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第6話 冒険者たちの晩餐

 冒険者ギルドの酒場は、夕方になると一気に騒がしくなる。

 依頼帰りの連中が一斉に流れ込むせいだ。


 俺たちもその流れに紛れて、いつもの丸テーブルを確保していた。

 木製のジョッキが卓に置かれ、湯気の立つ簡単な煮込みと黒パンが並ぶ。


「いやー、今日も終わった終わった」


 リオが椅子にもたれかかり、肩を大きく回す。

 ガルドは黙って頷きながら、ジョッキを持ち上げた。


 特別きつかったわけじゃない。

 Fランク依頼をいくつか回って、いつも通り戻ってきただけだ。


 ……いつも通り、いつの間にか終わって、達成感はない。


 そんなことを考えていると、酒場の入り口が開いて、軽い足音が近づいてきた。


「お待たせー!」


 声と一緒に現れたのは、ケイだった。


「ごめん、ちょっと遅れた!」

 そう言いながら、彼女はくるっと一回転する。


「ね、これ! どう?」


 身につけているのは、少し仕立てのいい服だ。

 色合いも柔らかく、動きやすそうなのに、どこか可愛らしい。


「……可愛い」

 ラナが即答した。


「でしょ!? ラナに作ってもらったやつ!」

 ケイは満面の笑みで胸を張る。


「そっちも可愛いね」

 そう言って、ラナは手首に視線を向ける。


 小さな石のついたブレスレットが、酒場の明かりを反射した。


「あ、これ?」


 ケイは少し照れたように、でも嬉しそうに言った。

「ラナが服作るって言ってくれたから、買えたんだよ。ありがとね!」


「なあ、それって性能は?」

 リオが興味ありげに身を乗り出した。


「え? 知らない」

 ケイはあっさり言う。


「可愛いから買っただけだし」


「……はぁ」

 リオとガルド、そして俺まで含めて、ほぼ同時にため息が出た。


 まぁ……何かしら、効果はあるんだろうよ。


「デザインで言えば」

 ガルドが、俺の方を見た。


「そのリュートも、綺麗な意匠ですね」


 俺の脇に置かれている楽器を指している。


「そうだな。初期装備はどれもあっさりしていたけど、急に装飾が付いたな」


「……確かに」

 ラナも自分の薬袋を見て微笑む。


「そういえば……」

 少し考えてから、ラナが首を傾げる。


「吟遊詩人が奏でても、味方が光ったりとか、そういう見た目の変化ってないんですね」


 俺は言葉に詰まった。

「……どうなんだろう」


 正直、わからない。


「そうみたいだね」

 結局、それだけしか言えなかった。


 そのとき、隣のテーブルが少し騒がしくなった。

 同じくFランク依頼帰りらしいパーティだが、全員ぐったりしている。


「もう無理……腕上がんない……」

「回復、間に合わなかったしな……」

 誰かが愚痴る声が聞こえる。


 俺たちの卓は、というと。


「はー、やっぱ終わった後の飯は最高だな!」

 リオはケロッとしている。


「テンション大事だよな!」

 そう言って、俺の方を見て笑った。


「ユーヤの音楽、気分乗るしさ。 これからも頼むわ!」


「……ああ」

 俺は曖昧に頷き、ジョッキを口に運ぶ。


 喉を通る酒は、いつも通りの味だった。


 音楽に手応えがあるのも変な話だ。

 意味があるって言ってくれるなら、それでいいさ。


 順調、順調。

 目指せ、Eランク、だな。


 俺はそう結論づけて、雑談の輪に戻った。

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