第7話 冒険者たちの日常
ポートリースの街門を出たところで、リオが伸びをした。
「で、今日はどこから行くんだ?」
「……まずは、南の畑ですね」
ガルドが依頼書を確認しながら答える。
「魔物の痕跡確認、だったっけ?」
ケイが気楽な声で言う。
「うん。数も少なそうだし、危なかったら引き返すやつ」
俺がそう補足すると、全員が特に反対もなく歩き出した。
しばらく歩いたところで、ケイがふと思い出したように言った。
「そういえばさ、みんなって、冒険者やってなかったら何してたと思う?」
唐突だけど、誰も止めなかった。
「……自分は、実家に仕送りしてましたね」
ガルドが少し考えてから答える。
「今も、まあ……あまり変わりませんが」
「弟さんたち、まだ小さいんだっけ?」
「ええ。一番下は、まだ靴の左右も怪しいです」
「それは放っておけないですね」
ラナが淡々と相槌を打つ。
「でもさ」
リオが歩きながら言った。
「ガルド、冒険者向いてると思うぜ。
前に立つの、迷いないし」
「いえいえ、いつも怖いです」
「え、そうなの?」
「が、頑張ってます」
それだけ言って、ガルドは少し照れたように視線を逸らした。
「ラナは?」
ケイが次を振る。
「冒険者じゃなかったら?」
「……診療所か、施療院ですね」
「想像つくー。危ない仕事なのに、結局やってるのが面白いよね」
「危険と現実は、切り離せませんから」
「大人だ……」
「リオは?」
今度は俺が聞いた。
「決まってるだろ」
リオは即答する。
「強くなる」
「仕事じゃなくて」
「関係ねえ」
言い切りだった。
「伝説級の人たちってさ、 生活どうしてたんだろうな」
「……たぶん、普通に生きてたと思う」
俺がそう言うと、リオは一瞬だけ考えてから笑った。
「そうかもな」
「ユーヤは?」
ケイが振り返る。
「元の世界で」
「え?」
「冒険者じゃない世界の話」
少し間が空いた。
「うーん、思いつかないけど……」
「えー、なんかないの?」
「やってたのは会社員だったような、気はする」
「あーね。やってそ」
拍子抜けしたような声が重なる。
「でもさ」
ケイがニヤッとする。
「今のほうが合ってない?」
「……ま、音楽は好きだからね」
「でしょー」
そんなことを話しているうちに、 道の先が開けてきた。
「あ」
リオが言う。
「街、見えてきたな」
本当に、いつの間にかポートリースの街門が見えていた。
「みなさん、お疲れ様です」
「もう終わりかよっ」
「そんなもんじゃない?」
ケイが気楽に言う。
ラナは少しだけ、周囲を見回してから口を開いた。
「……今日は、静かでしたね」
「ん?今日って、なに倒したっけ?」
リオが首を傾げる。
「ファングモグラと……クローネズミ……だったかな?」
俺の曖昧な記憶に、誰の反論もなかった。
……え?合ってる?
話して、歩いて、それだけで、今日の依頼は終わっていた。
そんなはず、ないのだけど、それくらい、俺たちの息は合っているみたいだ。




