第76話 落ち着きの無くなる声
第7章 解放
ある日の夕暮れ。
その日の依頼を終え、ギルドの扉を開けた。
いつもと様子が違う。
ホールの雰囲気はガヤガヤではなく、ザワザワ。
職員さんも、テキパキというよりバタバタしてる。
なんか、あり気だけど……まぁ、なんにしても。
メンバーはテーブルに向かい、俺はカウンターへ向かった。
よく対応してくれているお姉さんも、他の職員とコソコソと何か話してる。
「あのー、ネラさん?」
「あ、えーと、少々お待ちください」
そして、また少しコソついてから、足早にカウンターについてくれた。
「お疲れ様です。依頼の報告ですね」
「ええ。なんか、物々しいですね」
みんなの冒険者証を差し出し、アイテムボックスから討伐証拠を取り出す。
分厚い本をめくる、彼女の手が一瞬止まった。
「……ええ。そうですね。
少し仕事が溜まってしまいまして」
「あー。そりゃ大変ですね」
ま、そういうこともあるか。
いつものようにつつがなく対応してくれた。
振り返ると、テーブルにはもう最初の一杯が並んでいる。
「あー、喉乾いた」
金貨袋を懐に入れながら、冒険者たちの間をすり抜けていく。
耳に入る、聞き馴染みのない言葉。
「……魔門、らしいぞ」
魔門??
皆の所に戻ると、レックスが木製ジョッキを滑らせてくれる。
「お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ様」
ぐいっと一口。
ごきゅ、ごきゅ……
「っはあーー……」
もう半分。
……これ、リナの魔法で冷やせないのかな。
当のリナは、ホールを見回している。
「なんか、今日、雰囲気、変じゃない?」
「あー……なんかね」
あ、そういえば。
「今、そこで聞こえてきたんだけど、〈魔門〉って、何?」
ピタッと止まる。
「ん? どうした?」
「あ、ううん。なんでもない」
微笑むリナ。
「魔門はダンジョンのことよ。
〈サキュバスの館〉みたいなのとは違って、ある日、急に現れるの」
「え」
「安心しなさい。
現れるのは実質、転移装置だけよ」
あー……ダンジョンがまるごとドンっと出るんじゃなくて、ワープ地点だけが。
「地表に出てくるのが門だけだから、魔門っていうのは、門そのものを指すこともあるわ」
そして、先生はメモをめくり始める。
「厄介なのが……
うん、そう…ひとつが、最深部の敵がどんどん強くなること」
「ピストン方式で登ってくるのよ。難易度が」
「じゃあ、一層目の敵は消えちゃうのか」
「ううん。もう一つ厄介なのが、門に結界が無いこと」
「ミルに会いに、出て来ちゃうですー♡」
「え、それって……
ほっとくと、出てくる魔物も強くなってくるってこと?」
「そうなんですよ!
だから、見つけたら早く攻略しないとならないんですけど……」
なるほど、厄介だ。
さっき、魔門って単語を口にした時、一瞬止まったのは……
今一度、周りを見回す。
不穏に見えてきた。
「もしかして……出たのかな」
「わかんないけど……多分」
……勘弁してくれ。
借家、まだ荷物整理が終わってないんだぞ。
翌日、早速——
〈共援団〉の掲示板には集合通知が貼り出されていた。




