21.謁見のその後
「さて、これにて謁見は終了とする。皆、急な召集に来てくれて感謝する。ああ、六剣聖とその奥方、マリネア嬢、ショウヤ殿はまだ少々残ってもらう」
国王の言葉に周りにいた貴族はぞろぞろと下がっていく。
そして、貴族全員が出ると扉が閉められ、玉座の間には招待された俺を含めた十人と国王とその配下二人しか残っていなかった。
国王が玉座から立ち上がり、俺たちに歩み寄っていく。
配下も国王に続いた。
そして、国王が口を開く。
「では、ここからは国王としてではなく、ブレーベルという男として話そう。お久しぶりです、六剣聖殿。急に呼んですまなかった」
「うんじゃ、崩してもいいな」
国王の喋り方が柔らかになると、剛剣が肩をコキコキしながら立ち上がる。
「あなたはすでに崩していたようなものでしょう、剛剣殿」
「宰相殿は御元気そうで何よりです。騎士団長殿は元気がないようですが⋯」
やはり右にいた側近の方は宰相で左にいた側近は騎士団長だったようで、眼の師匠が挨拶をする。
騎士団長は気分が沈んでいるようだったが、国王が笑っていた。
「ハッハハハ。気にするな、ショウヤ殿が騎士団に入らなかったのを悲しんでいるだけだよ」
そう言いながら、国王の視線は俺に向く。
「何せ、あの過酷な稽古期間を乗り越えた将来有望な剣士だ。欲しがらないほうが無欲で珍しい」
それに賛同するように宰相が話す。
「その通りだ。俄に信じがたい事でしたが、先の謁見の際の六剣聖とその奥方の笑顔を見る限り嘘ではないでしょう」
師匠たちが無言で頷く。
「あっははは」
俺は乾いた声で笑った。
俺は一つ気になったことを聞いてみた。
「あの国王陛下、失礼ながら聞いてもよろしいでしょうか?」
その言葉に国王がこちらを向いて、話を聞いてくれた。
「なんだ、ショウヤ殿」
「マリネアさんのおかげで事態を収拾できたとのことでしたが、事の経緯を聞いてもよろしいでしょうか?」
「貴様、無礼だぞ」
宰相殿が叱ってくる。
当然か、今落ち着いて考えれば、不敬罪に問われかねない。
(やってしまった)
そう思っていたが、国王が宰相を宥める。
「良いではないか」
「しかし⋯」
「何、この少年は気になって仕方がないから聞いてきたのであろう。その前向きな姿勢に彼らも気に入ったのだろう」
国王の言葉に師匠たちはドヤっていた。
「さて、先の質問だが、謁見でも言ったことだ。朝早くから手紙を出しに来た者がいたのだ。マリネア嬢の働いているギルドのギルド長ブラワルにな」
「ギルド長、ですか?」
「そうだ。あれは凄い形相だった」
国王は苦笑いでその時のことを話す。
────少し前に遡る
「よし書けた。すぐに向かわなければ。このままでは王都が大変なことに」
手紙を持って自身の家の扉を勢いよく開けたギルド長ブラワル。
彼は自身の愛馬に乗って王城へと駆け出した。
早朝から全速力で王都を駆ける愛馬に乗ったブラワルの姿を国民は笑っていた。
だが、ブラワルはとにかく必死な形相で王城へと向かう。
王城の門の前に着いたブラワルだったが、
「「止まれ」」
王城の門番に止められ、馬の手綱を引きブラワルは馬から降りた。
降りてすぐ、門番に押しかける。
その時のブラワルの顔は、顔面が青ざめており、汗が噴き出してとにかく慌てた形相で押しかけた。
「ギルド長のブラワルだ。 国王陛下に火急の用件がある。この手紙をすぐに届けて欲しい。何がなんでもだ。食事中だろうと構わん!」
「いや⋯しかし、そんな急には⋯」
「いいから早く渡せ」
「は、はぃぃぃぃ」
門番の一人が涙目になって国王のもとに走り出す。
その門番は国王陛下に手紙を届けにきた。食事中に⋯。
門番は跪いて震えながら声をかける。
国王はただ静かに食事を進める。
「国王陛下、食事中のとこ大変申し訳ございません。⋯ギルド長、ブラワルという男から火急、この手紙を届けよと言われ参じました。本当に申し訳ございません」
ギルド長の名を聞き、国王が手を止めフォークを下ろし、門番に言う。
「貰い受けよう。お前は仕事に戻れ」
「はっ。失礼いたしました」
門番は手紙を渡し、駆け足で持ち場へと戻る。
国王は渡された手紙を広げじっくり読んでいく。
その内容は目を疑うもので冷や汗をかくものだった。
全部、読み切った瞬間勢いよく立ち上がって声を上げる。
「パートル。パートル宰相はおるか」
「お呼びでしょうか、陛下」
扉を開けた宰相に国王は命令を出す。
