第8話 冒険者たちの帰り
冒険者ギルドの前で、ガルドが依頼札を束ねて受け取ってきた。
「今朝も、いつも通りFランクをいくつか出してもらいました」
「了解」
リオが短く返す。
「今日は寒くならなきゃいいけど」
ケイが空を見上げる。
雲は薄く、天気は悪くなさそうだった。
街を出て、少し歩いたところで、リオが唐突に言った。
「そういやさ、ラナって休みの日、何してんだ?」
「……特に決まっていません」
「ほんとに?」
「寝ているか、本を読んでいるか」
「冒険者っぽくないな」
「ちゃんとリラックスしてるんです」
ラナは淡々としている。
「でもさ」
ケイが続ける。
「ラナって、冒険者じゃなかったら、結構いいところ勤めてそう」
「……どういう意味ですか」
「なんか、しっかりしてる」
「褒め言葉?」
「もちろん!」
「ユーヤは?」
リオが振り返る。
「休みの日」
「……料理研究、かな」
「研究?」
「こっちの食材、まだよくわかってないから」
ケイが感心するように頷く。
「それ、元の世界でも?」
「うん」
「主夫向きじゃん」
「否定はしない」
リオは次にガルドに振った。
「自分は……休みの日は散歩をしてます」
「ポートリースを?おもしろいのか?」
リオがへの字口になる。
「弟たちに手紙で、色々書いてあげたくて」
「筆まめだなー」
「日課ですから」
「あんたはどうせ修行とか言うんでしょ」
ケイが薄目でリオを見やる。
「お、俺は……」
急に口ごもるリオ。
「実は、俺も本を読んでるんだ……」
「冒険者っぽくないとか言ってたくせに」
「あ、愛読書があるんだよ!」
憧れの伝説のなんとか、か。
恥ずかしそうにするリオ。
その様子に、ケイとラナは小さな笑いをこぼしていた。
話題は自然と、食事の話に流れた。
「昨日の煮込み、美味しかったよ」
ケイが言う。
「肉、何使ってたの?」
「安いやつ」
「やるねぇ」
「おすすめの香草、ありますよ」
ラナが添えた。
「へぇ。使ってみようか」
「やった、また実験台!」
そんなことを話しているうちに、 空が少しずつ暗くなっていることに気づいた。
「……あれ」
リオが言う。
「もう夕方?」
「ですね」
ガルドが頷く。
「思ったより、歩いていました」
「あれ?なんか違ったっけ?」
ケイが首を傾げる。
「……さっきの場所が、少し遠かったかもな」
俺は曖昧に答えた。
さらにしばらくして、 遠くに灯りが見え始める。
「街だ」
ケイが指差す。
ポートリースの街門だった。
気づけば、すっかり夜になっている。
「夜は少し冷えますね」
ガルドが言う。
「だな」
リオが腕をさする。
「今日のドロップ品は?」
「あれ、なんだっけ」
俺はそう返して、アイテムボックスをまさぐった。
あれ、どれだっけ。
「まぁ、あんまり変わんないよ」
「そっかー」
俺たちは、少し身を縮ませながら、心なしか足早になっていた。




