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聖女のおまけ転移のち処刑フラグなので鬼の旦那と逃亡しました  作者: 蔵前


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おまけがガイをニガテとする理由

私は夕飯の用意をしながら、同じ商隊の雇われ人であるカフィに話しかけられていた。気さくだし、私に敵意がない女の人だから私は話しかけられ嬉しい。彼女とたわいない会話をしていると、自分が逃亡者だって事を忘れていられる。


ただし、彼女は旅の炊事洗濯を請け負うメイド仕事の他に夜のお仕事もしているので、私の保護者を自認するグレンからカフィと付き合いはするなと言われている。その言いつけを破ってたところを、私はグレンに見つかったのだ。


それもカフィが私に自分の仕事を紹介するって言って、今夜は夜通しお話しようかって誘いをされた、ちょうどそこを見咎められたようなのだ。


うん。とっても不味い状況だ。


「サーエ」


ほら、彼が発した声には怒りがすっごく籠っている。

名前を呼ばれただけだけど、「ハイ、ごめんなさい」と謝っちゃった。


気まずいどころじゃない。悪戯を見つかった子供どころか、泥棒しようとするところが見つかった泥棒ぐらいの「しまった」感である。


もともとグレンは怖い声だけど、五日も一緒ならば違いだって分かる。怒ってる。すごく怒ってるよ。

そしてグレンがかなり怒ってるから、カフィもそこんとこに気が付いたみたい。

カフィはさっと立ち上がるや、そそくさと去って行った。

残された私はお説教コース確定。


カフィが座っていたそこに、大きな男性が腰を下ろす。

私を真っ直ぐに見つめる目は、食紅入りのべっ甲飴。

その瞳は私を見据え、グレンとは違うがさらに深いバリトンの声を響かせた。


「彼女との交流は断ってくれ」


グレンがツノ隠しに被っている頭巾と同じものを被っているが、目の前の大男はグレンと違って目だけしか出していない。

なぜならば、ここにいない人として馬車に隠れていなきゃいけない人だから。


そう、ガイが復活しているんですよ。


あの日、落ちて来たテーピングテープを使い、覚えている技を駆使してガイの手や足を私は必死に固定した。変な形で固まったら大変だって。さらに願えば出てくるサポーターも使って、腰とか胸部とかもしっかり補強。


するとあら不思議、まず、痛みや熱っぽさが水が引くみたいにすうっと消えた。痛みが消えれば意識も遠のき、気が付けば昼過ぎで、軽くなった体は動けるようになっていた。そうである。ガイの話によれば。

で、不思議なテープもサポーターも、彼が体が治っていると認識した時には消えていた、そうです。

これが私の治癒魔法? 感謝されてもコレ違う感が激しくて。


「は、ハハハ。奇跡だな。たぶん、俺は歩けるし走れる、剣だって振るえるだろう。外に出て確かめて見るか? ギード、打ち合いするか」


「「「寝とけ!!」」」


全員の心が一つになった一瞬だったなあ。

私の夫となったガイさんは、とんだ脳筋野郎でもあったようです。


グレンがその後私の服やらなんやら色々と動き回ってくれたのは、ガイが回復した感謝もあると思う。

っていうか、ガイだけじゃなく彼等全員が私に恩義を感じているようで、私をとても大事に扱ってくれている。それは純粋に嬉しいが、扱い方が変だ。


年頃の女性にするような扱いじゃない。


喉が渇く前に飲み物をくれるし、お菓子が手に入ればすぐに私にくれるが、いちいち「一日一個だよ」とか注意がはいる。また、何かあると私を抱きかかえて馬車まで運んでくれるが、馬車まで来れば言葉通りに馬車に放り込む。ひどい。


けど、こんな大事そうでも割と適当な扱いだから、私は彼等に男性性を感じないで、赤鬼のガイ、青鬼のグレン、黄鬼のギードって認識なのだろうか。


ちなみに、ガイの家の名がカリブンクルスで紅玉とか柘榴石の意味で、グレンの家の名は青い石って意味のサフィラスだ。そしてギードの家は緑色の石の意味のスマラグト。あ、ギードは黄色鬼じゃなくて緑鬼だった。


「サーエ」


あ、意識が旅に行ってた。

そんな私を咎めるガイの視線。

奥さんを慈しむ目じゃなく、子供を叱る親の目なのがまじ解せない。


それに、ガイこそ隠れて無きゃな人なのに、好き勝手に外に出ているじゃないの。理不尽。動けるようになったガイは、三日目には馬車に隠れていることに嫌気がさしてイラついたので、ギードやグレンのふりをさせて外に出すことになった。ギードが交代だと馬車に籠り、時代劇ドラマで見たような頭巾を被っているガイが私の目の前にいるのはそういうことだ。


「サーエ?」


「ごめんなさい。ガイが言いたいことは分かる。だけど、ハリシュでカフィとはお別れでしょ。それまで同じ旅をする仲間なんだから、ギスギスしたくないの。軽い会話をするのもダメなの?」


「ダメじゃない!」


「うきゃっ」

「ダメだろうが!」


ガイの大声に驚いた私の代りに、グレンがガイを叱った。


「サーエ。君は後だ。まず、ガイ。あなただ。サーエに好かれようとして何でも許すのは違う。サーエを大事に思うならば、嫌われようが駄目なことはダメだと教える事からだろう」


「う」


ガイの視線は数分前と違って弱弱しく、私に縋ろうとするものだった。

けどごめん、見捨てます。


グレンはお母さん属性だけあって、叱り方がちょっとくどくて。それに、そう、私は焼き上がったカルツオーネを葉っぱで巻いて行くお仕事がある。

私は、あとで絶対に私もグレンに叱られるだろう未来を考えないようにして、新たなカルツオーネをフライパンに置き、焼けたカルツオーネを巻き巻きする。


チーズだけのものを作って、ハチミツかけて食べたらいいよってギードに渡したら、ギードがグレンをとりなしてくれないかな。


ガイにどうして頼まないのか?


目の前でグレンにしっかり叱られてるし。


それになんか、ガイだけは私を見る目がちょっと違う気がする。

結婚したって事実があるから、夫という気持ちで妻を大事にって思ってくれているのかも、だけど、私は嫌なのだ。


だって、男は嫌。


妻だって思い出させられたら、ガイを夫で男性だって見なきゃいけない。

赤鬼さん青鬼さん緑鬼さんって、思っていられる方が怖くないし嫌悪感が無い。


グレートデンとゴールデンレトリーバー、それにヒグマ、って最初に当て嵌めたのも、男性が怖い自分から彼等が男性だって事実を逸らすため。


考えてもみて。

二メートルを超える身長と、常人以上の身体能力を誇る男性。

男性恐怖症には、耐えられない怖い存在、でしか無いじゃないですか。

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