↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
74/90

第74話 馴染みの遭遇

 美女二人?

 を加えて、四人でテーブルを囲む。

 

 ひとまず乾杯して、俺とハルトはエールを飲み干した。

 そして、二人でカウンターの上にかかっている大きな板に目を滑らせる。

 

 酒や料理の名前と値段を見ながら、木製ジョッキをぽんぽんと叩いていると……

 カイラとマーヤはグランドメニューそっちのけで、話を続けていた。

 

「今日、目ぇ強くない?」

「魔導化粧のせいかしら」

「なに、変えたの?」


 メ、メイクの話してる……。

 

「ユーヤ、どれ食う?」

「あ、ああ」


 葡萄酒を注いでもらい、肴を注文する。


「それ、こないだ話してた客でしょ」 

「倍もらったわよ」

「それは……二度抱かれたってこと?」

「話、聞いただけ」


 も、もう話変わってる……。

 

 っていうか……結構前からの知り合いなのかな。

 

 ハルトが身を乗り出した。 

「なぁなぁ。

カイラが冒険者で、マーヤが娼婦なのはわかったけどさー」


 そんな明け透けに。

 

「そもそも、二人はどういう繋がりなん?」


 ナイス質問!

 

 マーヤが気だるそうにパイプを取り出した。 

「いきなり化粧のことを聞いてきたのよ」


「化粧のこと??」


「そう。男にどう見せれば色っぽくなるか、とかね」


 ああ……確かに、カイラが選びそうな先生だ。

 

 カイラは少し不満気だ。

「見ただけで男があたしを押し倒したくなる化粧を知りたかったのよ」


 サキュバスの〈魅了〉じゃあるまいに。

 

 煙をフッと吐き出す。

「もっと露骨な言い方だったけどね」

「そうだったかしら」


「頭おかしいと思ったわよ」

「でも答えてくれたじゃない」


「ま、簡単には、ね」


 この人はこの人で、歯に物着せぬ言い方する人だなぁ。



 運ばれてきた串焼きの一本を、ハルトが掴む。

「それで、仲良くなったんだ?」


 マーヤが飲み物を注文する。

「仲良くなったって言うか……


客の愚痴を聞かれちゃったのよ」


「カイラに?」


「そう。そしたら……


あ、これ、言っていいの?」


 カイラが豆をつまむ。

「例の、毒よ。

あれを盛るよう、勧めたの」


 あー……あの、嫌がらせ毒薬。

 

 俺はハルトに、カイラが嫌がらせレベルの毒薬を作って、商人に卸してることを説明した。

 

「カイラちゃん、そんなことしてんだ……


そういえば、そういう感じの子だったね」


 さすがに、引いてる。

 思い返せば、カイラの噂を最初に教えてくれたのはハルトだったっけ。

 

 マーヤがパイプの灰を捨てる。

 ちょっと、強めに叩いてる?

 

「たまにね、いるのよ。腹立つ客が。


普通は泣き寝入りよ」


 カイラがくっくと笑う。  

「一日に数回、焦点が定まらなくなる薬は良かったわね。


何度も頭をぶつけて」


「詳しく言わないでよ。


折角、被害者目線で話したのに」


 なんか……目には目を、みたいな感じ、ちょっと似てるかも?

 

「代わりに、化粧を教わってるわ」

 

 ハルトが食べきった串を皿に放る。

 

「ほんじゃ、ギブ&テイクの関係ってわけか。


今日も、その取引?」


 いつの間に飲んだのか、マーヤが葡萄酒のお替りを頼む。

 

「今日は……何もないわね」


「へ?」


「この子が来るから、まぁ、お茶出したり」


「夜だとお酒ね。

その時はマーヤの愚痴が多いかもしれないわ」


 ……ほぅ。

 

 ハルトがぷはーッと二杯目を飲み干した。

 

「なんだ。じゃあ、今じゃすっかり友達ってことか」


 マーヤはパイプに葉を詰めながら、気の無い返事。

「まぁ、そうなんじゃない?」


 友達っ……か……。

 カイラのイメージに結びつかないだけで、別におかしなことはないよな。

 

 カイラは腑に落ちたように、ふわふわ頷く。 

「友達……そう、なのね」


 あ、彼女の中でも、今、言葉に結びついたのか。

 

 そっかー。

 カイラ、普通に友達できてたんだなぁ。

 

 

 その後、ハルトのおかげでどんどん話は回った。

 

「そりゃ腹立つよなー」

「耳の穴にスライムでも突っ込んで——」

「もうちょっと控えめがいいわ」

「はは……」


 ほんとにただの飲み会みたいになってきていた。

 こういうノリは、なんだか妙に懐かしさを感じる。

 

 そこへ、別のテーブルから声がした。

「お? 兄ちゃん兄ちゃん」


 ん? こっちに向けられてる?

 

 振り返る。

 目が合った。

 

「……俺?」


「そうだよ。こないだ依頼請けてくれた兄ちゃんじゃねぇか!」


 ……あ。

 

「ああ、あの時の!」


「おぅ……怖いネーチャンも一緒か」


「はは…」


 卓へ招かれ、ご馳走になる。

 

 ハルトもハルトで、知り合いにばったり。

 カイラが男を睨みつけ、ヘタレ腰に周りが笑う。

 マーヤが客を誘いに行き、別の娼婦がカイラと並んだ。

 

 

 それぞれが、それぞれの繋がりを持って、さらに繋がっていく。

 

 リナに連れられて、初めて訪れた時は、まさに“異文化の町”だった。

 郷に入っては郷に従えで、ただただ生活のために飲み込んだ。

 

 最低限、ギルド、宿。

 

 やがて、市場に行き、依頼で回り、未踏破エリアがなくなっていった。

 

 今では、町を歩けば、知ってる顔に会わないことは少ない。

 俺だけじゃなく、音旗隊の皆も。

 

 それこそ、ミルなんて、みんなのアイドルだ。

 

 俺たち、いつの間にかこの町の一員になってたんだな。

 

 ハルトの声が飛んでくる。

「おーい、お前の頼んだ野菜盛り。来たぞー」


「お、きたきた」


 男二人の飲み会。

 いつしか、誰かと誰かなんて指しようがない声が交わり、酒場街の一角を賑やかしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。