↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
48/77

第48話 慣れない枠組み

 昼の酒場街には、開け放たれた店先から食器の音と客たちの話し声が漏れていた。

 焼いた肉や煮込みの匂いが、軒先まで流れてくる。


 壁の外に積まれた木箱や樽。

 そこに肘をついたりしてるのは、デコルテを大きく開いたドレスのお姉さんたち。

 煙草を片手に、暇そうにお喋りしていた。


 カイラが目を細めて、「ほうほう」といった具合に頷いてる。

 いったい、何に納得してるんだ。


 うわっ。

 後ろからじりじり押される。


 立ち位置を思い出す。

 ……リナかっ。


 要は「年長者、いけ」ってことなんだろう。

 いいけど、押されると逆に、なんか…!


 ぱっと前に出たのはミルだ。

「こんにちわっ。

治癒術士のミルと申します。


お話、よろしいですか?☆」


 その声に、雑談を止めるお姉さんたち。

 ミルのコーディネートを、下から舐めるように見ていく。


「あらあら。上も下も見せちゃって」

「これじゃ、お客を取られちゃうかもね。アハハ」


 お姉さんたちの“ポロリしそうなほど”ではないけど……

 まぁ、確かに。


「そうですか?!


ミルも、皆さんくらい、色っぽさ出てるです?!♥」


 いかん。話が進まないな。


 うっ。

 また、背中を小突かれた。


 仕方なく、そろーりと間に入り込む。


「あのー、ギルドの仕事で来てまして。


怪盗の噂って、聞いてます?」


 お互いの顔を見合わす。


「あーそれね。

ここ数日、よく話題に出てるわよ。


見た瞬間、煙みたいに消えちゃうとか」


「あたいは、屋根から屋根へ飛んでたって聞いたわよ」


 冒険者のスキルなら、出来そうではある。


「昨日は職人街に出たんですって」

「え? 荷揚げ場って聞いたけど」


 当てにならないなぁ……。


「お金持ちからしか盗まない義賊なんだって」

「そうなの?! 誰が盗まれたの?」

「それは……聞いてない」


 はは。作り話っぽーい。


「そういえば、女には優しいらしいわよ」

「ほんと? だったら会いたいわー」

「あたしもー。心を盗んでくれないかしらーん」


 お喋りに戻ってしまった。


 次、行くか……。



 宿の主人に声をかける。


「ええ? またか。さっきも、冒険者が来たよ」


「え? そうなんですか?」


「ほら、そこにまだ」


 振り向くと、ロウエンとハルトがいた。

 他にもパーティらしき冒険者を連れている。


「おお、ユーヤ。

ひっさしぶりじゃーん。


リナちゃんも」


 ハルトのウィンクをさらりと微笑みで返すリナ。

「ロウエンさんも久しぶりですね。


また、一緒にやってるんですか?」


 奥からロウエンが並び立つ。

「今は臨時じゃない。


うちのパーティに入ってもらったんだ」


「〈前進の旗〉がいなくなったしなー。


腰を据えたほうが、男の渋み出るっしょ」


 ノリの軽さが邪魔してる、とは言わないでおこう。

 それはそれとして、店の主人が同じことを聞かれたってことは……。


「俺たち、怪盗の噂について、聞いて回ってるんだけど、そっちも?」


 顔を見合わせる。


 ロウエンが小さなため息をついた。

「ああ、そうだ。

お互い、〈共援団〉に入ったようだな」


 大袈裟に頭をフラフラさせているハルト。

「たまんねぇぜー。

すでに話を聞かれたってのが、もう二件もあったんだ」


 確かに、「酒場街の担当」としか聞いてない。

 何組も投入されてるのなら……。


 リナがメモをぺらり。

「確かに、どのパーティがどの店の聴取をする。

そういう割り振りは無いわね」


 とは言え。


「しょうがないんじゃないか?


まだクラン員全体を把握出来てない、とか」


「それもそうだ、な」


 小さく笑い、ロウエンは首をコキッと鳴らした。


 とりあえずは、現場でなんとか、息を合わせていくしかないかもな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。