11 核心
カールはその場を見て、即座に状況を理解する。まさかこいつが関わっていたとは……
向こうにはリアンが戦っているのが見える。すぐに助けに向かわせようと思ったが、下手に動けば何をされるか分かったもんじゃない。
カールは後ろの四人を目で制止した。
今のところ大丈夫なようだし、リアンに任せよう。
そして男と対面する。
「懐かしいなぁ。カールにロメスト。それから……マーグス」
一拍おいて、男は笑った。
「お前の世界はまだ暗闇の底か?」
「落ち着いて下さい」
掴みかかろうとしたカールをマーグスが止めた。落ち着いた様子で見えない目を開くとカールを見つめる。もちろん、視線は合わない。
「あなたが冷静にならずにどうするんです」
「……分かってる」
あのカールが怒りに震えていた。
「アロガン。どういう事だ」
「それは俺がここにいる理由か?それともお仲間を殺した理由?一度捕まえた奴等がまた武器を持っていた理由?そいつらが強くなった理由?」
「何もかもだ」
「……そうキリキリすんなよ」
そう言ったアロガンは急に真剣な声色で囁いた。
先程までとは纏う空気が別人だ。
「お前んとこにあった武器をちょっくら拝借してこいつらに返してった。それからコツ(・・)を教えてやったんだよ」
「……コツ?」
「そう、エレメントの本当の使い方だ」
訝しげな顔をするカール達一行を見て、再びうっすらと笑みを浮かべた。
しかしそれは余裕のあるものではない。いくらエレメントの使い方を大幅に変えて利用できるようになったと言っても、まとめて契約者五人を相手にして傷一つ無く勝てるなどと己を過信していないのだ。
負けるつもりなど毛頭無いが。
その場はカールとアロガンだけの場になっていた。他の者は皆、短期なジルでさえも黙って事の成り行きを伺っている。
これからが今に懸かっているからだ。
「カール、エレメントが何か分かったか」
「……」
「お前はまだ根本を間違ってるんだよ」
アロガンは女を雑に地面に下ろすと、右手に自分の刀、左手にウィズの暝芭を手に取った。
「未だにくだらない属性とか言うもんを考えているようだが、そりゃ間違いだ。そんでもってお前はその考え方のせいでエレメントの大部分の機能を無駄にしてる。
こいつらエレメントは全て同じものだ。
属性は所有者の扱い安さ、イメージのし易さにすぎない。
それからチークスから情報を頂いたが、アルファやらベータやらは技の傾向を示しているだけだ。
お前はこの二つの分類でエレメントを考えるが故に可能性を失ってたんだよ!
いいか、大事なのは所有者の意志だ。
それからもう一つ。こっちの方がお前には重要かもしれねぇな。
エレメントに『選ばれる』なんていう言葉は当てはまらねぇんだよ。
この刀は俺と"波長"が合ってた。これがお前の言う選ばれたってやつだ。
つまりこの銃はエレメント武器としてはウィズにしか扱えないわけだ」
アロガンはウィズに暝芭の銃口を向けた。
パァァァンッ
「ぐっ、」
ウィズは下半身を根に押さえつけられたまま、背中に"空砲"を食らって呻いた。少しばかり地面にめり込み、骨が軋んだ。
アロガンが、暝芭を扱ったのだ。
「これは俺がこいつに選ばれたのか?違うね。俺がこいつの波長に会わせたんだ」
「どういう事だ?」
ここにきて初めてカールが反応した。
ただ黙って聞くことしかできなかったのは、アロガンの話があまりにも核心を突いていたからだ。
情けない話ではあるが、情報を与えてもらうことしかできなかった。
「ちゃんと理解して長く触れてりゃ分かるんだよ、そう言うのが。なぁカール」
アロガンはまたも余裕に笑い、囁いた。
「お前の"偽善"に溢れたやり方で何が分かったんだよ?」
カールは何も答えなかった。




