20.王城での謁見
俺は王に呼ばれて、今馬車に乗って王城に向かっているところだ。
王城に着くまで俺は馬車の中で自問自答をしていた。
(なんでこんな事になった。心当たりしかないけど、ただの勧誘でなんでこんな騒ぎに⋯。何とか、副団長のシャニーナさんが止めに入ったから良かったけど、予想の十倍以上の被害になりそうで怖かった。 にしても、王様も関わってくるなんて一体何を⋯まさか俺、牢屋いきなのか?)
そんな風に心配を抱え込みながらも馬車は王城に着いたようだ。
御者が扉を開けると、そこには数十人近くの騎士が馬車の周辺を整列していた。その光景に驚愕していると、
「全く、相変わらず警戒されてるな。」
「仕方ないでしょう。早く行きましょう。」
剛と疾の師匠がそんなふうに言葉を溢しながらも、師匠たちは王城に向かっていた。 東風さんと瑠璃音さんは落ち着いているが、マリネアさんはげんなりしていた。そんなマリネアさんに声をかけた。
「すみません、こんな事になって。」
「本当ですよ。これで何か起きたら恨みますよ、ショウヤさん。」
マリネアさんは猫が威嚇するように俺を睨みつける。本当に申し訳ない。
「ショウヤ殿、こちらです。」
「すいません、すぐに──。」
放心してしまった俺をシャニーナさんが呼んで俺は王城に向かった。
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王城の廊下を歩いているが、本当に豪華だった。綺羅びやかな装飾に視線を動かし感動した。 さらに、執事やメイドさんの数は多く廊下ですれ違っては会釈されつい落ち着かなかった。
そうこうしているうちに、今までで一番豪華で大きな扉の前に俺たちは案内された。その扉の前でシャニーナさんが大きな声で扉の向こうに言い放つ。
「お待たせしました。副団長シャニーナ、ただいま連れて参りました。」
「──よく来た、入りたまえ。」
その言葉と同時に扉が開かれた。 その向こうには、豪華な金の装飾のされた玉座に座り、金の王冠をかぶった金髪の五十歳くらいの男性がいた。服装は荘厳的でおそらく王であろう。その左右にいた男性二人は、側近の者だろう。 周りにも多くの貴族がいた。
扉が開ききり、シャニーナをはじめ全員が玉座の間の中に入っていった。 そして、王の目に入るあろう場所にシャニーナが跪いた。それに続くように師匠たちや東風さんと瑠璃音さんも跪き、マリネアさんは慌てて正座してひれ伏した。俺は最後に跪いた。それを確認しシャニーナが振り返り、再び顔を下に向けて話す。
「国王様、大変お待たせしました。ショウヤ殿とその関係者を連れて参りました。」
「──ご苦労だった。横に下がれ。」
「はっ。」
優しさがありつつも威厳のある声でシャニーナさんを労い、シャニーナさんは玉座の間の横に移動した。 そして、おそらく国王が口を開く。
「六剣聖ならびにその奥方久しぶりだ。」
「はっ、国王様に関してもご健勝で何よりでございます。」
国王の言葉に静の師匠が代表するように挨拶した。国王は俺とマリネアさんの方を見る。
「そして、後ろにいるのは受付嬢のマリネアと此度呼んだショウヤ殿か。」
「は、は、は、はい。受付嬢をしております、マリネアです。こんなところにお呼びいただき嬉しく思います。」
マリネアさんはひどく動揺していた。俺はとにかく落ち着いて口を開く。
「はい。私がショウヤでございます。此度は国王陛下にお呼びいただき感謝いたします。」
「ふむ、名乗りが遅れたな。私はブレーベル王国の国王、ブレーベルだ。此度は急に招待してすまない。」
「いえ、滅相もございません。」
俺は謝罪した。それとこの国ってブレーベルっていうんだ。王都としか聞いてなかったから知らなかった。
そんなことを考えていると、国王が口にする。
「さて、此度の用件だが実はギルド長に聞いて、もしやということで事態の収拾の手助けを頼まれたんだが、マリネア嬢から伝わったこともあり、再度確認する。」
マリネアさんが呼ばれたのはこのためか。当のマリネアはひどく怯えて震えている。
「そなたは六剣聖の稽古期間を最後まで修めたのか?」
