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炯眼のリアン  作者: 霧雨
第三章 迫り来る魔の手
33/40

4 自由の長


コンコン、


「シオ、カールだ」


他の者に『様』付けで呼ばれている本部の長を呼び捨てにし、簡単な挨拶ですませるのはカールとロメストくらいだ。


「「…………?」」


静かな豪華さを感じさせる扉の向こうからは何の反応もない。カールとリアンが首をかしげて顔を見合わせた時だった。


ドタッ、ガタンっ、バタバタバタ……


カールが勢いに任せて扉を開けると、大きな本棚がグラグラと揺れ、中の本は飛び出し小さな山を作っていた。

残っていた本がまたバタンと音をたてて落ちる。


「どうしたら本棚がこんなに揺れるんだ……」

「待ちくたびれて寝てたからフラついちゃった。つまり、カールのせい」


抑揚の無い、高く澄んだ声。

そして本の山から現れた人物はフルフルと真っ白いショートの髪を振って払い、カールを見つめた。


「遅い」

「ごめん」

「ずっと待ってたのに」

「ごめんって」

「めったに連絡もないし隠し事するし」

「ごめんなさい」

「ロメストは元気?」

「あ、うん元……」

「お土産は?甘いやつ」

「あーあるある」

「その子が言ってた?」


"彼女"はその瞳をリアンへ向けた。

突然興味を示され、戸惑いを見せたリアンの周りをてくてくと歩き回る。


「カール。ちょっと出てて」

「「え」」

「早く」

「頑張れ、リアン君」

「ちょっ、カール?」


密かにグッとファイティングポーズを見せられ、リアンを置いて虚しく扉は閉ざされた。


ツンツンと服の裾を引っ張られ、リアンは視線を落とした。

身長は第一印象と違って随分と小さかった。ただ見た目ではなく、彼女はとても大きく感じられた。


なんと言うか、神秘性とでも言えるのだろうか。

彼女の目はあまりにも純粋で、この戦場に生きる、まして統率者とは思えない。


しかし、違和感を感じていたのはシオの方も同じだった。


「君、本当に契約者(エリート)?」

「?」

「何考えてるか分かんない」

「シオも十分分からない」

「!」


彼女に習って思ったことをそのまま言った。

するとシオは心底驚いたように目を見開いてパチパチと瞬きをした。


「カールとロメスト以外に初めて呼び捨てにされた」

「……すみません」

「いいいいいいいい。呼び捨てでいい。敬語、いらない。私も呼び捨て、いい?」

「うん」


こうして笑えば、シオも普通の女の子に感じられた。カールやロメストと同年代なんだろうが、年の差というのを全く感じない。


部屋の客用ソファーに座らされ、シオもリアンの隣に座って質問攻めにされた。もともとそうなる予定で来ていたから動揺はしなかったが、内容にはさすがに驚いた。


「これ、全然関係なくないか」

「何が?」

「エレメントのこととか」

「だって興味ないもん」


信じられない一言だった。

皆をまとめて導かなければならない存在が、エレメントに興味がないなんて。それでいいのか。



━━普通はここで、心配になっていろいろ尋ねるべきなのかもしれない。

しかしリアンはそうしなかった。多少驚いたのは事実だが、「あ、そうなんだ」くらいの感覚しかなかった。


それは彼女の神秘性がそうさせるのか、それともリアンの感覚が異質なのか……



プルルルルルルル、


リアンへの質問を止め、鳴り響く電話に嫌そうに視線を向けた。


受話器の向こうから

「出ました。お願いします」

と端的に連絡が入る。


返事をせずに切ると、壁に掛かっていた嫌になるほど真っ白のコートを羽織った。

シオのだけは、装飾も全て純白だった。


その様子を見て、リアンも腰を上げた。


「じゃあ」


と言って、部屋を出ようとする。

様子からして何かあったようだが、この場で余所者の自分が出るべきでないことは分かる。


部屋の外ではカールが立ったまま待っていた。


「意外と早かったね」

「何かあったらしいでっ!?」


いきなり腕を引っ張られ、最後まで言い切ることができなかった。


「君も来て」


物凄い力でぐんぐんと引き摺られていき、ろくに抵抗することもできない。



そんな後ろ姿を見送りながら、カールは一人呟いた。


「また随分と気に入られたんだね。あの子が、珍しい……はぁ、何でこう面倒事が付いて回るんだろう」


他には誰もいない廊下に一人、足音を響かせた。




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