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第22話 初めての規模感

 ギルドカウンターで、その日の報酬を受け取った。

 振り向いて、いつものテーブルを見る。


 給仕のお姉さんはカイラにジト目を向けられているが、あまり気にしてないようだ。


「よぅ!ユーヤ!」

 久しぶりに聞こえた快活な声。


「……リオ。みんなも」


「お久しぶりです。お元気そうで」


 ガルドは相変わらず低姿勢だ。


 ただ、鎧の傷跡はかなり増えたように見える。

 頑張ってるみたいだな。


 そこへ一人、残りのメンバーを差し置いて、ずいっと前に出てきた。


 コートの襟を立て、着崩した男が斜に構える。


「あんたが前にいた“補助職”のユーヤさんか。


Cランク帯のパーティに誘われて抜けたんだって?

すごいじゃないか」


「あぁ…まぁ。ただ」

「俺は戦術士のディル。


こっちのことは気にしなくていいぜ?


“指揮職”の俺がしっかりと支えてるからな」


 う……

 もうそこは抜けたんだけど、なんか言いづらいな。


 愛想笑いで流しておくか。


 横からケイが、呆れたように手を振る。


「バッファーであることには変わりないでしょ。


なに張り合おうとしてんのよ」


「む……別に、そういうわけでは」

 おや、ケイには弱いのか。


 すると、ラナがすすっと寄ってきて、耳打ちしてくる。


「たまに崩れちゃうことがあって、何度かケイさんに助けられてるんです」


「そ、そうなんだ……」


 でもまぁ、不仲って感じじゃなさそうで良かった。


 

 その後、彼らのテーブルに着き、三人で動いていることを話すと、リオが手を広げる。


「俺たち、

〈前進の旗〉っていうクランに入ってるんだけど、


ユーヤたちも入れよ!」


「あぁ、それはいいですね。


経験の浅い冒険者も手広く受け入れてるクランなんですよ」

 ガルドが酒を注いでくれる。


 ケイが豆を摘まみながら差し込む。

「ま、仮加入だけどね」


「そうですね。幹部の方が出払ってますので」


 ラナが補足したところで、ディルが胸を張る。


「なんだ、クランにも所属してないのか。

なら、大規模任務も未経験なんだなぁ。

丁度、俺たちも遠征から返ったばかりなんだが…


あれを知らないのかぁ」


 マウントチャンスに饒舌になるんだね……

 わかりやすい。


「そうか。だから、みんなのこと、最近見なかったんだね」


「そうそう。まぁ、いいんじゃない?


横の繋がり、けっこう便利よ」


 ケイが気軽に後押ししてくれる。


 クランかぁ……。

 残りのパーティメンバーを探すにも、悪くない選択肢かもな。


 二人のテーブルに目をやる。

 リナとちょうど目が合った。


 柔らかく傾げられた頭が、自分の言葉を待ってる気がした。



 皆に連れられて歩いていると、カイラが真後ろから首を伸ばしてきた。


 吐息が耳にかかって、くすぐったい。


「あなたの狙いはわかっているのよ。


大勢に寄って集って嬲られるあたしに、

優しくして呪縛をかけるのね」


「いやいやいやいや。


なんかあったら、抜ければいいんだから」


 深読みの底が見えない。

 二つ返事で賛成したくせに、これだもんな。


 もはやリナまで、このやり取りをふふ、と笑っている。



 〈前進の旗〉会館のロビーに足を踏み入れる。


 中では、冒険者たちが思い思いに過ごしていた。

 すぐに耳に入ってきたのは……


 きゅるきゅるとした声、とでも表現すればいいだろうか。


「おつかれさまですっ!


……あれれ? 元気ないですね。


じゃあ、ミル、元気の出る魔法……

いきますね。


えいっ、えいっ、元気になーれっ☆」


 アイドルみたいな格好だ。

 あれもクランのメンバーなのかな。


 ひとりひとりにラブを振り撒いているように見える。


 一方で、応える側は――喜んでもいないし、嫌がってもいない。

 微妙な愛想笑いを返している。


 

 そこへ後ろから、ドタドタと駆け込んでくる足音。

 俺たちを追い抜いていく。


「みんな!ギルドがDランクのレイド請けてくれってよ!」

「またかよ!」

「なんだよ、帰ってきたばっかだぜ」


 ぼやきつつも、その目は活気がある。

 やれやれと笑いながら、どこか楽しそうだ。


 こういう空気、リオが好きそうだな……。


「お!早速だな!


ユーヤたちも参加するだろ?!」

 やっぱり、リオが燃えていた。


 振り返ったラナが、苦笑いを浮かべる。

「紹介は、追々になりそうですね」


 カイラはすんとしている。


 リナは、唇をきゅっと締めている。

 やる気出てるなぁ……。


 多人数戦か。


 迷惑にならないようにしないと。

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