その内容に俺が答えようとすると、剛の師匠が割り込んできた。
「何だ、疑っているのか?」
国王に怯まず、意見を申し立てた。国王は態度を変えず、こちらから見て右の白髪がちらつく紳士的な配下の男性が声を発する。
「落ち着きたまえ、剛剣。あなた方の稽古を知っているからこそ、再度確認しなければならないんです。そんな人、歴代で初なのだから。」
剛の師匠とその配下が睨み合っていたが、国王が宥めた。
「辞めたまえ。今はショウヤ殿に聞いている。ショウヤ殿、いかがなのか。」
王の言葉に二人は睨み合うのをやめる。
俺はただ真っ直ぐに答える。
「はい、全員の稽古を最後までやり遂げました。」
その言葉に玉座の間にいた貴族たちがギョッとした。
師匠たちや東風さんたちは少し笑っていた。
ざわつき始めそうになり、国王が静めた。
「静粛に。⋯なるほど、六剣聖たちの反応を見るに本当なのだろう。そして、誰の弟子になるか決めあぐねていると。」
「はいっ。面目次第もございません。」
その言葉に国王は大きく息を吐く。
「はあー。なるほど、それは困ったな。昔、同じようなことがあったが静剣が止めて事なきを得た。しかし、今回はその静剣も引き抜きに関わっているのか。」
「そうだ。これは俺たちの問題なんだ。」
「分かっておる。とはいえ、また街を壊されるのは、たまったものじゃない。だから、一つ提案する。」
国王が頭を抱えると、剛剣が意見する。剛剣は王に対してもいつもの口調だった。そして、国王が提案を持ちかける。
「お前たち六人が師匠となり、六人それぞれがショウヤに教えよ。」
「「「「「?????」」」」」
国王の提案に静の師匠は少し笑い、他の師匠は疑問を抱いた。そんな彼らに国王は説明する。
「貴殿たちは彼を弟子にしたい。だが、当の本人は決めあぐねている。だから、よそに奪われたくない故に引き抜きが始まるのだろう。ならいっそ、六人で教えればいい。それが嫌なら王命として、騎士団に強制勧誘だ。全ての稽古をやり遂げたのだ。国としては願ってもないことだからね。」
その内容に、静の師匠以外の師匠たちはぐぬぬしており、こちらから見て左にいた男性は目を輝かせて笑っている。おそらく騎士団長なんだろう。
そして、国王は笑いながら問い質す。
「さあ、どうする?六人で教えるか騎士団に引き抜かれるか?」
師匠たちは歯を食いしばっていたが、ため息を吐き口にする。
「分かったよ。そうしよう。」
「そうですね、騎士団に引き抜かれるぐらいなら、」
「六人で教えてやる。」
「仕方ない、そうしよう。」
「同じく。」
「面白くなってきたな。」
静の師匠は少し楽しそうだった。
東風さんたちはその光景を微笑んでいた。
国王は口角を上げ、俺に声をかける。
「さて、勝手に話を進めてしまったが良いかな、ショウヤ殿。」
俺が悩んでいたことを国王の進言で心が軽くなり、俺は感謝を言った。
「いえ、願ってもないことです。俺も六人の師匠に教えていただけるなんて光栄です。国王の助力感謝いたします。」
国王は俺の姿を見て笑顔になり、今度はマリネアに視線を向ける。
「さて、マリネア嬢。」
「ヒャ、ヒャイ。」
マリネアの声が裏返ってしまっている。国王は気にせずに続けた。
「此度の件、急ではあったが速やかに伝えていただいた事感謝する。貴女の情報がなければ、街がどうなっていたことか。その行動に感謝して報奨金を与える。」
「あ、ありがとうございます。謹んでお受けいたします。」
マリネアは涙目になって金貨の入った小袋を貰った。
マリネアが小袋を国王の配下から受け取り終えると国王が玉座から立ち、手を前に出した。
「さて、ショウヤ殿。貴殿においては、弱冠十六歳にして六剣聖全ての稽古を成し遂げ、認められたことをここに高く評価する。『六剣聖全員の稽古を完遂した男』として私自ら、称賛する。皆盛大な拍手を。」
その言葉に周りの貴族たちが盛大な拍手をしてくれた。師匠たちや東風さんと瑠璃音さん、そしてマリネアさんも笑顔で拍手してくれた。 俺は国王にも認められたことを嬉しく思い、跪きながらも頭を深く下げた。




