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第57話 共援団の盗賊討伐

 レックスが、

 カイラが、

 リナが、

 ミルが、

 そして俺が、踏み出す。


 砦前では、まだ怒号と剣戟の音が続いている。


 ……作戦がどうなるかはわからない。

 でも今は、正面隊の仲間を助けるんだ。


「正面隊、徐々に後退!


戦線、安定しています!」


「……へ?」

 前のめり姿勢の〈音旗隊〉が、その一歩だけで止まる。


 さらに、ノエルが戻ってきた。

「裏手隊、侵入成功。


壁上制圧してる、です」


 見上げると、撃ち下し攻撃が止まってる。


 あれ……?

 遅れてるんじゃ……。


 ベルトムが一歩前に出た。

「予備隊、予定通りのルートで突入!


砦内から崩すんじゃ!」


 えー……

 なんか、一気にキビキビっとし始めたぞ??


 リナが俺の裾を掴む。

「ほら、ユーヤ。行くよ」


「あ、ああ」


 予備隊全体が、砦内制圧に一気に動き出した。



 搬入路から顔を出す。

 まだ、もう勝負は決まった――なんて空気じゃない。


 砦のあちこちで戦いは続いている。

 耳に飛び込んでくる金属音だけでも、まだ気の抜ける状況じゃないとわかった。


 〈音旗隊〉はいつも通り——

 ではなかった。


 レックスの泣き言自体はいつも通り。

 ただ——


「うわああああ!


やめましょう!

降参してください!」


「あ? なんだこいつ?」


 盗賊がそんな冷笑してる間に。

 いつもより、ちょっと怒ってそうなカイラに、あっという間に細切れにされている。


 エ、エグい……。


 確認してないけど、彼女は転移者だと思う。

 だけど……


 「慣れちまった」んだなぁ。


 リナはひどくパニック状態だ。

 建物の影から、次々に襲い掛かってくるわけだから。


 まぁ、魔法はちゃんと飛んでるんだけど。


 そして、俺の罪悪感を軽くしてくれてるのは、ミルだった。


 飛んできた剣を半歩でかわしながら、ミルが倒れた盗賊へステッキを向ける。

 淡い光が飛んでいく。


「悪いことをした人でもっ、生きていれば、これからがありますっ♧」


 くるりとステッキを一回転。

 空いた手を胸に当て、次いで、倒れた男へ指先を差し伸べる。


「反省するのもっ、怒られるのもっ、ちゃんと生きてないとできないのですよっ☆」


 横合いから迫った盗賊の一撃を、ひょいと身を沈めてやり過ごす。

 そのまま立ち上がる勢いでステッキを掲げ、先端で小さなハートを描いた。


「ですから今は、ちょっとだけっ!

明日まで繋がる元気をプレゼントですっ♡」


 ぱちん、と片目をつむって、ステッキを向ける。


「――ミニヒールっ❀」


 ……立ち上がれるほどじゃない。

 死なないための、ほんの少しだけだ。



 突入隊の任務は、頭目の討伐と、人質救助、砦内を混乱させること。

 俺たちは手当たり次第に、建物を検索していた。


「次は、こっちの倉庫ね」


 リナの声に、レックスが中に入る。

 外に響く、くぐもった声。


 いつもの泣き言。

 の、前に……なんか、驚いてた?


 飛び出る和甲冑。

 引き連れた盗賊たちは、瞬間に処理された。


 レックスがあわあわしている。


「な、中に、ティ……ティナさん…っっ、人質の、牢屋さんが!」


「お、落ち着けって。


敵はまだいたか?」


 首をぶんぶんと振る。


「おっけー。じゃあカイラ、頼む」


 倉庫の中からは、数名の若い女性。

 身なりの良い、商人のような男性も。


 その中に、ついこないだ、レックスと踊っていた顔があった。


「ああ、助けて頂き、感謝します…っ」


 華美なドレスとは違った旅装。

 ティナのスカートには泥汚れがところどころに。


 とは言え、気丈な眼差しを……

 というか、レックスを見て微笑んでる。


 けっこう、余裕あるな。



 その後も、砦のあちこちで散発的な抵抗は続いたが、時間が経つにつれ金属音は少しずつ減っていった。


 頭領は捕らえられ、盗品は倉庫前へ運び出される。

 縄で繋がれた盗賊たちも次々と一か所へ集められ、あとは衛兵へ引き渡すだけ、というところまで片付いていた。


 落ち着いた頃合いに、ベルトムも入ってきた。

「なんとか、なったのぅ」


 その後ろから、追うように入ってきた伝令。

「正面隊、重傷者は出ましたが、死者はなんとか」


「そーかそーか。何よりじゃ」


 良かった。

 ほんとに。


 〈音旗隊〉の本気——

 ってやつは不発に終わったけど。


 〈共援団〉は持ち直せた。

 この後もちょっとずつ形作られて、ポートリースの砦になれる。


 ……と、いいな。

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