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炯眼のリアン  作者: 霧雨
第三章 迫り来る魔の手
30/40

1 面倒がり


オイ、起キロ


休ンデイル暇ハナイ、ダロ


俺ヲ、モット使エ


全テヲ俺二委ネロ


ジャナイト……




「━━━ん、リアン君!」

「っ!」


目の前にはミレイの顔があった。

こんなに感情を表に出す子だっただろうか。何に対してか、物凄く焦っている。


「……どうしたの」

「~~っ!どうしたのじゃない!」


そして怒り出した。ついには目に涙まで溜め始め、今度はリアンの方が焦りだす。

今の言葉の何が悪かったのだろうか。ただミレイを心配して聞いただけなのに。

でも結果的にはミレイを怒らせてしまった。


「ご、ごめん……」

「何に謝ってるの?」


髪に隠れていない片目がリアンを睨んでいる。

本当に、何がそこまで怒らせてしまったのだろう。


「今回は大きな事件だって聞いてたし、死んじゃった人もいるし、リアン君は帰ってきたけど目が覚めないし、皆がリアン君の事でいろいろ話してる。今もうなされてて……何があったのか知らないけど、私に『どうしたの』?違うでしょ!」

「……ごめん」

「だから何に謝ってるの?」


ベッドの端に突っ伏すミレイの頭にそっと手を置くと、ピクッと震えた。それでも振り払われることはなかったのでなるべく優しく撫でる。


「えっと、心配させてごめん」

「……うん。戻ってきてくれて、良かった」


ミレイは突っ伏したままで顔が見えなかったが、もう怒ってはいないようだ。


しばらくそうしていると、スースーと寝息が聞こえ始めた。小さく呼び掛けてみるが反応はない。

もしかすると、かなり長い時間側に居てくれたのかもしれない。きっと、昨日の事だろう。


かなり落ち着いて、いろんなことも思い出した。

ラットと戦っていたはずだ。相手の速度に着いていけなくなりそうだった。そしたら……?

自分はうなされていたんだろうか。


リアンはベッドから出てミレイに布団を掛けると、カールの元へ向かった。




皆忙しなく動き回り、リアンに気が付く者はそう多くなかった。

気が付いた数人の科学班や戦闘隊(ビクティム)は、やっと起きたか、大丈夫か、などと簡単に言葉を交わした。いつもとほとんど変わりない。


三階に辿り着いた時、それはそれはタイミング悪く、ばったりジルと出会ってしまった。

普段は互いに極力避け、出会っても目で牽制して終わり。

それが普通で、今回もそのように通りすぎようとしたが、ジルはリアンの前に立ち塞がった。


少し高いところにある目を睨む。相手も見下すように睨んでいるが、退く気は無いようだ。


「何だ」

「……」

「どけ」

「何なんだよ、昨日のは」

「は?」

「覚えてないとは言わせねぇぞ」


大体のことは皆カールから聞いて知っていた。

リアンの異変のこともだが、それはエレメントの事だからまた何かあるんだろうと自然に受け入れられていた。


だが契約者(エリート)達は違った。

原因は2つ。その場を目の当たりにしたから、そして何より、自身がエレメントを扱う者だからだ。

リアンのアレは明らかに異質だった。エレメントの新しい使い方かもしれません、はいそうですかと受け入れられなかった。


「何が」

「マジで覚えてねぇのかよ」

「そう言ってる」

「……ふざけんな」

「こらこらこらこら、やめなさい」


ジルの後ろからカールがひょいと現れ、ジルの肩を叩いた。


「ほら、急かさない」

「……チッ」


ジルの中にはもちろん、リアンのあれが何だったのか分からないことへのイライラがあったが、そこには確かに嫉妬もあった。

リアンのおかげで助かったと言っても過言ではないのだ。


「……くっそが」



ジルが盛大に舌打ちをして去った後、リアンはカールと共に連絡室に入った。ここはもうカールの部屋のようなものだ。


「昨日はどうもお疲れ様」

「……それで、」

「さっきの少し聞いてたんだけど、本当に何も覚えてない?」

「はい」

「そう……」


それからカールに洗いざらい全てを聞いた。


カールは話し終わってからじっとリアンを見ていた。


「何ですか」

「君の感情が読めなくて」

「頭が着いていかないだけです」


もちろん驚いてはいる。だが自分にそんなことが起こっていたなど信じられるはずもなく、またそんなことが出来るとも思わなかった。


自分の事を自分が一番分からないのは、いつものことだ。今さらどうこう騒ごうとも思わなかった。


「この件は皆に話したよ。これからも起こるか分からないから、知らないままにしとくのは……」

「はい、構いません」


それを聞いてカールは幾分安心したようだった。そんなの少しも気にする必要はないのに、とリアンは思うが、そこがカールの好かれるところでもある。


「今回のことは、僕が直接本部に行って話してこようと思う。最近行ってないしね」

「……本部?」

「おや、リアン君は知らなかったかい?ここLEAPは地域ごとに置かれた別所なんだよ。世界は広すぎて扱いきれないからね」

「全体ではカールが創設者じゃないんですか?」

「いや、僕も創設者だよ。でも組織が大きくなりすぎて……全体の指示はもっと優秀な奴に任せてるんだ」


カールより優秀な人なんて。きっと三人の内の最後の一人なのだろうが、どんな人だろう。

しかしこれはリアンが想像していたよりずっと大きな組織のようだった。


「そこでだ。君も一緒に来てくれ」


カールの目は真剣そのものだった。赤みがかった瞳が真っ直ぐにリアンを捕らえる。

カールはたまに、こういう有無を言わせない目をすることがあるのだ。そしてその時は必ず理由がある。

もちろん今回は……


「アロガンのことと一緒に君のことも細かに報告しなければならない。となると、一緒に居た方がいいんだよ」

「何か聞かれますか」

「おそらく多少はね。でもまぁ大丈夫」


カールはリアンの疑いの眼差しに気が付いて視線を泳がせた。何か隠している。


しばしの沈黙を切ったのはリアンだ。

「本当に?」と聞いた途端、カールはガシッと自分の頭を両手で押さえて唸った。


「リアン君の事を報告してなかったんだ。いや、そろそろした方がいいのかなって思ってたんだけどどうもこうタイミングが合わなくて先にこんな事態が起きちゃって。はぁぁあ、何て言われるか……その上本人つれていかなかったら」

「あの、そんなに怖いんですか」

「いや、全然。ただ……すごく面倒臭い」


絶対に行きたくないです、という言葉を、カールの若干潤っている厳しい目を見てかろうじて飲み込んだ。





翌日、カールとリアンは真っ赤なコートを羽織って密かにLEAP基地を発った。


皆に秘密にしたのは、説明するのが面倒だったのと、大人数になるほど準備が大変だからだ。彼らは本部があのような場所であるだけに着いてきたがる。

それに時間もそう掛からないはずだったので、後で多少は怒られる覚悟で言わなかったのだ。


後に、ノイルを筆頭に激怒されることも知らずに。




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