「今すぐ、騎士団や役職を担う貴族を呼べるだけ王城に呼べ。私は王命書を書いて身支度を整える」
「陛下、いきなりどうされたのですか?」
あまりの慌てっぷりに宰相が質問する。
王命書を急いで書きながら国王は話す。
「簡潔に言う。六剣聖全員の稽古を全てこなし、師匠呼びする剣士の勧誘が起きる。最悪、六剣聖全員がだ」
「なんと。しかし、以前も同様なことがありましたが、その時は静剣が間に入り止めたのでは⋯」
「先も言ったが、六剣聖全員だ。静剣まで勧誘に入れば止められるのは私の命以外無いだろう。最悪、王都の一帯が破壊される」
「くっ、わかりました。早急にことを進めます」
それからは宰相は騎士団や集められるだけの貴族を呼び、国王は副騎士団長に王命書を託した。
────
「そして、今に至るというわけだが、ショウヤ殿なぜ土下座している?」
「いや本当に申し訳ございません。この度、ご迷惑をかけてしまったことに対しての土下座です」
どうやら多くの人たちを巻き込んでいたそうだ。
その誠意を見せるために土下座した。
そんな俺に国王は声をかける。
「よいよい。六剣聖の熱が入りすぎると予見したまでのことだ。ショウヤ殿が気にすることではない」
「その寛大さに感謝します」
俺はそう言って立ち上がり、また一つ確認した。
「度々質問して申し訳ないのですが、ギルド長は今どちらに?」
「帰してやった。本人も苦労したことだろうからな。感謝するなら、明日にしたまえ」
「はい。そうします、ありがとうございます」
国王は笑ってそして、自身の側近を紹介した。
「そういえば、紹介が遅れた。この紳士な振る舞いをするのが宰相のパートル」
「改めまして、宰相を務めているパートルです。以後お見知りおきを」
「改めまして、ショウヤです」
「続けるぞ。こちらの騎士がブレーベル王国騎士団団長ナイパーだ。ナイパー、挨拶をしろ」
「はい。騎士団長を務めているナイパーです。あなたには騎士団に入っていただきたかったですが、残念です」
「ああ、すいません。そして、またお会いすることがあるかもしれません。その時はよろしくお願いします」
俺は一通り挨拶を済ました。
騎士団長は本当に残念そうで申し訳無かった。
そして、国王が口を開いた。
「さて、こちらもショウヤ殿の人柄も何となくだが理解は出来ましたね。それでは、解散しようと思う。六剣聖も稽古の予定を組み替える必要があるだろうしな」
その国王の言葉に師匠たちが話を広げた。
「ふむ、確かに」
「互いに予定の調整をしなくては」
「めんどくせぇけど、やるしか無いね」
「紫翠たちの弟子も巻き込んでやるのはどうだ」
「ありかもしれませんね」
「そうなると、予定の調整に二ヶ月は空けるとするか?かまわんか、ブレーベル」
「ああ、構わん。むしろ休め。門下生たちが酷だ」
「承知した。ということで、ショウヤしばらく稽古場は空けるのでギルドのクエストで経験を積め」
「分かりました。では二ヶ月後よろしくお願いします」
それからは馬車で師匠たちは稽古場、俺とマリネアさんはギルドまで帰還した。
────
俺とマリネアさんはギルドに到着したが、その時はもう夕方だった。
俺はマリネアさんを食事に誘う。
「さて、折角だしまたレストランに行く?」
「そうですね。今日はゆっくり話をしましょう。とはいえ、まずはギルドで挨拶してきますね」
「分かりました。では待ってます」
それからマリネアさんはギルドの扉に入っていき、挨拶だけのはずだが中が喧しくなっていた。
内容は聞き取れなかったが、まあ十中八九、王城の招待だろうな。
一時間が経ち、マリネアさんがギルドから出てきた。
マリネアさんはげんなりしていた。
「ショウヤさん、明日覚悟してくださいね」
「あっ、ああはい。何となく分かりますが注意します」
おおかた今日の件で根掘り葉掘り聞かれるのだろう。
俺たちは昨日行ったレストランへと向かい、また今日のことを思い出して話をする。
「それにしても、今日は本当にありがとうございました。マリネアさんが知らせてくれなかったら、もっと大変なことになっていたと思います」
マリネアさんが呆れながらも言った。
「もう二度と王城なんて行きたくありません」
俺はくすっと笑った。
「報奨金は貰っただろう」
マリネアさんは照れながら言う。
「それとこれとは別です」
「ははっ。そうか、じゃあ明日からまたギルドでお願いしますね」
「ええ、もちろん」
俺たちはレストランに着いて世間話もしたりして楽しい食事を過ごした。




