第42話 全員で作り合う居場所
数日後。
宿屋を出て、ギルドへ向かう。
調味料を買うから、俺だけ寄り道だ。
こっちは、ちょっと前まで、毎日通ってた。
ふと、人の動きに、目がつられる。
何度もくぐった宿舎の入口に、梯子がかけられている。
職人が『前進の旗 第四棟』と書かれた看板を外していた。
俺たちが脱退を希望した時。
アルディンはあっさりしていた。
まぁ、彼らしい。
お互いのこれからを願い合い、穏やかに別れられて良かった。
そもそも、俺たちだけではなかった。
抜けるメンバーと往くメンバーで、ちょっとした送別会が行われ、しみじみとした夜を過ごした。
そんなことを思い出してると、ギルドの建物が見えてきた。
そこへ、後ろから声がかかる。
「お。ユーヤ、うぃーす」
リオたちだ。
彼らも抜けた。
ケイやラナあたり。
リアリストなメンバーが、逸るリオやディルを抑えた。
そんな様子が目に浮かぶ。
それにしても……
ガルドの鎧に随分と傷が目立つ。
他のみんなも、革の破れ、糸の解れなんかが目につく。
「なんか、装備がちょっと荒れてるな」
すると、ケイが大きなため息をついた。
「そうなのよー! 今日はさすがに、可愛い服、買いにいくわ!」
困り笑いを浮かべるのはガルドだ。
「ここ数日、
ギルドから『ついでにこれも、あれも』と、依頼を押し付けられてしまいまして…」
そう言われてみれば、うちも。
通り道の、ちょっとした依頼だから、あんまり影響は出てないけど。
ラナが憂い顔を浮かべる。
「〈前進の旗〉が去り、ポートリースの冒険者がぐっと減りましたからね。
依頼の難度に関わらず、人手が…」
そこへ、ディルがずずいっと出てきた。
「ギルドは他の街に呼び掛けているという話だ。
装備の荒れなど、一過性なもの。
心配無用!」
だから、指揮棒でこっちを指さなくても。
「自分たちのことを心配することだな!」
どうにも彼からの圧は強いまんまだ。
「あ、ああ。そうだな」
苦笑いを返した。
そしてそのまま、ギルドの扉へ向かう。
リオから、「こないだはやれ何を倒した」だの、
「次はやれ何に挑む」などと聞きながら。
扉をくぐり、リオたちと別れる。
いつものテーブルには、いつものメンバー。
俺に気付いたリナが小さく手を振った。
続いて、ミルとレックスが席を立つ。
ミルがステップを踏む間に、レックスは拳を握ったまま、小さく頭を下げた。
かかとをちょんと上げて、ブンブン手を振るミル。
レックスの武人らしい立礼とのコントラストが、今日の始まりを告げてくれる。
もちろん、相変わらず、カイラは薄ら笑いだ。
近付いて、声をかける。
「おはよう。
ちょっと、調味料を買い足してきてさ。
遅れてごめん」
すると、レックスが身を乗り出す。
「そんな! 僕たちのためじゃないですか!
むしろ、手伝いに呼んで欲しいですよ!」
しかし、カイラはなぜか身悶える。
「呼ばないわよ。
ひとりで行く理由があるんだわ。
きっと、媚薬ね。
ああ……楽しみ」
それに反応したミルが、両手のグーを顎に添える。
「愛が欲しいんですね、ユーヤさん♪
しょうがないですね…ミルが受け止めてあげますぅ♥」
リナが軽くテーブルを叩く。
「はいはい。ユーヤがそんなことするわけないでしょ」
そして、自分の裾を整えながら、小さく呟きを続ける。
「そもそも、…なんかなくたって……」
……ん?
「ん? なんて?」
「へ?」
妙な沈黙。
リナの顔色が変わる。
「あ」
「ん?」
俺は首を傾げる。
それを無視して、彼女は席を立った。
「んんっ! ほら、ユーヤ、依頼見に行きましょ」
「え?…ああ、そうだな」
リナに続いて、掲示板へ向かう。
冒険者たちの賑わいの間をすり抜けて。
時折、振り向くリナの微笑み。
こんな感じが、やっぱり、良い。




