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聖女のおまけ転移のち処刑フラグなので鬼の旦那と逃亡しました  作者: 蔵前


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7/10

おまけは異世界の夢のない真実を知る

開かずの扉の鍵を開けて入って来た男二人、灰色髪のグレンさんと金髪のギードさんは私を脅えさせまいと気を使ってくれているようだが、全く私には効果などない気遣いだ。いかんせん体が大きすぎる。まるで大型犬がチワワを取り囲む圧迫面接の図になっていて、私の体が反射的に怖いと脅えて震えるのだ。


彼等のカテゴリーが「鬼」みたいだし。


鬼って肉食だよね、人を喰うんだよね。

日本昔話は、旅人を油断させて鬼ババが包丁持って襲い掛かるのがデフォだし。


「ひぃ」


「グレン。お前喋んなよ。可哀想にこの子本気で脅えてるぞ」


「しょうがないだろ。俺はお前と違って子供はわからん」


「子供じゃなく、女という性別は全部だろう。よお、修道僧」


ぶおん、ぶおん。


二人は互いを殴り合うようにして拳を応酬しあった。

けれど互いにその拳をよけ合っただけで終わったので、今や「ぶち殺してやるぞ」という字幕を背負って微笑み合いとなっている。


逃げたい。


「あの」

「うう」


苦悶の声に私の喋りかけは打ち消された。

私を脅す巨石群が私のことなんか忘れた感じで、横たわる男性の左右に飛んで行って取りついたのだ。


「ガイ兄さん、痛いのか」


「ガイ。意識が戻ったのか」


「う、う……」


「「ガイ!!」」


ガイと二人に呼ばれる大男は再び意識を失ったようだ。

ガイは、ひと目でヤバイと感じる状態の人だった。赤みの強い焦げ茶色の髪は山ごもりしていた人みたいに長くぼさぼさで、口元なんか頭と同色の毛でモサモサだ。ギードとグレンの二人にガイと呼ばれた彼は、まるで山籠り修行から戻って来たばかりの人のようだ。


痩せてしまった肉体に意識のない状態、ぷらす毛むくじゃら。

彼も二人と同じく大柄で、けれど彼は二人と違って大型犬に私は変換できなかった。せめて大型犬だと思えれば、男で巨人でも怖いの我慢できるのに。


ガイを大型犬に変換できなかった代りに、私が変換できたのは、熊、であった。


彼から想像できるのは、冬ごもりを失敗して町に出てきてしまった巨大ヒグマだ。

それも駆除後に晒されている死体状態の。


可哀想な状態だが、彼が動けない状態で私は良かったと思った。

ギードがガイを抱える担当らしいので、素早く動けるのはグレンだけとなる。

彼等が移動のために動き出したその時、私には逃げるチャンスが出来るはず。


たぶん。


十数分前にあっさり襟首捕まえられたけど、今度は、今度こそ逃げてやるから!


「畜生。回復薬が半分も効いていない」


「少しでも効いてるだけで儲けもんだよ。召喚されたばかりの聖女を連れてくるか? 聖女の聖魔法は制限がない。慈悲深い女ならば、兄さんを治療してくれるかもしれないぜ」


「阿呆。聖女にちょっかい出したそこで全員が処刑だろう」


「――ハハッ、違いねえ。国に尽くしたガイ兄さんが聖女召喚の反対を、それも、たった一回意見しただけで牢獄送り。それでこれだ。このまま治療も受けられなければガイ兄さんは死ぬだろう。兄さんがどれだけ国に貢献したと思ってんだ」


「結局は、俺達と人族は違うって奴らが考えているってことだ。ガイからの苦言は、奴らには待ってましたってヤツなんだろうな。俺達もこの国の国民だが、俺達の長であるガイに兵を任せたくないってやつだ。先日の戦争に勝てたのは、ガイの指揮と俺達の武力あってのものだというのにな。いや、俺達の力を目の当りにしたからこそ、俺達を切りたかったのだろう」


「ガイを殺すためだけに聖女召喚かよ」


「聖女召喚はその理由付けだろうな。ガイならば反対をする。それでガイを粛清だ。ガイを失ったことで他国が再び侵略を考えるか? 考えないな。聖女がいれば土地を浄化して人族の領土を増やせる。そのうちに聖女を旗頭にして人族だけで手を組み、我らのような鬼人や獣人を人族は排除していく流れになるだろう」


「それでも皮肉だよな。聖女様が召喚されたから、俺達はこうしてガイ兄さんを牢獄から救い出せるチャンスができた」


ギードとグレンの会話から想像するに、彼等のガイ兄さんは牢屋に入れられていて、聖女召喚で大騒ぎしている今こそはと二人が彼を救い出して来たようだ。


計画性無いが大丈夫か? 

けど、それよりも聞き捨てならないことをグレンさんは言ったよね。


「……あの、聖女ってこの国の人族じゃない人達を殺すための存在、なの?」


グレンとギードが私へと振り返る。

二人とも私がいたことを忘れていたって顔だ。

あんなに質問して来たのに、結局彼らは私などどうでも良かったのか。


でも、牢屋破りをした人達ならば、聖女召喚に巻き込まれの私に同情して助けてくれるのではないのか。賭けて見るのはどうだろう。


「あ」

「「なんだ?」」


グレンとギードの声がかなりぶっきらぼうで、私の体は反射的にびくびくと竦む。

うう、勝手に怖がるこの体が嫌い。

聞いて、私の体。怖くても死ぬのはもっと怖いし嫌でしょ。頑張れ私。高跳びでぴょんって踏み込むあの時、飛ぶことだけで無心になるでしょ。あの勢いで頑張るの。


「あ、あの、私は今日巻き込まれでこの世界に来たの。それで、おまけはいらないって殺されそうで隠れてたの。あ、あなた方が、に、逃げる時に。ええと、城門を出る迄でもいいから、一緒に連れて行ってくれませんか?」


彼等は呆気にとられた顔になり、しばし言葉を失った。

私は沈黙が耐えられず、お願いしますと頭を下げる。

ちゃんと両手をついての土下座だ。


「内政チートも異世界飯チートも出来ませんが、テーピングは出来ます」


「てーぴんぐ?」

「とりあえず、ステータスを見せてくれるか?」


「そうだ見せてくれ。異世界人って言うならば、治癒魔法の一つぐらい持ってるだろ。頼む。ガイ兄さんはもうギリギリなんだ!!」


「でも、私はテーピングしかできない!!」


「「だからテーピングって何だ」」

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