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聖女のおまけ転移のち処刑フラグなので鬼の旦那と逃亡しました  作者: 蔵前


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おまけは母ポジな人をゲットしたっぽい

グレンは器用な人で、私の為に鞄を作ってくれた。

もちろん異世界な魔法バッグではなく、ただの布鞄だ。前世の世界でも売っていた斜めがけ出来る帆布鞄みたいな形で、A4サイズの教科書が入りそうな横幅にお弁当箱も入りそうな奥行きもあるものだ。


彼が鞄を急いで作ったのは、この世界には無いテーピングテープ類がまたどこからか落ちて来たらすぐに拾って片付けられるように、それから、ガイの為に奮闘した私への感謝。あと、この世界で一人ぼっちの私の気持を慮って、であると思う。


この鞄の材料は、私の制服だった布を使っているのだ。


馬車に乗ったその翌日にグレンは動いた。ハリシュに着いたら服を買ってやるからそれまでマント着用でしのげ、だったのに、とんだお変わりようである。


彼は商隊の商人の一人と交渉し、私の為に女性服や下着など一式を購入してくれたのだ。それでこちらの服に着替えたが、彼が服の手配を急いだのは私が女の子で、トイレや水浴びに男性である自分達が付き添えないと気が付いたからであろう。


同じ商隊の女性と行動した場合、いつまでもマントでいられない。マント脱いで制服姿だったら、ひと目で私が異世界人だって分かってしまう。


それで着換え終わったら制服はバラシて燃やすはずだったが、グレンがいい布だからと鞄にしてくれたのだ。私にとって唯一の大事な縁だろうって。鞄を抱いて泣いちゃった。涙が出る程に優しいよ、グレンは。強面だけど。


そしてこの世界で私の宝物となった鞄は、今は私達が寝泊まりしている馬車に置いてある。交代で今はギードが中で仮眠中という番犬付。絶対安全。


鞄にはテーピングテープだけでなく着替えにお金も入っている。もしもの時に私一人で逃げても大丈夫なセットでもある。グレンはお母さんか。そしてお母さんはどこの世界でも口煩いもので、馬車の外に出る時は必ず鞄を持って出ろと言い聞かせられている。


が、夕飯の支度に鞄をぶら下げては無理である。だから私が飯の支度する時間帯をギードの仮眠時間になるようにギードと協定を結んだのだ。そのお礼にギードの食事にはプラスアルファをつける約束をしている。


ガイ? ガイはグレンの言う通りにしなさいとグレン寄りだ。彼は私の夫である以上、私が常に安全状態であることを優先したいそうだ。


鞄ぶら下げて飯の支度する方が危険極まりないと思うんだけど、それを言ったら飯当番もしなくていいって言うし。鬼は凄い過保護だ。私の中で鬼ヶ島で鬼退治した桃太郎が大悪人人でなしになっちゃうぐらい、鬼族のあの二人は人格者だよ。


「サーエちゃん。あんた一体何を作っているの?」


私がせっせとフライパンでカルツオーネもどきを焼いていると、すっかり顔なじみになったカフィさんが覗き込む。茶色の髪に青い目のふっくら美人だ。彼女は炊事洗濯その他で商隊に雇われている三人の女の人達の一人で、その他の部分をグレンやギードにも利用して欲しいのか護衛が戻ってくる飯時になると顔を出す。


それでいつの間にかカフィと私は仲良くなったが、カフィとお喋りするとグレンがとても嫌がる。それで話しかけられても出来る限り早めに切り上げるようにはしてたけど、今晩は王都から出て四日目の夜なのだ。明日はハリシュに着くから商隊とはお別れ。それに彼女はグレン達への思慕と同じぐらい、私が作った飯の味見をしたい気持が強い気がする。


だから今日ぐらいは彼女と気兼ねなくお話してもいいよね。


「肉あん包みパン焼きですね」


カフィさんに笑顔で答える。

彼女はカルツオーネに物欲しそうな目つきを隠しもせず、調理している私と話しやすそうな石の上に腰を下ろした。


「へえ。また面白いものを。あんたは小さいけど働き者だし、料理が上手いねえ」


「カフィさんたら。はい」


焼けたばかりのカルツオーネもどきの一つを葉っぱに包んでカフィさんに手渡す。葉脈がプリントされた茶色のシリコンナプキンにしか見えず、最初に目にした時は私は非常に驚いたと思い出す。実はヘンパイという植物の葉を押しつぶして乾燥させ、四角く切っただけのものらしいけど。野営の時の紙ナフキンや皿がわりの必需品で、町で売られているんだそうだ。


で、用意したのは絶対気遣いの達人のグレンなんだろうな。ギードは「手づかみでいいじゃん」派だ、絶対。


「あはは。気遣いもいいねえ。気に入った。もし働きたくなったら、あたしを頼りな。商隊付きのメイドでも、お屋敷付きのメイドでも、いくらでも口をきいてやるよ。稼ぎたいなら、商隊付きメイドだねえ。こ~んなおまけもあるよ」


カフィは自慢気に右手の手の甲を私に向けた。

真ん中の指に宝石の嵌った指輪だ。昨日は無かった。その他の仕事で手に入れたのだろう。逞しい。でも私は。


「ええと。凄いですね。もしもの時は頼みます」


「ああ、頼まれてくれ。あたしもあんたみたいに若くて可愛いくて料理も上手な子を紹介で来たら鼻が高いからね」


「いやあ」


照れてしまう。

私では異世界飯チートは出来ないと思ってたけど、焚火で作る野営飯ってキャンプ飯のことじゃないかって思ったら、できた。というか、キャンプ好きだったお父さんありがとう。お陰で肉の火加減というか焼き具合は間違えなかったし、ポトフーやアヒージョも作れたからね。


「今夜が最後だしさ、今晩は一緒におしゃべりしようよ」


「不要だ」


地獄の底で聞くような低~い声に、カフィはもちろん私こそ固まった。

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