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第5話 二回目の冒険

 俺たちは昨日と同じ道を通り、輸送隊の停留するキャンプ地を横目に歩いていた。

 馬が唇を震わせる音が聴こえてくる。


「またスライムか……」

 隣で、リオが露骨に肩を落とす。


「まぁ、いいじゃないか。今度は多少はやりがいがあるだろ?」

 俺はそう言って、苦笑いを返した。


 歩くにつれて、人の気配が少しずつ薄れていく。


「そうですよ。作物被害の予防は農家にとって、重大です」

 ガルドは真面目な口調で補足した。


 そこにケイのあくびが混じる。

「一応、昨日よりはお金も良いしね」


 いつの間にか、足元の感触が変わってる。

 地面が、湿ってきているようだ。


 そこでラナがリオに歩調を合わせていた。 

「リオさん。こう考えましょう。


強さのわかってる敵と戦える、と」


「どういうことだ?」

 リオは首を傾げた。


 ラナは優しい声で続ける。

「闇雲に戦ってたら、どうしようもないくらい強い敵と出会ってしまうかもしれません」


 視界の先に、用水路が見え始めた。


「でも依頼なら、勝てるだろう敵に勝ち続けて、強くなっていけますよ」

 ラナはそう言って微笑んだ。


 そのとき、ガルドはさっと前に出て、盾を構えた。


 俺は小さく頷く。

「じっくりと確実に、伝説に近付けるってことか」



 その瞬間、草陰から、スライムが一体飛び出す。

 そのまま、ガルドの盾に弾かれていた。


「出ましたよ!」

「なるほどな!」


 ガルドのあげた声と同時に、リオはもう、スライムを踏みつぶしていた。


 風を切る音が、ガルドの背中を抜ける。


「面倒だけどね」

 弓を下ろしたケイが、ため息をつく。


 俺はまたも慌てて、リュートを奏で始めた。


 だが、木陰から出てきた別のスライムには、すでに矢が刺さっていて、溶け始めている。


「冒険者ランクは上げたほうが、結局効率いいんでしょうし」

 ケイは次の矢をつがえた。


 ガルドが、俺たちと用水路の間に割って入り、苦笑いを浮かべる。

「報酬もあることですし、最初だけ、辛抱ですね」


 用水路側から、スライムが二体現れる。

 片方は盾に弾かれ、もう片方がガルドの体に当たって跳ねた。

「くっ!」


 その声とほぼ同時に、

「大丈夫ですか?! 今、回復を!」


 と言いつつも、すでにガルドのそばに寄っていたラナが、光の粉をかける。


 体から立ち昇っていた煙は、すぐに消えた。


 リオが一体に接近し、殴り潰す。

 残った一体には、ケイの矢が刺さる。


「無駄遣いしていなければ、今回の依頼料で、新しい装備が変えるくらい溜まるはずです」

 ラナはそう言いながら、すでに後方に下がってきていた。


 建物の影から、スライムが散発的に現れる。


 リオが興奮した声を上げる。

「初心者武器から卒業かー!」


「あたしは服かなー。

転移者の最初のこの服、どうにかしたいわ。


やぼったすぎ」


 ケイは気の抜けた顔で、矢を放ち続けていた。


 俺は愛想笑いで返す。

「まぁ、良くも悪くも、無味乾燥としてるよな」


 そこで、ラナが思いついたように言う。

「あ、ケイさん。私、服、縫えますよ?


デザインさえ教えてもらえれば」


「ほんと?そしたら、アクセサリーにお金使えるわ!」

 ケイの表情が、ぱっと明るくなった。


 しかし、ラナは苦笑いで続ける。

「強い装備……とはいきませんが」


「そんなんどうでもいいわよ♪ しばらくは余裕でしょ」

 ケイは上機嫌だった。


 合間を見て、各自がスライム核を拾う。

 今回は俺のボックスに集めていた。


「確かに……余裕か」


 手元を見ると、すでに十二個集まっていた。


 依頼完了。


 あれ? 俺、なにしてたっけ?


 周囲を確認し、追加の出現がないことを確かめると、そのまま、来た道を引き返すことにした。


「あと、何回、Fランクをこなせばいいんだろうなー」

 手を頭の後ろで組んで歩くリオは不満そうだ。


 苦笑いしつつも、同調したのはガルドだ。

「確かに、あまりお金もよくありませんしね」


 すると、ラナがヒールパウダーの袋を締めながら、俺のそばに寄ってきた。

 少し、眉尻が下がっているように見える。


「私たち、調子が良すぎて、浮かれちゃってないでしょうか……」

 小声で、そう言った。


 心配する気持ちはわかるけど、無為にブレーキ踏むのもなぁ。


「どうだろう。こんなものなのかもしれない。


気負うよりはいいんじゃないかな」


 だが、ラナの表情は、まだ晴れない。


 実際、ラナの考えも大事だとも思う。だったら……。


「Eランクに上がったら、少し気を引き締めてみよう」


 そう言って微笑みかけると、ラナは少し安心したように、微笑みを返してくれた。

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