』


 俺たちのパーティー結成に不服そうな顔をした女神様に、ジェルが声をかける。


「女神様、どうしたの? 例の人間、ショウヤを見てるみたいですが、何か嫌なことでも?」


 女神様はいつも微笑みを作らず、真顔で話した。


「いえ、どうやらパーティー結成が決まったようなのですが、どうも女性一人と組んでいるようで面白くないです」


 そんなことを言っていると、


『それなら、私の家に泊まる?』


『へぇ? いいの?』


 女神様の顔は真顔だが、空気が重くなった。


『そうか、じゃあ世話になろうかな。お願いするよ、キャリメラ』


『うん、いいよ。これからが楽しみ』


 女神様は静かに口を開いていた。


「私の想いは嘘だったんでしょうか?」


「……女神様、嫉妬しているの?」


「違います」


 ジェルが女神様に確認したが、即答された。


 女神様は不服そうにしながら、光の水晶を覗き続ける。


『でも、俺はマリネアさんと会う前に好きな人に会った。────その方に相応しい人間に近づくために俺は剣士になった。どうかな?』


 女神様はその言葉を聞くと、重たかった空気を吹き飛ばすように明るく微笑んだ。


 ジェルがそんな女神様に質問した。


「女神様、嬉しい?」


「……さあ、どうでしょう」


 女神様は目を閉じつつ、言い流した。


 それからも、俺のことをちょくちょく見ていたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。