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炯眼のリアン  作者: 霧雨
第一章 黒の少年
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14『LEAP』のリアン

カールの呼び掛けで、必要な人員が訓練場に集まった。やはり断然、男性の方が多いようだ。

皆きっちり縦横揃えて並ぶ……ようなことはしない。バラバラに好きなところに居て、こういう堅苦しくないところも好きだとリアンは思う。


「じゃあまず昨日の報告から頼む」

「うぃーっす……」


ひらひらと手を上げて返事をしたのは目の下に濃い隈ができた男だ。髭で分からないが、そこまで年ではない気がする。その男を含め、白衣を着ている何人かは科学班と考えていいだろう。

男は目元を押さえ、頭を掻きながら手元の資料を見てだるそうに答える。


「えー、昨日のエレメントが大量発生した件ですが……そうっすね、異常現象だったわけですがまぁ、理由はわかんないっす。遺体からも変わったものは見られませんでしたし……考えられる可能性としてはエレメント自体が何らかの変化をしているのか、もしくは特別な種類のエレメントが現れてそれを扱う人物がいるのか」

「結論は?」

「手がかり無しっすね」


誰かの問いに端的に答えると、肩を竦めてみせた。それから紙を数枚捲ると、また目元を揉みながら目を細める。


「えー、別件ですが……ジルの殃牙(オウガ)に変化が見られました」


少し回りがざわつくのを無視して男は淡々と話を続ける。


「敵の動きに合わせて炎の大きさが変わったらしいっす。本人に自覚はなし。戦いに必死だったと……」


ため息。またか、というような呆れた視線がジルに向けられる。


ジルはと言うと、自分の報告にもそんな視線にも一切興味を示していないようだ。ただ腕を組んで壁にもたれている。どうやらアリサに殴られた内臓は無事なようだ。


「まぁ、そんなとこっすかねぇ」

「ありがとう、ノイル。助かったよ」

「いえ……」


カールが手を叩くと、一斉に静かになる。


「昨日はいろいろあったからね。そのいろいろついでで、新しいエレメントの分類方なんだけど……」

「「おぉ!?」」


数人の驚きの声と共に動揺が広がる中、ノイルと呼ばれた男がパネルを操作した。


「五属性の分類を紹介したときにも言ったけど、あくまで一つの考え方だ。それに囚われないでくれ。でも分析して知っていて得することもある。臨機応変に頼むよ」


一斉に腕時計式の装置にデータが送られ、リアンもウィズのものを覗き込む。



α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)の説明。

そして以前の五属性は

【火】、【水】、【風】、【環】、【殊】

と改められた。木と土は同時に扱える事が多い故に【環】にまとめられ、ロメストが扱うような四つに当てはまらないものを【殊】とした。


というようなことが書かれていた。


皆が目を通したであろうあたりでカールと目が合い、手招きされた。


「そして、もう知っている人も多いだろうが、昨日の事の中で出会ったリアン君だ。剣の契約者(エリート)だ。そうだな、新しい感じで言うと【Γ(ガンマ)・風】というところかな。身寄りはいない。仲良くしてくれ」

「「「おーー!」」」


昼と同じ気前のいい掛け声。自然とリアンも柔らかい表情になる。そんな中、一人だけが盛大な舌打ちをした。


「何が悲しくてこいつと顔合わせなきゃなんねぇんだよ」


皆がその声の方に目を向けると予想通り、ジルが親しみさを微塵も感じさせない表情でリアンを睨んでいた。リアンもまた冷たい目でジルを見る。二人の間に散る火花を見て、回りは「お?お!?」と半分呆れ、半分面白がる。


リアンがカールの隣から一歩踏み出したことで皆の視線を集めた。そして、視線を釘付けにした。

さっきまでの無表情からは考えられない爽やかな明るい笑顔で立っている。なのに何故だろう。悪寒がするほど不気味で、張り付けた表情に見えるのは。


「改めまして、リアンです。まだ知らないことの方が多いので、たくさん教えていただけると嬉しいです。どうかよろしくお願いします」


ペコリとお辞儀する。だが誰も声を出さない。その沈黙の中、全く変わらない顔を上げて続けた。


「一つお願いがあります。“綿毛”、特に銀色のものが大嫌いなので、極力近づけないようお願いします」


一瞬、普段より冷たい眼でジルを一瞥してそう言うと、また爽やかな笑顔に戻った。


一斉にジルに視線が集まる。ジルは俯いていて表情がわからないが、ビキッとこめかみに青筋がたった。そのままゆっくりと歩き出し、ナチュラルな動作で剣に手がかかる。


「ぶっ殺してやるっ!」

「こっちのセリフだ」


剣を抜いて走り出したジルを数人で抑えるが、止まらない。リアンも受けてたつ気満々で剣に手をかける。


カッキーン


金属音と共にジルの剣はロメストの槍に阻まれ、リアンの手の上にはカールの手が置かれていた。


「お前、そんな元気あるなら俺としようぜ?」

「リアン君。まだ初日だから飛ばしすぎないようにね」


端から見れば子供の喧嘩を止める保護者だ。


まだしばらくジルは暴れていたが、ロメストに任せておけば大丈夫だろう。リアンも元の無表情で、視界に入れたくないというようにそっぽを向いている。


また楽しくなりそうだと、ロメストに押さえつけられるジルを見て頬を緩める一同だった。


「それにしてもリアン。あの笑顔は怖いよー」

「むかつくんだよ」


もちろんジルのことだ。ウィズは可笑しくて笑いながら、何気なしに


「でも笑えるなら普段ももっと笑ってよー。本当、怒ってるみたいで怖がられるよ」


と言った。するとリアンは驚いたように


「え、笑ってないっけ……無表情かもしれないけど、それで怖いって言われても……」


こんどはウィズが驚く番だった。どうやらあれで笑っているつもりらしい。少なくとも眉間に皺が寄る癖は無意識なようだ。


これから先リアンがぶち当たるであろう壁を考え、ウィズは心配で頭を悩ませるのだった。





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