第9話 装い新たに
冒険者ギルドの受付で、職員が少し困った顔をした。
「すみません。今日は少し手が回らなくて……
この辺の依頼、まとめて処理していただけると助かるんですが」
「あ、はい」
まぁ、どうせ普段も、場所の近そうなのを適当に拾ってるだけだしな。
「問題ありません」
ガルドが静かに答えた。
まぁ、いいか。
ギルドを出て、歩き始めてすぐ、リオが声を上げた。
「なあ、見てくれよ」
軽く胸を叩く。
「新しい革鎧。どう?」
「……前より、動きやすそう」
ラナが率直に言う。
「だろ?」
「音もしないですね」
ガルドも頷く。
「金具減らしたんだ。
走るとき、全然違う」
「あんたが叫ばなければね」
ケイはいらずらっぽく笑った。
「ガルドのも、本格的な鉄鎧になったな」
俺が言うと、ガルドは少しだけ姿勢を正した。
「ええ。プレートが増えました」
「重くない?」
「慣れます」
即答だった。
「でも、見た目より、音がしないんですね」
ラナが言う。
「可動部を調整してもらいました」
「職人、良い仕事してるな」
リオが感心する。
「ラナとユーヤも、服変わったよね」
ケイが言った。
「ええ。薬の扱いも考えた旅装にしました」
ラナは裾を軽く引く。
「薬袋、前より揺れません」
「俺のも、紐多めで」
「紐多め?」
「……落ちにくい」
「楽器は命だもんね」
ケイは納得したように頷いた。
「でさ」
ケイが少しだけ声を弾ませる。
「私のは、これ」
背中の弓を手に取る。
「やっと武器かよー」
リオが呆れる。
「いいでしょ、別に!」
「前のと、何が違うんだ?」
「可愛い!」
「……またか」
「ちゃんとしなりも良くなってますー」
舌を出すケイに、リオは鼻で笑って返した。
リオも籠手を買った時、見た目の格好良さに興奮していたことは、黙っておこう。
そんな話をしながら歩いていると、空の色がいつの間にか変わっていた。
「あれ」
リオが言う。
「もう戻る感じ?」
気づけば、ポートリースが見えている。
「……終わってますね」
ラナが静かに言った。
「報告、行きましょう」
ギルド受付で報告を済ませると、職員がほっとした顔で頭を下げた。
「助かりました。
良ければ、今日はギルドで食べていってください。
みなさんに一杯、奢らせていただきます」
「やった」
リオが即答する。
「遠慮なく!」
ケイも続いた。
テーブルに移動して、料理と飲み物が並ぶ。
「なんかさ」
リオがジョッキを掲げながら言った。
「装備が揃ってきて、やっと冒険者らしくなってきたよな」
「……確かに」
ラナが頷く。
「消耗品の補充が、あまりないのが幸いしてます」
「いいことだろ」
「ええ。良いことです」
装備か……
次は別の楽器も試してみようかな。
しかし、料理道具も捨てがたい。
どっちも、みんな喜んでくれるだろうか。
酒に赤らむみんなの顔を見て、そんなことを考えながら、夜は、静かに更けていった。




