第30話 はぐれ者たちが溶け合う時
森の中を歩く。
両脇の伸びた草が、道幅を狭く見せている。
元は街道だった地面には、ところどころ根っこの盛り上がりが残っていた。
リナとカイラの間から、レックスの背中が見える。
「……レックス?
もうちょっと、力を抜いてもいいんじゃないかな」
声をかけるが――
前を歩くレックスは、刀を両手で握ったまま、右へ左へと顔を向けている。
どうやら、聞こえていないらしい。
カイラの気分。
ミルのポージング。
レックスの強警戒。
……このパーティ。
なんだか、歩きがどんどん遅くなってるなぁ……
「ま、別にいいか。キャンプは楽しいしな」
ぽつりと漏らすと、隣のミルが首を傾げた。
やがて、少し開けた場所に出る。
古い焚火の跡。
苔の生えた丸太が、いくつか転がっている。
「良い場所ね。ここで休憩しましょ」
リナも、どうやらのんびり構える気になってるらしい。
俺たちは肩の力を抜くと、乾枝を集め始めた。
簡単に組まれた石と乾木。
そこに、リナの杖が向けられる。
「弱めに~ファイアストリーム……っ」
杖の先から、細い炎が吹き付けられた。
焚火の用意を横目に、俺はアイテムボックスを探る。
そこへカイラが、わざわざ背中を向けて、顔をよこした。
「ねぇ?
こないだ、こっそり渡した、例のあれ……」
怪しい言い方をするもんだから、慣れてないレックスが怪訝顔だよ。
「ああ、おススメしてくれたハーブね。
淹れようか」
茶器一式を取り出して、折り畳みテーブルに並べていく。
火の番をレックスに任せ、リナは地図を広げた。
「目的地の村跡……
ちょうど、お昼ごろになるかもしれないわ。
食事は、終わってからになるかも」
すると、ミルが大袈裟に口を隠す。
手がパーだから、隠れちゃいないが。
「それなら、少し食べておいたほうがいいかもしれませんねっ☆
ユーヤさん、おやつ、食べちゃいましょう♪」
「確かに。しっとり系のほうは、今、食べちゃおうか」
やかんを火にかけ、紙袋をテーブルに置く。
焼き菓子の甘い匂いが、ほのかに漂い始めた。
「あ、あの!」
レックスが声を上げる。
目をぱちくりさせながら、俺たちの様子を見回していた。
「ん? どーした?」
隣では、リナとミルがドーナツを皿に取り分けている。
「いつもこんなに、和やかと言うか……
まったりしてるんですか……??」
「いいえ!」
すかさず、影と光が割り込む。
レックスの眼前で、カイラのダガーが煌めいた。
「ひっ……!」
「緊張感は常に持たなきゃダメよ」
もう一本のダガーには、ドーナツが刺さっている。
それをそのまま、火で炙る。
「じゃないと……一番美味しく頂けないでしょ?」
カッと見開かれた目に、レックスが身を引く。
けど。
カイラはすぐに、スン、として炙り加減を見始めた。
「多分、ただ『炙ったら、きっと美味しい』って言ってるだけさ。
ほら、レックスもこっち」
並べたカップに、ハーブティーを注いでいく。
レックスはカップを手に取り、そっと香りを吸い込んだ。
眉の力が、少しだけ抜ける。
「カイラさん、ナイスアイディアですぅ♥」
ミルがドーナツを持って、焚火のほうへ向かう。
続いてリナも。
どうやら真似るつもりらしい。
女性陣のキャッキャした様子をひとしきり見てから、
レックスはまたカップに口をつけた。
……少しずつ、馴染んでいけばいいさ。




