第26話 可愛い女たち
森の中の街道を、四人で歩いている。
木々が左右から迫ってくるような道で、視界はそこまで広くない。
風に揺れる葉音が、時折ざわりと混じる。
そんな中で、ミルは変わらず元気だ。
とてとてと歩いては、ステッキをくるくると回し、木々の奥へ向けてポーズを取っている。
……あれも、一応、哨戒行動なんだろうか。
「うん。モンスターさん、いませんっ☆」
どうやら、そうらしい。
リナはその様子を、穏やかに眺めていたが――
「んー……こう、かな」
ミルを真似て、ぎこちなくポーズを取る。
……と思ったら。
「んんっ」
咳払いをして、すぐに姿勢を正した。
急にキャラ変は恥ずかしいよね。
それにしても……。
ミルのステッキは、かなりデザインが凝っている。
方向性は少女アニメのマジカルステッキみたいな感じだけど、あれは高級な物なんだろうか。
「ミル。そのステッキ、かなり装飾性が高いけど、高価なものなのか?」
声をかけると、ミルはパッと足を止めた。
一度、柔らかく目を閉じる。
それから、穏やかな瞳で天を仰いだ。
空をかき混ぜるように、ゆっくりとステッキを回し、胸元に抱く。
「可愛いですよねっ♡」
満面の笑み。
……質問の意図は、吹き飛んだ。
「あ、うん。可愛いと思うよ」
「衣装もこだわってるんですよっ❀」
くるりと回り、フリフリのスカートの裾をふわりと摘まむ。
お腹も出てるけど、魔法的な防御力でもあるんだろうか。
……あれ。
ミルが、微動だにしなくなった。
笑顔も、ずっとキープしてる。
「……あ、うん!可愛いね!」
「ありがとうございますっ♪」
ポーズが解除され、やっと歩きが再開される。
すると、隣でカイラが呟いた。
「あたしも、もっと見せる衣装にしようかしら」
ぬらり、とこちらに顔を向けてくる。
ど、どう答えろと?
黒いボディスーツは隠密性が高そうで、良いと思うけど……。
カイラが、じりじりと距離を詰めてくる。
「例えば、胸の辺りを大きく開いたり、ハイレグにするとか。
……性欲のはけ口にされてしまうわ。
あぁ……大変ね」
「…た、大変だね。だから、やめとこうか」
少し身を避けながら、苦笑いする。
「……なーるほど。
あなたは、見えない方が興奮するタイプってことなのね」
こらこら。
「ミルのぷるぷる肌は見てくれないですか?!」
今度はミルが迫ってくる。
布面積少ないんだから、そんなに腕を寄せないでくれっ。
思わず顔を逸らす。
「俺をどうしたいんだ……」
がっくりと頭を落とす。
ため息交じりに顔を上げると――
リナが、少し浮かない顔をしていた。
ローブをきゅっと摘まんで、見つめている。
上質な物だと聞いているけど、不満でもあるんだろうか。
そんなやりとりをしつつ、気付けば。
Dランクの依頼をいくつかこなしていた。
俺たちは、ポートリースへ踵を返している。
カイラとミルにいじられる形は、続くんだろうな。
少し、慣れないと……。
夕日が伸ばす四人の影は、バラバラに動きながらも、寄り添っていた。




