↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
81/90

第81話 運び手のルート

 霧裂沼から帰還した翌日。

 ギルドの掲示板前。


「あれ? 


——ねぇ、ユーヤ。

これ、依頼人の名前……」


 リナの指した依頼票を見ると、そこには『ナオ』という文字。


「輸送の護衛依頼……


でも、彼女、護衛連れてたよな」


 リナがカウンターへ行くと、ちょうどネラが通りかかった。


「ネラさん。輸送の護衛依頼のナオさんって、こないだの?」


「はい、そうです。


東の国境近く、〈ベルカ〉という町。

そこからの護衛依頼ですね」


 まぁ、これも縁だし、ということで、請けることにした。



 数日後、ベルカに到着する。


 俺にとっては、この世界で訪れる、三つ目の土地だ。


 街門をくぐると、幅の広い街道がそのまま町の中へ伸びていた。

 道沿いには宿や食堂、厩が並び、軒先には幌馬車や荷車が何台も停まっている。


 馬に水を飲ませる御者。

 車輪の具合を確かめる男。

 荷台に麻袋を積み直している一団。


 通りを行き交う人にも、旅装の者がやけに多い。


 カラカラと車輪が鳴り、馬蹄の音がその合間を抜けていく。

 町の規模のわりに、街道だけはずいぶん賑やかだった。


「この町は、まだ〈エルディア王国〉なんだよな?」


 リナ先生のメモぺら。


「うん。ベルカの先の関所を抜けたら、隣の〈ヴァルネス王国〉ね」


 隣国かぁ。

 と言っても、エルディアで暮らしてるって実感もないけど。


「今は、ヴァルネスにある高山の町〈ドルガン〉から、鉱物由来の資材をどんどん輸入してるみたい」


「雰囲気が少し、ポートリースに似てるような」


「最後の宿場町だから、旅人向けのお店は多いかも」


 どーりで。

 

 通りの上、太陽はまだ上り切っていない。


「まだ昼前か。どうすっかなぁ」


 すると、カイラに顎を掴まれ、グキッと回された。

「新しい町に着いたら、まず?」


 近い。


「え、えーと」


「早く答えないと、唇が触れてしまうわよ」


 近付けるからだろ!


「ギ、ギルド、だったな」


 答えると、つまらなそうな顔をされた。



 冒険者ギルドは少し小さく、酒場は併設していなかった。

 受付のお姉さんとの会話を、荒ぶれた喧騒が邪魔をすることもない。


 到着報告を済ませると、受付のセレッタは遠慮がちに顔色をうかがってきた。

「あの……時間があったらでいいんですけどー……」


「ん?」


「依頼、請けてくれないかなー、なんて。どうです?」


「あー……」


 ナオとの待ち合わせは明後日だ。


「一件くらいなら」


「おー、ありがとうございまーす。


魔門の攻略で、ベルカからも冒険者が出ちゃってて」


 それなら尚更、助け合わないとな。


 リナが声を挟む。

「明日は身体を休めたほうがいいわ。


だから、半日で済みそうなものにしましょ」


「そうですか。……だったら」


 セレッタが台帳をめくる。

「これ、とか?


あとは、まぁ、これ、とか……」


 「あ」と反応したリナ。


「どした?」


「ウサフサヤマアラシ、出るんですか?」


 するとセレッタがページを戻す。

「そうなんですよ。たまに、ですけど。


また出たみたいですね」


 討伐任務か。


 と思ってる間に、リナは依頼票を剥がしてきた。


 あ、決まりなのね。



 林を進むと、俺の知ってるヤマアラシの三倍はあるヤマアラシ。

 すでに興奮状態の数匹が、野犬を倒した直後みたいだ。


 尖った毛先に血が滴ってる。


 チュートリアルうら若き乙女がメモとにらめっこ。


「起きてる間は、体を覆う毛をずっと逆立たせててるんだけど、これがすごく硬いの」


 ……神経質なのね。


「しかも刃物みたいに鋭いわ。


斬りつけてくるから、隙が出来るまでは距離を取って」


 とか言ってる間に、もう倒していた。



 河原を見つけて、アイテムボックスから遺骸をずるりと引き出す。


 ナイフを取り出すと、レックスが慌てた。

「ユーヤさん。皮を剥ぐ前に、毛を剃るんです」


 ああ。確かに、長いから……


「あれ? すんごく柔らかくて、フワフワしてる」


「ウサフサヤマアラシの毛は別名、ソムナ毛と言って、良質な糸になるんですよ」


 ほーう。


「あ。だから、リナは狩ろうと思ったのか」

「ふぇ?!」


 ビクンとする。


「え、だって、裁縫の練習してるんだろ?」


「あ……う、うん! そう!」


 色んな素材を扱ってみるって、大事だもんな。

 料理と同じ。


 レックスから乾いた笑いが聞こえてきた。


 ……ん? なにその笑い。



 翌日は一日、ベルカで休むことに。

 さらに日を跨ぎ……


 ギルドへ行くと、そこにはナオの後ろ姿。

 聞いていた通り、侍と召喚士も控えていた。


「ナオ。おはよう」


「ユーヤ君。


前日入りしてたんだ?

しごできー」


 俺たちは仕事を詰め詰めにしてないだけ、なんだけど。


 カイラが楽しそうに薄ら笑い、ミルが目を輝かせる。


「あなた、男を二人も侍らせてるじゃないの。

足りないわけ?」


「は、侍らせてる……?」


「ラブラブですー!♡」


「ラブラブ……いやいや」


 そういう反応になるよね。


「ナオ。気にしないでいいよ。


なぜ護衛を増やすんだ? ってさ」


「ああ……近道するからよ」


 こ、答えになってない。

 

 けど、なんとなく察しは付いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。