第68話 ドキッとしない繋がり
ライブ後。
俺たちは二人に感想を伝え、労った。
ユイと一緒にやっていくのか——
については、一切、触れずに。
きっと、俺たちも目を逸らしていたんだ。
翌日。
俺の部屋の扉を叩いたのは、ミルだった。
「ユーヤさんっ。ユイちゃん——
お見送りするので、ぜひ来てくださいっ✿」
まさか。
アイドルの道に行くんじゃ……ないのか。
音旗隊がポートリースの街門に立つ。
外には、ユイがひとり、向き合う。
過ぎ行く人たちが小さく手を振り、ユイも応える。
旅立つことを知っているから、遠慮がちに。
「みなさん、お世話になりました。
とっても楽しかったです!」
リナとレックスが頭を下げる。
「こちらこそ、楽しかったわ」
「寂しくなります!」
カイラは少し、ふてくされているようだ。
知ってるぞ。
振付、全部覚えてただろ。
真顔で踊るから、めちゃくちゃ怖かったけど。
ユイが俺の陰に控えているミルを覗き込む。
「ミルちゃん」
一歩、また一歩と前に出る。
あーあー。
涙でぐちゃぐちゃじゃないか。
「ユイちゃん……」
ユイが手を広げ、彼女を抱きとめた。
「もーっ! ずっとお別れするわけじゃないんだから!」
ミルの顔を真っ直ぐ見る。
「この世界に来て、ミルちゃんが私のファン一号になってくれて、どれだけ救われたか」
「……そう、なんです?」
「うん。だから、違う道でも、ずーーーーーーっと、友達だよ!
大好き!」
「ミルも…ミルもユイちゃん大好きですーーーー!!♡」
ああ……目頭がっ。
リナもレックスも涙腺崩壊。
カイラまで、顔を背けてる。
俺は、大人だから我慢するぞ。
ユイの背中を見送り、俺たちは立ち尽くしていた。
やがて、ミルが落ち着いた声を投げかけてきた。
「ユイちゃんは誰と話していても、ずっと笑顔なんです」
あまり見ない苦笑い。
「ミルはみんなが辛そうだと、悲しくなっちゃうです。
寂しい時は寂しいって言っちゃうです」
そして、吹っ切れたような笑顔になる。
「ミルは…笑って、泣いて、また笑ってを、皆さんと一緒に感じていきたいです♡」
そのまま、街門の内側を見渡す。
「この町の、皆さんとも」
目線の先では、母親に連れられた男の子が手を振っていた。
ミルは一息吸うと、手をブンブンと振り返した。
リナがそっと寄り添う。
「うん。そうだね」
だばーっと滝を流すレックスの向こう。
カイラは何かを噤んでいるように、目を細めていた。
そして、途端にいやらしい笑みを浮かべる。
「それがいいわ。
あたしたちには、彼の元で馬車馬のように働くのがお似合いなんだから」
空気読んでー!
「はいっ! たくさんお支えするですっ☆」
それでいいんかぃっ!
音旗隊に柔らかい笑いが広がる。
俺以外。
えー……空気読めてないの、俺なの……?
何とも納得いかないが、事の顛末には、妙なスッキリ感が残った。




