↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
68/90

第68話 ドキッとしない繋がり

 ライブ後。

 俺たちは二人に感想を伝え、労った。


 ユイと一緒にやっていくのか——

 については、一切、触れずに。


 きっと、俺たちも目を逸らしていたんだ。


 翌日。

 俺の部屋の扉を叩いたのは、ミルだった。


「ユーヤさんっ。ユイちゃん——


お見送りするので、ぜひ来てくださいっ✿」


 まさか。


 アイドルの道に行くんじゃ……ないのか。



 音旗隊がポートリースの街門に立つ。

 外には、ユイがひとり、向き合う。


 過ぎ行く人たちが小さく手を振り、ユイも応える。

 旅立つことを知っているから、遠慮がちに。


「みなさん、お世話になりました。

とっても楽しかったです!」


 リナとレックスが頭を下げる。


「こちらこそ、楽しかったわ」

「寂しくなります!」


 カイラは少し、ふてくされているようだ。


 知ってるぞ。

 振付、全部覚えてただろ。


 真顔で踊るから、めちゃくちゃ怖かったけど。


 ユイが俺の陰に控えているミルを覗き込む。


「ミルちゃん」


 一歩、また一歩と前に出る。


 あーあー。


 涙でぐちゃぐちゃじゃないか。


「ユイちゃん……」


 ユイが手を広げ、彼女を抱きとめた。


「もーっ! ずっとお別れするわけじゃないんだから!」


 ミルの顔を真っ直ぐ見る。


「この世界に来て、ミルちゃんが私のファン一号になってくれて、どれだけ救われたか」


「……そう、なんです?」


「うん。だから、違う道でも、ずーーーーーーっと、友達だよ!


大好き!」


「ミルも…ミルもユイちゃん大好きですーーーー!!♡」


 ああ……目頭がっ。


 リナもレックスも涙腺崩壊。

 カイラまで、顔を背けてる。


 俺は、大人だから我慢するぞ。



 ユイの背中を見送り、俺たちは立ち尽くしていた。


 やがて、ミルが落ち着いた声を投げかけてきた。


「ユイちゃんは誰と話していても、ずっと笑顔なんです」


 あまり見ない苦笑い。


「ミルはみんなが辛そうだと、悲しくなっちゃうです。


寂しい時は寂しいって言っちゃうです」


 そして、吹っ切れたような笑顔になる。


「ミルは…笑って、泣いて、また笑ってを、皆さんと一緒に感じていきたいです♡」


 そのまま、街門の内側を見渡す。


「この町の、皆さんとも」


 目線の先では、母親に連れられた男の子が手を振っていた。

 ミルは一息吸うと、手をブンブンと振り返した。


 リナがそっと寄り添う。

「うん。そうだね」


 だばーっと滝を流すレックスの向こう。

 カイラは何かを噤んでいるように、目を細めていた。


 そして、途端にいやらしい笑みを浮かべる。


「それがいいわ。


あたしたちには、彼の元で馬車馬のように働くのがお似合いなんだから」


 空気読んでー!


「はいっ! たくさんお支えするですっ☆」


 それでいいんかぃっ!


 音旗隊に柔らかい笑いが広がる。

 俺以外。


 えー……空気読めてないの、俺なの……?


 何とも納得いかないが、事の顛末には、妙なスッキリ感が残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。