第25話 強い女たち
暗い洞窟を四人で歩いている。
自然の洞窟を利用した地下墓地といった風体だ。
所々にある窪みにトコトコと駆け寄っては、ポーズを決めるミル。
「異常なしっ★」
時折出てくる、小さなネズミだけが鳴いて応える。
リナは気に入ってるのか、その様子を見て微笑んでいた。
「女を囲って、侍らせて、従えて、さぞご満悦でしょうね」
ぬっと覗き込んできたカイラこそ、ご満悦そうな笑みを浮かべている。
「えー……カイラが声をかけたんじゃないか」
「そうね。あなたに操られていたんじゃないかしら」
……なんでもありだな。
そのやり取りに反応して、ミルがぱっと振り向く。
目も口も全開だ。
「ユーヤさん、メンバーを操れるんですか?!
すごいですっ☆」
「そんなこと出来ないからっ」
純粋ぃぃ……
肩に、カイラの手が置かれる。
ちょ、ダガー握ったまま。
「読めたわ。
こうやって補充して、使い潰していく。
女をシャーペンの芯くらいにしか思ってないのね」
「あぶっ、刃をふよふよさせない! 危ないからっ」
言いがかりだ……。
「あははっ。……あ」
慌てて口を押さえるリナ。
……まぁ、そうだね。
からかって遊んでるんだろうな。
……尖り過ぎだけど。
ミルと話していたリナが、何か言おうとして、口を噤んだ。
「ん?どうしたの?」
「んー……」
その間を、割り込むように。
カイラが、ミルのそばに瞬間移動した。
……それ、戦闘で出しなよ。
「あっ……」
リナが手を伸ばそうとして、途中で止める。
そのまま、きゅっと握り直した。
カイラはミルに耳を傾けている。
……え?なになに?
「隠すことないじゃない。
むしろ、隠すべきではないわ」
促されて、ミルが口を開く。
「ミルはこんなに可愛いですが、冒険者ランクはBなんですよっ♪」
ミルもB?!
「Dランク男性冒険者が連れまわす、Bランク女性冒険者たち。
ああ……世間様はどう見るのかしら。
やっぱり、性奴隷だと思われるわよね」
カイラは体をクネクネさせている。
おいおい……。
「ミルのぷるぷる肌なら、仕方ないですぅ♡」
ちょっとちょっと!
「え……それは、ちょっと嫌かも……」
むすっとしたリナが、杖を前に振る。
光の筋が舞い上がり、通路の先に光の幕が下りた。
その向こう。
脇道の奥から、かたかたかた、と乾いた音が波みたいに寄ってくる。
「ねぇ、この音、なにかな」
現れた骸骨たちが、幕をくぐる順に崩れていく。
「レッサースケルトン!
……任せて!」
リナが杖を下ろす。
「ライトフォール!」
気付けば、カイラは隣にいない。
がらがら、と崩れる音だけが残る。
光の幕が途切れた先の闇に、ミルのステッキから小さな光球が飛ぶ。
ミルがひょいと前に出て、つま先でくるり。
「ちょっとだけでも、ちゃんと大事なんですっ♧」
闇から戻ってきたカイラの腕が、ほのかに光っている。
ミルはステッキを胸に当てて、もう片手をそっと差し出す。
「その傷も、その痛みも……見逃しませんっ☆」
カイラの腕にあったかすり傷が消えた。
ミルは杖を掲げて、ふわっと空をなぞる。
「今ここで、ちゃんと整えておきますから✿」
「漏れたのはあたしがやる……やったわ」
いつもの、すんとしたカイラだったが、ほんのすこーし戸惑ってるような……。
一歩踏み込んだミルが、ぴたりと止まる。
「ミルが見てるので、大丈夫ですっ♥」
指を弾くように前へ。
「――ミニヒールっ☆彡」
ミルはポーズを決めたまま、スマイルをキープしている。
うーん、ごちゃごちゃするー!
けど、俺は一音も出す間もなく、片付いちゃった。
さすが、Bランクたちだよ……。
くっ、情けない!
その後、俺のリュートが曲を奏でたのは、最奥にいた2体のスケルトン戦だけだった。




